見出し画像

長いのは、日本語教師になってから

修士課程を2017年に修了し、早6年が経とうとしています。大学でも勤務しているため、新しい情報を得るたび、かつて学んだことがめっきり古くなってしまったようにさえ感じます。そこで、日本語教師になる人に、日本語教師の自己研鑽の落とし穴と注意点について考えてみたいと思います。

①セミナーに参加するのは何のため?

コロナ禍もあり日本語教育関連でもオンライン開催が急増し、学ぶ機会が増えた人も少なくないことでしょう。
確かに、セミナーへの参加で同志との出会いや、最新の情報を得られます。一方で、課題が大きく改善されているわけではないようです。なぜなら、同じ人が似たようなセミナーに繰り返し参加しているだけになっている可能性があるからです。
基本的には、セミナーの学習成果は、同じ職場の同じ仕事してる人をまきこんで変化を起こすことで得られるといっても過言ではありません。あくまでも現実的な課題の解決につなげる場として活用すべきことを強調する必要があります。単に、他の教育機関の人と仲良くなったり、知識が増やすこと自体は目的ではないのです。

②イベントの趣旨や違いを理解しているか?

日本語教育関係のイベントには、「学会」や「研究会」などの研究系と「セミナー」・「勉強会」などの研修系の2つがあります。
研究系の趣旨は、あくまで「研究者」の研究成果を発表し、「研修者」が批評をする場です。一方、研修系は、専門家が、それ以外の人々に新たな知見や学ぶ機会を提供するものです。
ここで重要なのは、違いを理解せずに参加すると、本人だけでなく他の参加者にとって時間のムダになるということです。研究系は研究の批評と進展が主な目的ですから、「私はこんなことに困っています。どうしたらいいですか?」という質問には、「知らん。」としか答えようがありません。このような質問で、限られた時間を中心的な話題に割けないのは非常にもったいないことです。
一方で、研修系であれば、そのような質問は大歓迎で、一緒に考える機会として重宝されることでしょう。
このように各イベントごとの目的がありますのでそれを理解して参加することが重要です。

③たまにいる変な人に気をつけましょう!(SNS編)

最近SNS等で、「資格が取れる」や安価な価格設定の「サロン」、解説系動画配信などが散見されます。しかし、このようなものには十分に注意が必要です。なぜなら、情報の正確性を担保するシステムがないからです。公的なイベントは開催のプロセスや会場でチェックが入ります。しかし、閉じられた空間の中では、相互チェックが働かないため、思い込みや勘違いに基づく誤った主張がなされることがあります(自戒を込めて)。動画配信SNSでも、明らかに間違った主張をしている人がいますが、日本語教師志望の人にそのことを見抜くのは困難ですし、批評できる人はそもそもその動画を見ていないわけですから、誤りに気付く人もいません。
問題は、不正確な知識を指導に使ってしまった場合、学習者にも悪影響を与える可能性があります。社会人経験がある方や30~40代くらいの方に多く見られますが、なぜか「心の師匠」みたいなものを作り、その人を信奉しようとする傾向のある人がいますが、あなたはあなたですので自分の道を切り開きましょう。②に関わることですが、あまり固定の人間関係に執着しないことも重要かもしれません。

④たまにいる変な人に気をつけましょう(イベント編)

また、イベントにおいても、参加者に注意が必要です。まれに(本当は結構ある)、質疑応答の時間に、本題とは関係ない演説・説教をし始めたり、珍説や自説を開陳して参加者を唖然とさせたりする人がいます。しかしながら、困ったことに、特に名前の知れた大学の先生だったり、取り巻きの多い人だと、一定数同調する人が出てきてしまうのです。日本語教師になったばかりの人にとっては、「偉い大学の先生」や「有名な日本語教師」と呼ばれる人たちの思想や背景を十分に理解しているとは言うのは難しいでしょう。この際、極端すぎる考えを一般的なものとして受け止めてしまいかねないと危惧しています。

④日本語教育の本を読みましょう!、でいいのか?

最近、雨後の筍のような勢いで日本語教育概論に関する書籍が出版されています。それと同時に、日本語教育の出版社が、発刊前後に発売記念イベント的に著者登壇のセミナーとかやるようになりました。これは、プロモーションと出版費用の裏取引もあるようですが、それと同時に、日本語教師養成課程で学んだくらいでは、本の内容を半分くらいしか理解できないのではと思い始めています。なぜなら、授業準備をしていると、養成講座の講義で扱う内容はおそらく入門書の1/10くらいに留まっているように思います。かといって講義を増やせばよいというものではありませんので、自律的に学び続けられる教員の養成を考えないといけないなと改めて思います。

まとめ?

日本語教師になるまでに多くの人がたくさん勉強します。しかしながら、半年から1年で学ぶよりも、より広くより深く学び続けることが、教師になってから求められます。焦らずに長く学び続ける姿勢を持ってもらえるように、この記事に書いたような落とし穴にはまらないようしたいものです。