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【ベルギー】金曜日のがらくたオークション

ベルギーのアントワープは、ファッショナブルでカルチャーに富んだ街として知られています。
世界有数のファッションデザイナーを輩出するアントワープ王立芸術アカデミー、世界一美しい駅と言われる、アントワープ中央駅。

そんな洗練された雰囲気を感じさせるこの街に滞在する間、ベルギーブランドのブティック、インテリアショップ、古着屋、アンティークショップ巡りを楽しんでいました。

歩道の真ん中に置かれたアンティーク家具たち。

旅をする都市では必ず蚤の市を探して訪れているので、
ふらっと入ったアンティークショップのおじさんに、蚤の市について聞くと、
毎週金曜日に、向こうの広場でオークションをやっているよ。と教えてくれた。
「昔はいいアンティークがたくさん掘り出せたんだけど、今はガラクタばっかだ。」
すると私たちの会話が気になっていたらしい地元の若者が「面白いから行ってみるといいよ」と入ってきて、二人して詳しい道を説明してくれた。

翌日、早起きをして、説明を頼りに街を歩きまわり、広場を探す。

広場が近くなってもなにも見えてこない。
場所を間違えたかな、それとも今日はやっていないのかな。
引き返そうとしたとき、少し奥から男の人の大きな声が聞こえてくる。

声のする方に走っていくと、大きな広場にたくさんの家具、洋服、ガラクタの山。
それを取り囲む多くの地元民。
そして広場の真ん中にはオレンジの安全服を着たおじさんがオランダ語で何かを叫んでいて、もう一人のおじさんがガラクタの山の中から家具をひとつ取り上げて、取り巻きに向かって大きく掲げているところだった。


次におじさんは、白いソファーを中心に持ってくる。
ガラクタを囲う住民たちは手を挙げて、大きな声で「9ユーロ!」「12ユーロ!」と次々に叫ぶ。
しばらく数人での競り合いが続いた後、誰も声を発しなくなると、おじさんは若い女の子にソファを渡す。
女の子は満足そうに、現金を取り出して支払いをすると、一人でソファを抱えて帰っていった。

あの子は、違う町から、進学の為にアントワープに出てきて、一人暮らしを始めたのだろうか。
これから始まる新生活のために、こうやってオークションで安く家具を揃えているのだろうか。
そんな風に勝手に買い手のことを想像して楽しくなる。

広場に積まれているのは、家具、自転車やボードゲームなど家庭で使えるものから、ほうきの柄がとれたブラシ部分やボロボロの籠や、使い方も分からないような本物のガラクタまで、なんでもあった。
洋服は大きな黒いビニール袋にまとめて入れられ、中身も見ないまま袋ごとオークションにかけられる。

この日は小雨だったので、ブルーシートがかけられていた

買いに来るのは、ソファを手に入れた彼女のような、生活に必要なものを探しに来る人から、
数人で着て、こそこそと値段を相談しながら大量に買い付けをすると、どこからか大きなトラックを呼んで積み込み走り去っていくようなバイヤーもいた。

集められたガラクタがどんな末路を辿るにせよ、
ボロボロになるまで大切に使われたモノたちが、こうやってオレンジ服のおじさんのところに毎週集められ、住民に披露されて、新しい人生を共にする相手を見つけられるのは素敵なことだなあと思った。

それに、他人と争って、自分で価値(値段)を決めたものは、お店で値札がつけられたものよりもきっと大切にできるんだろうなあ、と
競りに勝ち、ガラクタを手にした人たちのあの満足げで嬉しそうな笑顔を見ていて思うのだった。


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