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ブレない女、ブレまくりな女

私の母はブレない。好きな歌手は50年ぐらい変わってないし、何かに対して「好きなものが嫌いになった」というような話をほとんど聞いたことがない。
一度好き嫌いのレッテルを貼ったら二度と剥がれない。レッテルというより刻印だ。

そんな母は、山田涼介を見るたびに「あら、綺麗な子!」という。名前は覚えられないらしい。恐らく顔も忘れている。
最初は「山田涼介だよ」と返事をしていたが、次第に「あなたが毎回綺麗だと褒める山田涼介です」と教えるようになった。

最近は松下洸平も好きらしい。CMが流れるたびに「このかわいい子は誰?」と言う。
何度か「あなたの好きな松下洸平です」と答えるうちに「やっぱりね〜」と変化球をくらった。彼に関しては、どうやらなんとなく認識しつつも自信がないらしい。
しかしながら、毎回新鮮な気持ちで同じ人に対してイイねを出せる軸の強さに感心する。

好きと逆のパターンもある。母はとあるJ-POPの曲が流れると必ず酷評する。具体的に名前を出すと悪口になってしまうので言えない。悪口は相手の耳に入れないのが私のポリシーだ。
母は恐らくタイトルも歌手も覚えてないし、曲自体毎回忘れていると思う。毎回サビを全て聴き終えてから「くだらない歌詞だな!」と言うからだ。ディスるポイントもいつも同じ。頭に「何回聴いても」が付いたら覚えているのだろうが、フレッシュ悪口だからすごい。

その辺私はブレブレだ。
昔はガリガリ色黒の、ゴボウみたいで険しい顔の男性がタイプだったが、最近は中肉中背でかわいらしい顔の方が好みだ。全く逆を行っている。
部屋も以前は男前インテリアと呼ばれる、アイアン+レンガ壁などのインテリアにしていたのだが、ある日「部屋はもっと明るくないとだめだ」と思い立って、白ベースの家具を買い集め出した。

別にブレるのは悪いことじゃない。
でも、もし私が記憶喪失になって恋人が誰か分からなくなったとしたら、漫画みたいに魂レベルで「絶対にこの人だわ…!」と思い出すことは不可能だろう。一生他の悪い男に騙されたまま、その悪党と結婚してバッドエンドを迎えるのだ。
生まれ変わってもまたあなたに逢いたい、というような歌詞にどれほど共感しても、多分二度と逢えません。ブレブレ女にロマンティック展開は期待できない。

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