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ポルトガルで命の危険を感じたお話

ポルトガルを旅しています。

人がとっても優しく、

すれ違う度にみんなにこっと微笑みかけてくれるような平和で暖かい国。


ポルトガルでの滞在は全て、現地に住む人の家に泊めてもらえる素晴らしいサービスを利用して各地を点々としています。


リスボンから車で3時間弱、ポルトガルの世界遺産の街、エボラでは、ブラジルから数年前に移住してきたとっても仲良しな夫婦のお家にお邪魔することに。

夜7時にステイ先に到着し、家をノックすると
二人は笑顔でハグをして迎え入れてくれた。

ブラジルにはたくさん日本人がいてね、日本語も日本食も私達にとったら身近なんだよと話してくれた旦那さんのトゥーリオ。

奥さんのラナタは、「あとでイギリスから旅行に来ている人達が遊びに来る予定なの。みんなでワインを飲みながらお話しましょう!」

とワインとおつまみの準備をしてくれた。

「マリ、キノコ食べれるか?」
トゥーリオは自慢げに、台所に置いてあったキノコを見せて私に聞いた。

それは日本では見たこともないような形だった。

「この前ね、キノコの達人から、キノコのレッスンを受けてきたんだよ。これは、その達人から買ったものなんだ。」


「キノコのレッスンって何?そんなものがポルトガルにはあるの?」

と私は笑いながら聞いた。

エボラは、少し車を走らせれば大自然の田舎町で、そこかしこにキノコが生えている。けど、全部食べられるわけじゃないし、当たり外れがあるから、どれが美味しくてどれは食べちゃいけないのか、ちゃんと知るためにレッスンを受けて来たらしい。

トゥーリオは、キノコは普段あまり食べないからどう料理したらいいか分からないや、と呟きながら、その変な形のキノコを塩とオイルで炒め始めた。

しばらくして、ポルトガルに旅行に来ているイギリス人の夫婦が到着し、晩餐会が始まった。

トゥーリオとラナタは、家にある様々な種類のポルトガル産ワインを私達に振る舞ってくれた。

ワイン片手にオリーブをつまみながら、

この街の歴史について、二人が住んでいたブラジルの文化についてなど、色々な話をした。

しばらくして、ラナタが、「そうだ、そろそろキノコを食べましょう」と、塩で炒めたその変な形のキノコを出してくれた。

(晩餐を振る舞うラナタ)

私はその日、昼ご飯を食べていなかったので、キノコもワインも、たくさん飲んで食べて、

みんなで話してとっても楽しい夜を過ごした。


二人は私に寝室を用意してくれ、その日はそこでぐっすり眠った。

(ポルトガルらしい可愛いベッド)

朝起きて、3人で朝食を食べていると、

なんだか少しだけ体が痒いことに気付き、もしかしたらベッドにダニがいたのかも、、と不安になりつつ、優しい二人を悲しませたくなかった私は特に何も言わなかった。

その日は小さい村を巡る予定だったので、家を出て目的地に向かった。

村での観光を楽しみながらも体の痒みは時間が経つごとに増していき、
夜、家に戻り、おかしいな、と体を見てみると、なんと全身、蕁麻疹のようなものでボコボコになり、肌は真っ赤に腫れ上がっていた。

さすがに心配になって二人に見せると

ダニにしては腫れすぎているね、なんか変なもの食べたかい?と心配そうに聞いてきた。


昨日口にしたのは、パンと、サラダと、あの変なキノコだけ。

・・・キノコだ。

そんな、あのキノコは達人から買ったんだから、変なものなはずはないのに、、トゥーリオは悲しそうに、戸惑いながら呟いた。


とにかく病院に行ったほうがいい。もしかしたら薬や注射ですぐに治るかもしれない。と諭されたが時計を見ると、夜中2時を回っていた。


私の、生まれて初めての深夜病棟行きは、

ポルトガルで、
変な毒キノコを食べて
全身ボコボコになる
という極めて癖のある状況で決定したのだった。


初めての海外の病院だったので慌てて保険会社に連絡すると、

「病院に電話して、支払いは加藤さんではなくこちらからするように掛け合うので大丈夫ですよ。」と頼もしい言葉を貰った。


万が一に備え、リュックに歯ブラシと洗顔と充電器を入れ、病院に向かおうとすると、

保険会社から電話がかかってきた。


「病院に電話したのですが、英語が話せる人が一人もいなくて、何も通じなくてダメでした。」

あとは自分で頑張ってくださいといった感じで電話は切られ、私の安心感は一気に消えていった。


ポルトガルではなかなか英語が通じず、

ローカルなレストランに入ると、「メニュー」も「イート」も「ライス」も分かってもらえないくらいコミュニケーションが大変だったりする。


どうやってこの症状を説明すればいいんだ。

「マッシュルーム」って通じるかな。


そんな心配をしている時にも症状は段々とひどくなり

さらに、ダニではなく毒キノコだと分かった私の体は毒キノコ用の症状を慌てて出してきたようで、何だか喉まで苦しくなってきて、人間の脳みそって単純だなぁと思う。


不安がる私を見て心配したラナタが、病院まで着いてきてくれると言い、

一方でトゥーリオは、自分で"毒キノコ説"を出してきたにも関わらず、自分がキノコを調理して食べさせた事で悪者扱いされるのを怖れたのか、病院を出る直前に、「マリ、やっぱりキノコじゃないと思うよ。キノコのせいだって病院で言わないで欲しい。」と訴え始める。


病院につき、お医者さんに症状を見せると

「日本から来たの?すごい!嬉しい!ファイナルファンタジーって知ってる?あれのせいで私はゲームオタクになってね、いつも日本のゲームをプレイしてるんだ。日本にファイナルファンタジーのミュージアムがあるからそれに行くのが夢なんだ!」と、興奮気味にまったくキノコと関係ない話を始めて、もうアレルギー反応で全身おかしくなっている私は、いいから早く薬を処方してくれ!と心の中で思いつつ、"日本人らしさ"を絶やさないようニコニコと話を聞いた。


長い世間話を終え、やっと処方箋を手にした次は、薬をゲットするというミッションが待っていた。

ポルトガルでは、どの街でも、誰でも、24時間いつでも薬が受け取れるよう、
街にある薬局が代わりばんこで24時間体制でオープンしているらしい。

私が行ったときは、病院から車で15分程走らせたところにある大きなショッピングセンターにある薬局の番で、建物は真っ暗なのに薬局だけ看板が光っていた。

ポルトガルの医療システムに感動しつつ、
無事に薬を受け取り、家に帰ったのは朝方4時。

こうして、毒キノコ事件は幕を閉じた。

(真っ暗なショッピングモールに光る薬局のサイン。なかなか怖かった。)

今は、飲み薬と塗り薬で何とか毒キノコパワーを抑えていますが、気を抜くとすぐに肌がおかしくなってしまうような油断ならぬ状態で
毎日ポルトガルを駆け回っています。


一時は、「私、キノコのせいで死ぬのかな」ととても怖くて不安でしたが、なんとか生き延びています。

ポルトガルに来たら、絶対に、変なキノコは食べないように気をつけましょう。

(処方箋も飲み方も全部ポルトガル語で何も理解できない)

(写真とってないけどこんな感じのキノコだった)

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