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読んだ本

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読んだ本の感想です。基本、ネタバレはありません。
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2021年5月の記事一覧

【読書】お二人が末永く雑談を続けられますように~『雑談藝』(いとうせいこう、みうらじゅん)~

この本は、いとうせいこうとみうらじゅんのラジオ「ザツダン!」を書籍化したものです。 ↑kindle版 話はあっちに飛びこっちに飛び、2人ともまぁ、喋る喋る。特にどれがどちらの発言かも気にすることなく、ずるずると読み進めることができます。 本書の表紙は、ソファーに座って楽しそうに喋っている2人の写真なのですが、見るからに仲の良さが伝わってきます。2人で雑談をしているのが、本当に楽しいのでしょう。そんな相棒を見つけられたことは、2人にとってとても幸せなことだと思います。

その時の自分を、最善を尽くして表現する~勝手に応援!「ビッグイシュー日本版」(VOL.407 2021.5.15)~

「ビッグイシュー日本版」を勝手に応援する記事第10弾です。そもそも「ビッグイシュー日本版とは何か」をご説明した第1弾は、以下をご覧ください。 今号でまず印象に残ったのは、スペシャルインタビューのカズオ・イシグロの言葉。 重い言葉です。これだけの覚悟を持って自分は生きていないなと、反省しました。 特集の「”調べる”っておもしろい」も興味深かったです。 「国立国会図書館サーチ」や「政府統計の総合窓口 e-Stat」の存在は知らなかったので、機会があればぜひ使ってみようと思

【読書】民主主義とは~勝手に応援!「ビッグイシュー日本版」(VOL.406 2021.5.1)~

「ビッグイシュー日本版」を勝手に応援する記事第9弾です。そもそも「ビッグイシュー日本版とは何か」をご説明した第1弾は、以下をご覧ください。 今号では何といっても、特集の「コロナ禍で考えた”民主主義”」が秀逸でした。 7人の識者が「民主主義について考えたこと」というテーマで文章を寄せているのですが、民主主義の定義について改めて考えさせられました。 お二人とも、「民主主義は多数決ではない」と強調されています。多数決ではないし、ましてや特定の誰かが通す我に、他の人が巻き込まれ

世界はきっと均衡を取り戻す~勝手に応援!「ビッグイシュー日本版」(VOL.405 2021.4.15)~

「ビッグイシュー日本版」を勝手に応援する記事第8弾です。そもそも「ビッグイシュー日本版とは何か」をご説明した第1弾は、以下をご覧ください。 今号ではまず、スペシャルインタビューでのソフィア・ローレンの言葉が印象に残りました。 世界をみていると目を覆いたくなるようなことばかりですが、必ず世界は均衡を取り戻すと信じなければいけませんね。そして、自分がなすべきことをなさなければ。 特集の「”渡り”と”回遊”」にあった、ツバメが「海の上を飛んでいくのか、中国大陸を渡っていくのか

次回作に期待~『むすびつき しゃばけシリーズ17』(畠中恵)~

*この記事は2019年9月のブログの記事を再構成したものです。 以前も書いたとおり、この人は作品の出来にムラがあるなと改めて思いました。 「しゃばけ」シリーズ第17弾の今回は、全体的にちょっと残念な感じです。 ↑kindle版 以下、各章の感想です。 「昔会った人」 若だんなと貧乏神金次の200年前の縁が語られます。現在を扱っているだけだとマンネリなので、若だんなの前世や来世に触れるものが、ちょこちょこ出てきていますね。 「ひと月半」 この話には、若だん

【読書】新人賞受賞作としては驚異的な出来~『桐島、部活やめるってよ』(朝井リョウ)~

キャプテンでありながらバレー部をやめた桐島の周囲の人々の、心の揺れを描いた連作短編集です。 ↑kindle版 一応「やめた」と書きましたが、本当にやめたのか、それとも休みが続いているだけかは、実は明らかにされていません(多分やめたのでしょうけど)。なおタイトルロールであるはずの桐島は、実はまともには出てこないという意味で、三浦しをんの『私が語りはじめた彼は』を思わせます。 スクールカーストという表現を聞くようになって久しいですが、最近の中高生の学校生活ってシビアですね。

知的刺激を与えてくれる~『食べる 生命の教養学12』(赤江雄一・編)~

私は小説もエッセイも好きですが、小説やエッセイばかり読んでいると、ノンフィクションのものが読みたくなります。この3つをバランス良く(といっても同じ分量という訳ではありませんが)読んでいないと、何となく頭が偏る感じがあるのです。というわけで、『食べる 生命の教養学12』を読んでみました。 このシリーズは、私は以前から愛読しています。「生命の教養学」は慶応義塾大学で毎年開かれている講座で、「『生命とは何か、<生きる>とはどういうことなのか』という問いから始まる知的探求への誘いと

【読書】人を羨む自分もまた、羨みの対象~『若様組まいる』(畠中恵)~

*この記事は2019年2月にブログで公開したものの再録です。 割と集中的に畠中恵の小説を読み、いささか飽きていたところだったのですが、この『若様組まいる』、面白かったです。ひょっとしたら今までに読んだ畠中恵の作品の中で、一番面白いかもしれません。 ↑kindle版 先日ご紹介した『アイスクリン強し』の前日談にあたる話ですが、畠中恵の小説にしては珍しく、長編です。彼女は連作短編の作品が圧倒的に多いのですが、実は長編の方が得意なのではないでしょうか。「しゃばけ」シリーズも、

【読書】西洋菓子の名は、登場人物たちの比喩?~『アイスクリン強し』(畠中恵)~

*この記事は、2019年2月にブログで公開したものに、加筆修正を加えました。 この『アイスクリン強し』は、単行本で読んだことがあるのですが、ほぼ内容を忘れているため、文庫本で再読しました。このシリーズの第3弾にあたる『若様とロマン』がいつの間にか出ていたのですが、それを読むためには第1弾・第2弾を復習しないと、分からなそうなので。 ↑kindle版 例のごとく畠中さんのお約束で、短編集の体裁で大きな1つのお話を構成しています。舞台は明治23年、舞台は築地の外国人居留地や

旅も人生も、両手ぶらり戦法とバランスが大事~『郷土LOVE』(みうらじゅん)~

みうらじゅんによる、日本の47都道府県の語り旅です(北海道のみ、南北に分けています)。つまり語るだけで、本書の制作のためには旅をしていません。唯一出かけたのは、最終回記念に和歌山の郷土料理のお店に行ったことです。そういう意味で、旅に出たくても出られない今の状態で読むのにふさわしい本かもしれません。 ↑kindle版 もともとは「ほぼ日」の連載で、収録のたびにみうらさんが都道府県の形をしたくじを引き、出た都道府県について行き当たりばったりで語るというスタイルですが、よくまぁ

【読書】主人公は三十路の泣き虫男~『うずら大名』(畠中恵)~

*この記事は2019年2月にブログで公開したものを加筆修正したものです。 畠中恵の江戸時代ものですが、シリーズ化しても良さそうなのに、現在のところこの1冊で完結しています。シリーズ化するまでの人気が、出なかったのかなぁ。個人的には、ちょっと続きが気になるのですが。 ↑kindle版 主人公は、前代未聞の三十路の泣き虫男(!)の吉之助。副主人公は、腰に下げた巾着にウズラ(「巾着鶉」というそうな)を入れている隠居大名という、聞いただけで興味が出てくるような設定です。明るいと

【読書】一葉さんは今後どうなる?~『ひとめぼれ まんまことシリーズ6』(畠中恵)~

*この記事は2019年1月のブログの記事を再録したものです。 畠中恵の「まんまことシリーズ」第6弾です。 ↑kindle版 この人は、デビューしてからもう長いのに、作品の出来にムラがある気がします。今回も今まで同様短編集なのですが、特に「わかれみち」と「昔の約束あり」は今一つの出来でした。謎解きの部分を、描写せずに説明してしまっているのは、作家としていかがなものかと(^_^;) では読む価値なしかというと、そんなことはありません。前巻での私の予測通り、女性陣が元気に活

福士誠治の解説が秀逸~『まったなし まんまことシリーズ5』(畠中恵)~

*この記事は、2019年1月にブログで公開したものに加筆修正を加えたものです。 畠中恵の「まんまことシリーズ」第5弾です。主人公の麻之助は、ようやく妻のお寿ずを亡くした悲しみからほぼ立ち直ったものの、今巻では親友清十郎の嫁とり問題が表題作通り、「まったなし」となります。その通しテーマの下、各短編ではこれまで通り町名主の跡取りとして、様々な問題の裁定に関わるわけですが……。 ↑kindle版 裁定の対象となる事件の当事者たちが、ありえないほど身勝手だったり、善悪の区別がつ

【読書】ゆるいようで、仏教の核心が描かれている~『マイ仏教』(みうらじゅん)~

みうらじゅん月間は、まだ続きます。他の本でも触れられているエピソードも出てきますが、みうらじゅん流の仏教の解説もあり、笑ったり考えさせられたりするうちに、あっという間に読了できます。ゆるいようでいて、仏教の核心が描かれている気がします。 ↑kindle版 以下、五月雨式に感想や心に残った言葉。 邪鬼目線については『見仏記』シリーズでも触れられていますが、小学生の段階で、すでに「僕も結局、邪鬼なんだ」と「仏像スクラップ」に書いていたとは! これ、笑いました。通信空手に入