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小川糸作品は、しばらくお休みにしようかな~『針と糸』(小川糸)~

『ツバキ文具店』に始まり、割と集中的に小川糸さんの小説とエッセイを読んできました。



でも今回の『針と糸』を読み、しばらく小川糸作品はお休みにしようと思いました。


決してこのエッセイが、良くなかったという訳ではありません。作家研究というか、小川糸作品の背景にあるものを知るには、良いと思います。小川糸さんの小説には、「祖母(あるいは祖母的なもの)から孫への継承」、「問題のある母との確執」、「父親の不在」、「再生」など、共通するテーマがありますが、それらはそのままではないにせよ、糸さん自身の人生を反映しているということが、よく分かります。


単に、私が『育てて、紡ぐ。暮らしの根っこ』と、あまり時を置かずに読んでしまったのがいけないのでしょう。つまり、内容的にかぶっている部分があるのです。



『針と糸』は「毎日新聞」への連載をまとめたものなのですが、編集者の依頼によるものか、糸さん自身が書きたかったのか、ベルリンでの生活の話が多いです。

私自身、ベルリンという都市もドイツという国も好きではありますが、延々とベルリンやドイツの良さを説かれると、鼻につくものがあります。

もちろん時にベルリンやドイツへの不満が書かれている箇所もありますが、「ベルリンに恋をした」と書くだけあって、基本的にはベルリン(ドイツ)礼讃です。


あと、『針と糸』ではドイツに住むことで、衣や食へのこだわりが薄くなった、と書いているのですが、『育てて、紡ぐ。暮らしの根っこ』では、それこそ糸さんこだわりの服や食品、雑貨などが紹介されているので、「充分こだわっておいででは?」と言いたくなってしまうのです。

もちろん糸さんが言いたいのは、「ブランド衣料や高級レストランでの食事などへのこだわりが薄くなった」という意味なのでしょうけど。


日本は消費を煽るシステムで、毎日何かしらお金を使わずにはいられないけど、ドイツは違う、という意味のことも両方の本で繰り返し書かれていますが、どこに住んでいたって、お金を使う人は使うし、使わない人は使いませんよね。私自身、財布を開く場面は1週間に1度あるか無いかです。下手したら2週間くらい、現金もクレジットカードも使わないこともあります。


何しろ、ちょっと小川糸作品はお休みにしようと思います。読んでみたい作品自体は他にもあるのですが、立て続けに読むと、嫌いになってしまいそうなので。


見出し画像は、私がモンゴルに行った時に撮った、ウランバートルの町中のゲルです。『針と糸』に、モンゴルでのホームステイの話が出てくるので。住んでいるわけではなく、土産物屋か何かだったみたいですが。



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