mar-マール猫エッセイ(73)anchor
飼い主のハルさんのanchor、それはたぶん、猫のあたしだと思っています。
猫は生まれた時から天涯孤独、たとえ飼い主みたいに餌をくれる人間がいたって、精神は自立しています。人間みたく、愛がどうとか言わないのは、愛を信じてないのではなく、愛は当たり前にある、それが猫です。
だからかな、猫が小説を書かないのは。いやいや、人間以外で、言葉を操ったり、文章を書いたりする生き物はいませんって?それは人間の傲りというものかしら。文章で記録に残さなくても、ちゃんとあたしたちの記憶、そのとき感じたことはDNAに残してますよ。
もしも平和に暮らしていたら、わざわざ平和なんて口にしないだろうし、心が穏やかだったら、穏やかに暮らしたいなんて思わない。いつも愛に包まれてたら、空気のようにあるのが当たり前の愛なんて気にもしない。
空気の薄い高山に登ったとき、初めて空気の存在に気づくみたいなものかしら。飼い主のハルさん、花粉症で両方の鼻が詰まったときには、自然に新鮮な空気で体を満たしてくれているはなに感謝していたっけ。
いつもは邪険にして遊んでくれない飼い主、でも、あたしが姿を消すと途端に探し回ってアタフタしています。
猫のあたしがいるから、心も身体も健康で、元気でいよう、安全に運転して他人も自分も傷つけることなく、無事におうちに帰ろう、自分を大切にしよう、そう思ってくれているみたいです。
たとえハルさんが道に迷っても、道は未知に繋がっているし、どこまで行ってもあたしがanchorになって逃しません。
小さくてよわっちいanchorですが、ガッチリ飼い主の手綱は結わえています。
to be continued