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置き去りのカレンダー


ある日を境に、日にちを刻む事をやめたカレンダーがいた。
ある日突然、暮らしのすべての時間が止まった。

何度となく目にしてきたこの感じ。
シン、と静かなその場所は、異次元のように同じ形で居続ける。
丸めたティッシュも、まとめて洗おうと思って水につけてあるお皿も、定位置の新聞も。

暮らしを動かしていた主だけがそこから居なくなって、循環しなくなった空気が、そのままの状態でそこに留まっている。

今日。
義父のふた七日。
倒れた日で止まった日めくりカレンダーを外した。

今まで当たり前に感じていた時間の概念が、ぐにゃりと歪んで捻れる感覚になる。

この感じ...
今はもう更地になった実家を、片付けていた時にも感じた。

止まった時間の中に異界の私が入る。そこにはそこかしこに、生き生きとした時間とエネルギーの欠片が残っていて、不思議と暖かい気持ちになる。
明るくて、笑い顔が絶えなかったあの時に引き戻される様な感覚になる。

日付を刻む事をやめたカレンダー。
無情な強制終了がかかった日。

明日を憂いて、心配しないで。
昨日を悔やんで、悲しまないで。

あるのは今。
一瞬一瞬、暖かく明るく感謝して。
それを重ねて今を作ってどんどん置いて行こう。

1年間、置き去りにしてたカレンダー。
外して、新しい時間を動かそう。
止まって留まっていた空気が、ヒュルル~と動き出した。

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