私がニースで過ごした2日間

アヴィニョンからニースに到着し、マルクシャガールの美術館や、日帰りで行ける可愛い村を巡る予定だった2日間。
初日の朝、広場でアンティークマーケットをやっているのを知り、午前中だけふらつくつもりでした。

フランスに来た理由の一つが、アンティークを見ることだったので
ここでアンティーク好きの血が騒ぎ、数時間歩き回り、気付いたら、

椅子、棚、絨毯、ランプ、陶器など、計25kg分のアンティークを買っていました。

どう考えてもバックパックに入らないので
日本に輸送するしかない。
一旦、送り方と値段を聞きに行こうと2キロ先の郵便局に歩いて向かった。

輸送料は買った棚の3倍。
「日本には送れるけど、家具が入るような箱はここにはないから自分で持ってきて」

郵便局のお兄さんに言われ、
ニースでの段ボール探しの旅が始まりました。

郵便局からの帰り道、3軒スーパーによって、段ボールください!と頼んだが、どこも置いておらず
とぼとぼ歩いていると、なんと道端に段ボールが捨ててある。

奇跡だと思った。

捨てられている段ボールを拾うことには戸惑ったけど、
これが手に入らないとせっかく買ったアンティーク達を日本に連れて帰れないので、勇気を振り絞って段ボールを漁り始めた。

一番大きな段ボールを抱えて、ニースの高級ブティック街を歩く。

ベネトンの前で信号待ちをしていると、 
隣に段ボールの山を発見。
もっと大きいのがあったので今まで抱えていたのを捨てて段ボールを乗り換え。
ベネトンの服が入っていたかもしれないのかぁ!とるんるんで海沿いを歩いて戻った。

戻ってきて、買ったものを段ボールに入れたが、ギリギリ入らなかった。

「もう少し大きいの探してくるから待ってて」
そうアンティーク屋のおばちゃんに言い残し、2度目の段ボール探しの旅に出た。

ベネトン前の段ボール置き場に戻ると、数十分のうちに、段ボールの山は全て回収されていた。
落ち込んで後ろを振り返ると、これ、元々私が買った棚が入ってたんじゃないか?というくらいぴったりサイズの細長い段ボールと、椅子が入りそうな大きな段ボールが捨ててあった。

海沿いをるんるんと歩いた。

二つの段ボールを抱えて戻ってきた私をおばちゃんは抱きしめて迎えてくれた。

そして家具はぴったりと私が持ってきた段ボールに収まった。
一部始終をみていたお隣のテントのおばさんや、お客さんから拍手が沸き起こった。

二つの大きな段ボールを、荷台に乗せて郵便局に持っていくと、
窓口のお姉さんに「段ボール2つだと送料が二倍になっちゃうから、1つの大きな段ボールにまとめた方がいいよ。荷物、ここに置いといていいから、明日また段ボール探してきな」とアドバイスを受けた。

ホテルを出てから8時間、ニースの一日目はアンティーク巡りと段ボール探しで終わり、そして明日もまた段ボール探しが決定した。

二日目、3度目の段ボール探し。
早起きして街に繰り出した。
狙い目は、店がオープンする10時前。開店前の品出しの時間はきっとたくさんの段ボールが街に出てくるはず。

ニースのどこに段ボールが多いかは、昨日散々歩いて感覚がついていた。

フランスパンをかじりながら血眼になって街を歩く。私が見ているのは、高級ブランドの服でもバッグでもない、道に落ちている段ボールだった。

家具を入れる段ボールは、家具屋に行けばあるだろうと、事前に下調べしていたZARA HOMEに向かうが、
百貨店に入っていたので道ばたに段ボールは捨てらていれなかった。

歩くこと数十分。ある街角を通りかかったとき、大量の段ボールの山を見つけた。

人通りが多かったので、いきなり漁ることはせず、5分くらい段ボールの山の周りをうろつき、目星をつけてから一気に回収しにいった。
大きいのを3つ回収して、郵便局に向かった。

昨日と同じ郵便局の女性は笑顔で私を迎え入れ、ハサミとガムテープを渡してくれた。
拾った段ボールと荷物を広げ、郵便局の中で葛藤(工作)を続けること一時間、全ての荷物をひとつにまとめることに成功した。

かかった輸送費は170ユーロ(約2万2000円)で、絨毯以外のどの商品よりも高かった。

しかし、段ボールを見つけたときの感動と、普通とはちょっと違った旅の経験は一生残るものになった。
今でも、道端で段ボールを見るとドキッとする。
こうしてニースでの2日間は無事に終わった。

必死で買ったアンティークが、いつになるか分からないけど無事に自宅に届いてくれますように。

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