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読んだ本

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読んだ本の感想です。基本、ネタバレはありません。
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2021年4月の記事一覧

努力の人、みうらじゅん~『「ない仕事」の作り方』(みうらじゅん)~

みうらじゅんの単著第2弾として読んでみたのが、『「ない仕事」の作り方』です。 ↑kindle版 題名通り、世の中にはまだ「ない仕事」を、いかにして作っていくかの秘密が明かされる本です。私はもちろんみうらじゅんの足元にも及ばないものの、マンホール蓋・単管バリケード・ピクトグラムなどがマイブームで、ブログでこっそり発信しています。 別にこれらのものを「ない仕事」にしていこうという気は全くないのですが、たとえその気があったとしても、圧倒的に私には熱量が不足しているなと思いまし

まずは認知バイアスの存在に気づく~勝手に応援!「ビッグイシュー日本版」(VOL.403 2021.3.15)~

「ビッグイシュー日本版」を勝手に応援する記事第6弾です。そもそも「ビッグイシュー日本版とは何か」をご説明した第1弾は、以下をご覧ください。 今号で印象に残ったのは、やはり特集の「思い込みと偏り 認知バイアス」です。 認知バイアスとは「心の働きにある偏り」のことですが、「偏り」などと言われると、「そんなもの私にはない!」と否定したくなります。でもどうしてどうして、間違いなく誰にでもあります。 まず唖然としたのは、認知科学者の鈴木宏昭さんの指摘。 だから同じテレビの画面を

みうらじゅんの興味の幅の一端がうかがえる~『マイ遺品セレクション』(みうらじゅん)~

「見仏記」シリーズにはまっているうちに、みうらじゅんの本に興味が出てきました。 いとうせいこうについては、もともと小説やエッセイをある程度読んできています。なのになぜ最近まで、『見仏記』を読んだことがなかったのか。それはもう、巡りあわせとしか言えません(^-^; で、みうらじゅんの単著でまず読んでみたのが、『マイ遺品セレクション』です。 ↑kindle版 前々から、様々なものを集めているみうらじゅんの部屋というか家が、どうなっているか謎だったのですが、とりあえず布団の

目を背けてはいけない指摘~勝手に応援!「ビッグイシュー日本版」(VOL.402 2021.3.1)~

「ビッグイシュー日本版」を勝手に応援する記事第5弾です。そもそも「ビッグイシュー日本版とは何か」をご説明した第1弾は、以下をご覧ください。 今号では東日本大震災及び福島第一原子力発電所の事故から10年ということで、特集は「ふくしま 10年という時間」です。 唖然としたのは、「赤坂憲雄さんインタビュー これまでとこれからの福島」の中の、以下の一節。 民俗学者の赤坂憲雄さんは、もともと「東北は植民地か」という視点でたびたび考察を行ってきたそうですが、本当に植民地と思われてい

今は敬して遠ざけたい~『旅のつばくろ』(沢木耕太郎)~

JR東日本の新幹線車内誌の「トランヴェール」に連載されたエッセイをまとめたものなので、必然的に旅の話がメインです。 ↑単行本 冒頭5行目の、「現代では、たとえどんなに遠くであっても行って行かれないことはなくなってきた」という一節が、現状では皮肉ですね。すごく近くであっても、出かけること自体へのハードルが高くなってしまいましたから。 そういう意味で、本の中とはいえ旅の気分を味わえるのも悪くないと思い、読み始めました。実は私、沢木耕太郎の本は初めてです。『深夜特急』シリーズ

お釈迦様は男女差別はなさっていない~『お経 浄土真宗』(早島鏡正、田中教照)~

「見仏記」シリーズを読んでいるうちに、次第に仏教に興味が出てきました。 とりあえず、偶然家にあったので、この本を手に取った次第です。我が家は浄土真宗ではないので、多分間違って購入したものと思われます。 まずはお経の本とは思えないサイケな表紙に驚いたら、装丁は横尾忠則でした。なるほど。でもちょっと抹香臭さが薄らぎ、手に取りやすくなりますよね。 浄土真宗で重要なお経の原文・読み下し文・現代語訳が載っており、後述のとおり内容的には興味深かったです。ただし「原文に対応する読み下

ただの「面白動物エッセイ」ではない~『ソロモンの指環』(コンラート・ローレンツ著、日高敏隆訳)~

*この記事は、2018年8月にブログで公開したものに加筆修正を加えたものです。 『ソロモンの指環』がEテレの「100分de名著」で取り上げられていて、「そういえば、うちにあるのに読んだことなかったなぁ」と思ったので、読んでみました。 正確に言えば、上記の文庫本ではなく、下に挙げた、同じ早川書房のハードカバーですが。 家の内外に動物を基本的に放し飼いにして観察することから生まれる、ローレンツの悲喜こもごもの日常が描かれている、楽しいエッセイです。動物から娘を守るため、奥さ

20年前の本だけど、楽しく読み進められる~『ヒヨコの猫またぎ』(群ようこ)~

ちょっと前に群さんのエッセイ集の感想記事を再掲したのをきっかけに、久しぶりに群さんのエッセイ集を読んでみました。 といっても最新のものではなく、図書館で適当に手にとったら、単行本としては20年前に発売されたものでした。 よって表紙には、懐かしのブラウン管のiMacの絵が描かれています。でもこのバージョンは1998年にグッドデザイン賞を受賞したそうで、今から見ても可愛いですよね。 冒頭から群さんのお母さんとの買い物ツアーの話で始まったのは、ちょっとうんざりしました。群さん

個人的には、着実な効果を感じます~『自律神経を整えて病気を治す! 口の体操「あいうべ」』(今井一彰)~

2020年6月、面白い本に出会いました。現在も、書かれていることを実践中です。 要するに、現代人は口呼吸のせいで様々な病気になっているので、鼻呼吸にするため、「あいうべ体操」で口の周りの筋肉を鍛えましょう、という内容。 表紙にあるとおり、本当に高血圧、アトピー、花粉症、睡眠時無呼吸症などなどに効くかは定かではありません。でもやってみたところ、個人的には確実な効果を感じました。 まず「あ」と声を出しながら口を開けるところから始まるのですが、私は顎関節症気味のため、最初は痛

本業をおろそかにせず、新規事業に乗り出す~『陸王』(池井戸潤)~

*この記事は2018年8月にブログで公開したものに、加筆修正を加えたものです。 ドラマ「陸王」は昨年(注:2017年)の放映時には、「面白そうだな」と思いつつ、結局観ませんでした。でもどこかで引っかかっていたので、ケーブルテレビで一挙放映した時に録画して、観てみました。 生き残りをかけてランニングシューズ作りに乗り出した老舗足袋屋の「こはぜ屋」社長の宮沢、ランナーとしての再生を目指す茂木、就活中の宮沢の息子の大地の話が交錯する物語です。 一難去ってまた一難という感じでハ

「特別道草篇」の発行を待望します~『見仏記 道草篇』(いとうせいこう、みうらじゅん)~

夢中になって集中的に読んできた「見仏記」シリーズも、とりあえずのところ、これでおしまいです。だから大事に読みました……と書きたいところですが、実際には3日弱で読了してしまいました。だって面白いんだもん。 ↑kindle版 表紙をめくってまず謎だったのは、表紙カバー見返しのリンゴの群れ。なぜに「見仏記」でリンゴなのかと不思議に思っていたら、長野の章で謎が解けました。 この巻はリンゴもパンダも登場し、ついには見るべき仏像も見そびれてしまったりしだします。でも以下の考えに基づ

30年後の今も、当てはまる言葉~『創竜伝4ー四兄弟脱出行ー』(田中芳樹)~

久しぶりに、『創竜伝』の続きを読むことができました。このペースでは懸案の14巻・15巻を読むのは、いつになることやら(^-^; ↑kindle版 ともあれ副題通り、ついに四兄弟は日本を脱出し、アメリカに向かいます。その過程で、米ソの大陸間弾道弾のほとんどを破壊してしまうのだから、相変わらずスケールははんぱないです。というか、それが破壊したものの、ほんの一部でしかないところが恐ろしいです。 ↑新書版。私が読んだのは、このバージョンです。 心に残ったところ。 原生林を切

読み応えたっぷりです~勝手に応援!「ビッグイシュー日本版」(Vol.401 2021.2.15)~

「ビッグイシュー日本版」を勝手に応援する記事第4弾です。そもそも「ビッグイシュー日本版とは何か」をご説明した第1弾は、以下をご覧ください。 今号は特集は「アリ、1億5000万年の生き方」で、この3月で終わってしまったEテレの「又吉直樹のヘウレーカ!」でも何度も登場した、アリの研究者の村上貴弘さんがアリの世界を紹介してくれます。それこそ「ヘウレーカ!」のアリ特集の時の放送内容を思い出しつつ、楽しく読み進めました。 印象に残ったのは、表紙にもなっているムハマド・ユヌスのインタ

奈良美智の表紙が可愛い~勝手に応援!「ビッグイシュー日本版」(Vol.400 2021.2.1)~

「ビッグイシュー日本版」を勝手に応援する記事第3弾です。そもそも「ビッグイシュー日本版とは何か」をご説明した第1弾は、以下をご覧ください。 今号は記念すべき400号で、表紙はスペシャルインタビューでも取り上げられている奈良美智の絵です。「希望へ 英国、米国、ドイツからの報告」という特集名とも、よく合っていると思います。 記事の中では奈良美智の他の作品の写真もふんだんに使われているので、ファンの方にはお勧めです。 印象に残ったのは、奈良美智の以下の言葉。 私も祖父の出身