
「ワケあり雑がみ部」というワンダーランド
「雑がみ」というゴミの分別区分があります。
厳密には「資源」で、リサイクル意識を高めるため、わたしの街では名称も「紙ゴミ」ではなく「雑がみ」とする工夫がなされています。
人は物に対して、その名前にふさわしい扱いをするもの。ゴミはゴミとして、紙は紙として扱われるようになる。不思議。
そんな廃品をアート活動に昇華したのが、「ワケあり雑がみ部」です。
https://twitter.com/art_node/status/1445547510022295561?s=20
収集場所を準備して、市民から集めた雑がみを工作の材料にする取り組み。
これだけ聞くと、「小学校の工作でもやってるじゃん」と思う。
でも、やっぱり雑がみ部はすごい。
ひとあじ違う。
何がすごいって、その自由さが!
「何を作っても良い」のは当然として、
「何も作らなくても良い」自由が保障されていること。
そこにいるだけで構わない。
雑がみを見ているだけで構わない。
集まった紙を分別するのも良いし、人が作っている作品を鑑賞するだけでも許される。
定期的に来る必要もないし、事前の予約も不要(!)。
通りかかった人が、さっと何か作っていくこともある。
作った作品は、持って帰ってもいいし、置いていっても良い。
完成させる必要も無い。
役に立つものである必要もない。
人と話さなくても良い。
作品に責任を持つことなく、本当に自由に「純粋に物を作る瞬間を楽しむ」体験ができる場所。
そこには「綺麗に完成させる」とか、「上手に作る」といったノルマは全くなく、自分が作りたいように、つくりたい気持ちが尽きるまで、参加することができる。
「こんな大きなもの、作ってどうしよう」
「持って帰らないといけないなら、大変」
「完成させるのは難しい」
そんな、ものを作るにあたってのブレーキが、一切取り払われています。
私がこの取り組みを知ったのは、偶然雑がみ部の展示に通りかかったから。
捨てられるはずだった雑がみが、こんな多彩な表現を生むのかと、とても感動して翌年の活動から参加するようになりました。
集まってくるのは、ほとんどが私と同じなんでもない市井のひとびと。
でも、時に彼らは物凄い技術や知識を持っています。
何の野心も持たない彼らが作る作品の、純粋さと自由さと面白さ。
それから、思う存分材料を使える贅沢さ!
作品の制作において、「もったいない」という感覚は、時に作りたい気持ちにブレーキをかけてしまいます。
「これをやりたいけれど、失敗するかもしれない」と思うと、材料が無駄になるリスクを回避して、冒険する選択肢は消えてしまう。
雑がみは「捨てられるはずだった」材料。
素材を無尽蔵に使える喜び。これは、凄い。
リミッターを外して物を作れるひと時が、とても解放されていて私は好きです。何も気にせず、安心して、心から「作ること」を楽しめます。
小学生のころ、図工の時間に色画用紙のセットが配布されました。
私は最後まで、赤やピンクの綺麗な色紙を使えず、茶色やグレーなんかを使っていました。
ピンクが嫌いだったんじゃなくて、大好きだったから、1枚しかないピンクがもったいなくて使えなかった。
使ったら、なくなってしまう。
隣の子が、大胆に綺麗な色の紙を使っているのを見て、羨ましく思っていました。
そんなことを、思い出させてもらいました。
「もったいない」感覚の昇華というのは、使う側だけでなく雑がみを持ってきてくれる側にもあると聞いて、なるほどと思いました。
「捨てるにはもったいない。でも何かの役に立つなら嬉しいし、手放せる」そんな善意で集まってくる紙は、愛おしいなぁと思いました。
パッケージデザインは、それだけで美しいものです。何人もの人がかかわって、色々な厳しい基準をクリアして世に出たものは、どれもやっぱりとっても素敵。見ているだけで、話が弾む。
それを素材にするのだから、自分が思ったより素敵なものは、当然できる。
素敵なものが作れると、人に見せたくなる。そういうときに、そこには見てくれる人がちゃんといる。
人に自慢したくなるくらい満足なものができて、それを共有してくれる人がいてくれると、自分に自信が持てる。
ここには「マネージャーさん」(部活なので)と呼ばれる若手のアーティストさんたちもいて、とても気持ちよく、適切に場の空気を柔らかくしてくれている。
本当に素晴らしい。
管理せず、管理されず、お互いを思いやり、でも各自が黙々と作業しても良い。
こんな社会参加の場は、今まで無かった。
禁止されていることが唯一あるとしたら、「他の人の表現を否定すること」くらい。
本当に開かれていて、貴重な場だと思います。豊かだなぁ。
言葉で説明するのはとても難しい。
だから、あなたにも体験してほしい。
「ワケあり雑がみ部」
ちなみに、部長はアーティストで大学教授の藤浩志さん。
・・・本気です!
ちなみに私は、やっぱり製本をしています(笑)。
https://twitter.com/mari93512215/status/1307640257303605248?s=20
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!