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mar-マール猫エッセイ(16)指差し呼称でリスク回避
「マール、ちょっとお風呂に入ってくるき」
ご丁寧に飼い猫のあたしにちゃんと報告して出かけるハルさん、近所の桜の湯へ垢すりに行くようです。
近所といっても、愛車のラパンで20分かな。田んぼの中にある温泉と称するただの風呂がハルさんの憩いの場です。
ただ、この憩いの場で、とんでもない事件に遭遇したことがある、と話してくれたことがありました。
話を盛る癖があるハルさん、でも、引き算をして聞いても、とんでもない事件でした。
(=゚ω゚=)(=゚ω゚=)(=゚ω゚=)
ハルさんが看護師になったばかりの頃のことです。桜の湯に垢すりに出かけたハルさん、番台のスタッフにチケットなるものを渡し、右側の女湯へ入っていきました。
脱衣場には誰もいません。平日の昼間です、しかも田んぼの中にあるお風呂です。そうもお客さんはいません。
「ラッキー」
内湯は3つ。ブクブク泡の出るお風呂、少し熱めのお風呂と普通の湯加減のお風呂があります。ハルさんのルーティンは泡のお風呂でまずはからだを弛めることだそうです。
あたしは猫だからお風呂に入りません。もちろん、猫にも風呂好きな奴がいます。今ならSNSっていうんですか、飼い主が投稿して、人気者になった猫もいるようです。
でもハルさんはそんなハレンチ、いや、猫のあたしが嫌がることはしません。有名な猫になってガッポリ稼げたらいいのかもしれないけど、美味しい話には落とし穴があると教えてくれたのもハルさんです。
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そのハルさん。ブクブク泡のお風呂に浸かっていたら、何か違和感というか、嫌な感じがしてきたそうです。
目が悪いハルさんは眼鏡ですが、風呂場では曇るし、レンズが傷むので外しています。
ただ、脱衣場にいる、妙にガタイのいい人とさっきから目が合うん気がするんです。
何か変
ハルさんの危機管理のアンテナがビンビンと危険を知らせたそうです。
そう!ハルさんは"男湯"に入っていました。
なんで、そうなるの!
いや、今は理由なんてどうでもいい。今ある危機からの脱出が最優先事項です!
ハルさんは目を細めて周囲を偵察、なんと!いつも垢すりをしてもらっている、馴染みの女のスタッフさんを見つけました。
手を振ると、驚きを隠さずにハルさんの元へ飛んできてくれたそうです。そりゃあ、そうでしょうね。
バスタオルを巻いて、何気ないふりで垢すり部屋からスタッフ室、そこから、正規の女湯まで脱出したのでした。
(=゚ω゚=)(=゚ω゚=)(=゚ω゚=)
さて、どうしてこんな事件、否、事故が起きてしまったのか、読者諸君、分かるかな~。気分は猫探偵マールです。
実はこの桜の湯、10周年記念ということで、初の試みで男湯と女湯を入れ替えたそうなんですが、その初日にハルさんが行きました。
・右側が女湯と思い込んでいたハルさん
・男湯という文字と紺色ののれんに無反応な ハルさん(女湯はいつも紅色)
・ハルさんと声を交わしたのに、気づかない 番台のお姉さん
お客がハルさんだったから大笑いしてすんだけど、いちゃもんつけるお客だったら大変なことになっていたやろうにゃあ。
ひとりでお留守番の暇な夜は、ハルさんの
"やらかし"を妄想しては「アホやなあ!」とひとりでツッコミを入れながら時間を潰しておりました。
ところで、ハルさんはてっきり何かお詫びの品でも貰えるかとドキドキしていたそうなんですが、何も無かったし、催促もおかしいと思って大人しく帰ってきたそうです。
「次からは、指差し呼称するき」
それから、男湯と女湯は、永遠に入れ替わることはなかったとさ。
to be continued
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春近しアシンメトリの髪の揺れ