展着剤の安全性。ポリオキシエチレンとはどんなものか

農薬を散布する際、ほぼすべての農家がその農薬希釈液に加えるものがあります。
それが「展着剤」と呼ばれるもの。
以前も展着剤についてのnoteを書きました↓

以前のnoteでは、展着剤とはなにか、その役割についてを書いたんですが、ふと思ったんです。

機能性展着剤(アジュバント)に農薬を作物に染み込ませる効果があるということは、展着剤自身の成分も作物内に染み込んでいるということでは?
となると、その主成分の安全性は?

展着剤にもいろいろな種類があり、その主成分も様々ですが、その中で”非イオン系”と呼ばれるものの主成分はポリオキシエチレンという物質の一種です。
以下に例を挙げると、

  • アプローチBI > ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル系

  • グラミンS > ポリオキシエチレン脂肪酸エステル系

  • マイリノー > ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル系

  • ワイドコート > ポリオキシエチレンアルキルエーテル系

などです。
それぞれ名前の後半部分が違っているので、成分としても特徴が異なるのでしょうが、化学に詳しくなく一つ一つの違いはよく分かりません。
ただ、この長野県のまとめた展着剤についてのPDFに細かい部分も記載されているので興味のある方はご覧ください。
15-9.pdf (nagano.lg.jp)

とりあえず頭の部分がみんな”ポリオキシエチレン”から始まっているので、ではポリオキシエチレンとはどんなものなのかを調べてみました。

ポリオキシエチレンとは、炭素・水素・酸素からなる化合物でポリエチレングリコールとも呼ばれ、重合という化学反応で様々な化合物質を得られる物質のようです。
用途としては、非イオン系の展着剤のほか、軟膏やシャンプー、中性洗剤、さらにポリウレタンの素にもなるそうです。
つまり、現代社会のあらゆるところで利用されている物質といえます。

環境省のまとめた”ポリ(オキシエチレン)=ノニルフェニルエーテル"に関するこのPDF資料を見ると、生物濃縮性はない、もしくは低いと判断される物質のようです。つまり体内に吸収され、濃縮していくような物質ではないとされています。
日常的に利用される物質であるため、ポリ(オキシエチレン)=アルキルエーテルに関するPDF資料では平成19年の製造および輸入量は”100,000~1,000,000t/年未満である”と記されています。なかなかの量に感じます。

ポリオキシエチレンといっても炭素鎖の長さで様々な物質に分かれるので一言で安全性を計るのは難しいですが、水生生物への影響については、概ね悪影響を与えるような濃度は淡水・海水とも検出はされていないようです。
ただし、ポリ=アルキルエーテルの場合、1,500µg/Lでコイが死んでしまうという結果が出ているので、毒性が全くない物質というわけではありません。(ただし自然界で検出される濃度は淡水下で最大7.3 µg/L 程度とのこと)

展着剤だけでなく、日常生活の様々な場面で利用される物質であるため、ポリオキシエチレンのいくつかの物質は、化学物質による環境の保全上の支障が生ずることを未然に防止することを目的とした化学物質排出把握管理促進法(化管法)の第一種指定化学物質リストに含まれています。

現在、PFAS(PFOA、PFOS)も話題になっていますが、

ポリオキシエチレンをはじめとする化学物質も今後、なんらかの新しい知見が発見される可能性もゼロではないかも知れません。

でもそういうことを考え出すと化学物質に溢れた現代社会では心配が尽きなくなってしまいますが、極力、自然にあるがままで、(自然がすべて正義ではないかも知れないけど)出来るだけあるがままで野菜たちが育つように工夫していきたいな、とは思うわけです。

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