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第43話:ダークマター(暗黒物質)とは?

 ダークマター。ゲームとかでよく出てきますよね? なんかラスボス前に手に入るアイテムっぽいあれです、あれw。

 でも、ダークマターを説明できる人って案外多くないんですよね。ということで今日は特別にそんなダークマターについて教えちゃいます。ちなみにちょっと新し目の物理論文のお話も付け加えておきますので、これを知ったら家族にマウント取り放題ですw ワクワクしながら読んでくださいね。

 さてダークマター、一言で言うと「見ること」も「触れること」もできない物質なのですが、確かに存在している物質になります。あっと、これ禅問答ではないですよ? これ信じられない話だと思うのですが事実なんですよ。そう、この広大な宇宙には、とてつもない量のダークマターが漂っているのです。そう、人の「心」もすべて脳の電気信号にすぎないと考える極端な「唯物論者」にはなかなか理解できない存在、それが「ダークマター」なのです。

 でも、こんな目に見えない物質であるダークマター。どうやってその存在を証明したのでしょうか? それは観測と理屈の力なのですが、今回はその中でも分かりやすく、直感的に理解ができる説明をしてみますね!

NGC 4414はかみのけ座にある典型的な渦巻銀河(wikipediaより引用)

 まず上の写真のようなうずまき銀河を考えてみましょう。こういう渦巻銀河、実は地球からたくさん観測できるのですが、その星の回転運動を調べてみると、その回転速度は銀河の中心からの距離に依存せず、 ほぼ一定であることが分かっているんです。これが観測の力。

 では、次に理屈の力です。本当はもっと複雑な理論があるのですが、今日はわかりやすく、単純化した例で説明します。いや、まぁ、ウソではあるのですが、あながち全部はウソではないというのが面白いところではあるんですけどね。

 てことで、銀河の中心に星を引っ張ってる力って何でしょう? と問われれば、その答えは万有引力です。ちなみにこんな感じの式になります。

Mが銀河の中心活動銀河核の質量、mが惑星の質量、rが回転半径、Gが万有引力定数

 あ、そうそう。銀河の中心には中心活動銀河核ってのがある場合があって、そこは巨大な質量を持ってるですね。で、まぁ、この話は今度するとして、そんな感じで恒星を銀河の中心に引っ張る力が決まります。

遠心力・向心力(Wikipediaより引用)

 で、このままだと恒星は銀河の中心に引きずり込まれちゃうので、それに抵抗する力がはたらくわけです。遠心力の方が多分、馴染みがあると思うので遠心力で説明しますね。まぁ、遠心力ってバケツに水をいれて回転させると、水が外側に逃げようとするのでバケツから水がこぼれないっていうアレです。それで、それが釣り合うと、

万有引力と向心力のつり合い(第一宇宙速度)

 こんな式にとなるわけで、中心からの距離rから離れると、速度が速くなるという式になるのです。

 でも、あれれ、おかしいぞ? 銀河の中心を回る恒星の星の速度は一定でしたよね? 矛盾してませんか? あ、じゃあ、全部の恒星の速度が同じだとしますよ? すると上の式から、銀河を回る恒星の半径rは全部同じにならないといけなくなりません? すべて同じ軌道上に恒星があつまらないといけなくなりません?

 でも、上の銀河の写真をみてください。銀河は距離とは関係なく一様に明るいでしょ? これって、つまり、恒星が銀河全体にまんべんなく散らばっていることを示しているんですよ! で、そうなると、その矛盾の整合を合わせるためのエネルギーや物質が存在しないといけないわけです。それがダークエネルギーであり、ダークマターなのです。

暗黒物質に囲まれた地球の想像図(wikipediaより引用)

 ね、これって面白いでしょ? 「計測技術」が「物理」の常識を覆した例なんですよ、これ。 そしてこれこそが「物理学」は「理論物理」だけではなく「実験物理」も大切である理由なのですよね。うんうん。

 てことで、質問です。「ダークマター」と「ダークエネルギー」、宇宙ではどれくらいの量を占めていると思います?

 答えは、宇宙の総質量の約95%程度です。ちなみにダークマターが約30%、ダークエネルギーが約65%程度です。 つまり今の人類は5%としか知らない物理量をもって、偉そうに物理を語っているのですよ! でも、人類の科学って所詮この程度なんですよねw

 ではそんなダークマター、なぜ人類はいままで見つける事ができなかったのでしょうか? それはダークマターが、光の反射も吸収もせず、われわれの知るすべての電磁波の周波数を使った観測でも見ることができない物質だったからです。

 しかし、2017 年4 月にカナダの大学が、ダークマターの可視化に成功しました。使用した観測技術は「重力レンズ」。 「重力レンズ」はそこに「ある」ものを直接捉えるのではなく、重力源とその影響による時空の歪みを像として映し出すものです。 これも「計測技術」が起こした「ブレイクスルー」で、「実験物理」の「真骨頂」ともいえる発見でした。

重力レンズの概念図(wikipediaより引用)

 まぁ「重力レンズ」の原理の説明は難しいので、他で解説するとして、話を戻して、カナダのチームのはなし。

 ダークマターは質量を持つにもかかわらず他の物質と相互作用をしないと考えられていました。 しかしこのカナダのチームは、銀河系の遠心力のつり合いをずらす例があるように、重力にだけは作用するのではないか? と考えたのです。だから、重力レンズであればダークマターを捉えられるのでは? と考えたんですよね。そして、その結果、重力レンズを通して撮影した画像は重力による歪みが観測され、こうやって人類はダークマターの正体に一歩近づいたというわけです。

 しかし、こんな「計測技術」は新しい疑問を人類に投げかけてきました。 2018 年、地球から約6500 万光年離れた「NGC1052-DF2」という銀河は、その質量のほとんどを恒星が担っていてダークマターが全くない状態であることが分かったのです。 この発表は宇宙や銀河に関する理論をもう1 度見直すべきだという議論を巻き起こしたのです。

 つまりダークマターは存在せず、我々の宇宙を支配する他の方程式があるのではないか? とか、ダークマターは一様に分布しているわけではないとか、です。こうやって「物理」の世界は常に変化し続けているのですよね。

 てことで、この話を聞いてどう思いましたか? この話を聞いた後、「幽霊など存在しない、科学的ではない」とかいう人をあなたはどうみますか? 非常に「無知」な人間だと感じませんか?

 そうなんですよ。繰り返しますが「人類」の得た知識なんて、所詮宇宙の「5%」にすぎないのです。しかも、この5%という数字ですら、ダークマターやダークエネルギーの存在が正しいと仮定しての話なのです。

 てなことで、色々な教訓が詰まっていると思いませんか? 物理って。だから面白いんですよ! これが、ね!

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