エンプラCSとはなんなのか
年末年始や連休になると、1つくらいまとまったnoteを書いておきたいな、という気持ちになりがち、私です。
4年ほど、PLAIDという会社でエンタープライズカスタマーサクセスとして駆け抜けてきたのですが、「そもそもエンプラCSってなんなんだろうか」というのを自問自答しつつ、いつか言語化しておきたいなーという気持ちがありました。
で、少しずつ考えが固まってきたので、この年末年始に「ちょっと書いてみよう!」と思い立ち、年末の割と早い段階で着手したんですが、書き始めてみるとああでもないこうでもないと気づけば年が明けていました、改めましてあけましておめでとうございます☀
というわけで、四苦八苦しながら書いてみたのでご興味ある方はお付き合いくださいませ。
私について
このnoteを書いている私について簡単に自己紹介をば。東原希典(ひがしはらまれすけ)と申します。Xこちら→ https://twitter.com/ma_re_su_ke まだ慣れてなくてtwitterって言いたい気持ちです。
2020年1月からPLAIDという会社でカスタマーサクセスを担当しています。主にエンタープライズ企業様のサクセス担当としてクライアント様伴走させていただきつつ、カスタマーセールスや、運用パートナー様のお力を借りたBPO推進、ちょっとしたセミナー登壇だったり、幅広くいろんなお仕事にチャレンジさせてもらっています。しばらく前のものですが、登壇の様子はこちら!
PLAID、および提供しているプロダクト「KARTE」についてはサイトを見てみてください!
では本題へ!
エンプラCSに必要な3つの力「クライアント様への好奇心」「プロダクトの理解」「プロジェクトマネジメント」
ここが今回の結論かつ一番書きたいポイントで、見出しの通りなんですが、いろいろと考え抜いた結果、「クライアント様への好奇心」「プロダクトの理解」「プロジェクトマネジメント」の3つがエンプラCSに求められる力、というのがいまの私の結論です。
では、1つずつ書き出してみます。
①「クライアント様への好奇心」
個人的に、エンプラCSにとって最重要事項はこれじゃないかなと。目の前の担当者様やその他関係者様に寄り添い続ける力。それをどう言語化するのがいいのかなーと考え続けた結果「好奇心」という言葉にたどり着きました。
エンプラCSってなんとなく、まずは相手のIR資料を読み込もう!とか、あるいはエンプラ特有の、相手の組織図を把握して上席にタッチしに行こう!みたいな進み方してしまう気がするんですが、私の経験則だといきなりそこに着手するの、なんかちょっと「それじゃない感」ありまして。
それなぜなんだろうか?というのを考えた時に、一度逆の立場になってみるとよさそうだな、と。で、色々考えてみたんですが。
たとえば、あなたの部署で新しいツールの導入が決まって、その推進役にあなたが抜擢されたとします。部長からは「よいツール導入したから、ちゃんと使いこなしてくれな!」などコメントもらっちゃったりして。その時、どんな気持ちになりますか?
私、かなり高い確率で「不安」だと思うんですよね。ツールの勉強しなきゃ・・ちゃんと使えるようになって、周りにも使い方周知しなきゃ・・自分にちゃんとやれるかな・・みたいな。
そんな中、一番最初にこの「不安」に寄り添うのはやっぱりサクセス担当であるべき!というのが私の考えなんですが、この時にサクセス担当から「御社のIR資料、バッチリ読み込んできましたよ!」とか「上席の方にもご挨拶させてください!」と言われたとして、どうでしょう。「それじゃない感」すごくないですか?w
だとすればやっぱり、目の前の人がいまどんな感情で、何で困っているのか、どうなったら安心するのか、というところに徹底的に寄り添って、正しくご案内する、オンボーディングプログラムを正しく進める、が肝要です。
初手はこれが何より大事で、これを突破して初めて最初の不安を取り除く事ができ、ようやくここでスタートラインに立つことができるものと感じています。
スタートラインに立ったあと、正しくプロダクトを使い始めていただければ成果も出始めるはずなので、ここでサクセス担当やあるいはセールス担当からも「アップセルだ!」とか「エクスパンションだ!」みたいな話になりがちですが、個人的にはもうちょっとガマンが必要!と思っています。
アップセル等ご提案の前に、エンプラCSとしてはプロダクトのサクセス担当からビジネスパートナーに昇格できるように足がかりを作っておきたいところ。
ここでもまた逆の立場になって考えてみます。クライアント様が、プロダクトを使い始めて、一定慣れてきたとして、次に困ること、あるいは困っていないけど潜在的に解決したほうがよさそうな課題はなんだろうか?と。
これを具体で考えてクライアント様の前に並べ、相談・ディスカッションできれば、少しずつですが相手のステークホルダーは増えていくはずです。「実は◯◯でも困っていて」「別部署でも試したいという声があって」などなど、プロダクトの特性によって状況は様々あると思いますが、この手の話が積極的にできるようになって、いちサクセス担当からビジネスパートナー、ただのツールベンダーではない存在に近づいていくはずです。
これを重ねていくことで、次の課題を解くために、あるいはこれまで以上のチャンレンジをするために、アップセルやクロスセルがクライアント様にとって有効な手段に見えるように進めていく。これが大事なポイントだと思います。
この全てのプロセスにおいて重要なのが、冒頭に書いた「クライアント様への好奇心」で、目の前にいる人、その先にいる人と、顕在化した課題だけでなく、潜在課題にまで思いを馳せ続けることができるか?というのがCS担当として最重要スキルだと私は思っています。
それってやっぱり、好奇心がないと出来ないことなんじゃないかな、と!実際、クライアント様とこういう会話をしている瞬間が、自分自身は最高に楽しかったりしますね😊
②「プロダクトの理解」
カスタマーサクセスという仕事がどういう仕事なのか?というのは色々な書籍や記事に掲載されているんですが、あんまり「プロダクトについて詳しくあれ!」みたいなことって書かれていない気がするんですよね。
日々を伴走するカスタマーサクセスは、クライアント様から見れば「そのプロダクトに関するプロ」という見られ方をしているはず。であれば、やっぱりそんなクライアント様の期待に応えたいな、というのが私の考え方です。
具体、クライアント様側からプロダクトについての質問を受けた際に適切に回答し、これまで以上にしっかりとプロダクトを活用してもらうための援護射撃をすること。加えて、可能な限りプロダクトの機能を幅広く理解しておくことで、前述したクライアント様の事業課題に対して新たなソリューションを提案すること。このあたりがカバーできると、クライアント様からビジネスパートナーとしての信頼を積み上げて行けるはずです。
更にこれを繰り返すことで、プロダクトの不便さや、必要な追加機能も見えてくるので、プロダクトフィードバックとして自社の事業開発に活かすことができるのもサクセス業務の醍醐味だよなあ、と思ったりします。対クライアント様業務だけじゃないぞ、エンプラCS!
更に更に高みを目指すと、プロダクトの理解だけでなく技術的な周辺知識も理解しておきたいところ!例えばデータ整理のためにSQLをちょっと書けるようになっておくとか、フロントエンジニア的な知見をつけておくとか。
がむしゃらになんでも学ぶべき、という話ではなく、あくまでもクライアント様の事業課題を解決する、そのために自社プロダクトや自社ソリューションをこれまで以上に正しくお届けする、磨き上げる、というところを目的として幅広く学びを深めておけると大きな強みに変わっていく感覚があります。
③「プロジェクトマネジメント」
クライアント様への好奇心、プロダクトの理解ときて、これらををフル活用するために必要なのがプロジェクトマネジメントなんじゃないかと。そもそもここでいう「プロジェクトマネジメントってなあに?」というところから自分なりに書いてみます。
カスタマーサクセスの活動って、プロダクトをご活用いただくこと自体が大事なのではなくて、プロダクトをご活用いただくことでクライアント様やその先のユーザー様の課題を解決することと、それを実感していただくことが大事だと思うんですね。その「課題解決の実感」に対して対価をお支払い頂くものであるはずで、であればまず最初に設定されるゴールは「課題解決の実感」になるはずなんですね。
エンプラCSに限った話ではないですが、プロダクトの提供だけでクライアント様が「課題解決の実感」まで100%たどり着くかというとそうではない。
これに対して「それはプロダクトがまだ未熟だからだ」とか「オンボーディング他の仕組み整備が出来ていないからだ」という意見もあっていいと思うんですが、いきなり100点をとれるプロダクトや仕組みはこの世に存在しないし、また時間や時代と共に求められるものが変わっていくこともあるので、人が介在してクライアント様に価値実感いただけるようにしていくことはまだまだ大事だと思っています。
だとしたとき、「課題解決の実感」を状態目標としてクライアント様と一緒に設定していく必要があるのですが、これも同業種であっても各クライアント様でちょっとずつ状況や課題感が違ったりするので、まさにここは人が介在して丁寧に設定していくべきところで、それが設定されたらそこから逆算していつまでに何にトライしていただく必要があるのか、そしてこちらからどういご支援をしていくのか、というのを描いて、共通認識を持っておく必要があります。
またこの時、独りよがりにお絵描きしてもダメで、クライアント側の関係者様と状態目標やスケジュールについて一定の合意形成、もっといえば「現実味があって、納得感があるスケジュールや目標」を設定する必要があるんですが、これをクライアント様側に求めすぎず、こちらからも提案・提示していきながらコントロールしていく、というのが個人的には大事なポイントです。時にクライアント様から難しいオーダーを受けることもありますが、「あまり現実的ではないので、もう少しステップを刻みませんか?」という勇気をもった提案も必要なケースがあります。
このとき、「クライアント様への好奇心」と「プロダクトの理解」が前提として存在していないと、提案・提示ができなくなったり見当違いな進め方につながってしまいます。進め方を間違えると引き返すのは大変なので、そうならないように、クライアント様と同じ目線で伴走していくことが大事で、「横に座って、同じ景色を見ながら計画的に伴走する」イメージで物事を進めていきたいところです。
この時、(繰り返しになりますが)「クライアント様への好奇心」と「プロダクトの理解」を常にアップデートし続ける必要があるので、サクセス担当としても日々学びながら、クライアント様と同じ目線を持つように意識していきたいところです。
エンプラCSの再現性
私が経験してきた中での「エンプラCSとして必要な力」は前述の通りなんですが、では再現性はどうなのか?つまり、この力をすべて持ち合わせた方を効率的に採用したり、簡単に育成したりできるのか?という点でいうと、割とはっきりめにNoだと感じています。
(私自身、採用にも関わってきましたが、そもそもこの3つの力を持ち合わせているかどうかを書類や面談で確認すること自体に無理があった気がしますw)
すると、「再現性のないことをやっても意味がない」みたいな話に行くこともあるんですが、私はそう思いません。
まず道を切り拓くのは圧倒的な熱量がある人で、プロダクトとクライアント様を信じて全力で駆け抜けると、一定の道ができます。この道をあとから追いかけて、言語化・仕組み化できるところを小さくてもよいので根気よく探していく。となると、まずは高熱量さんに突き進んでもらうのが初手です。ここを否定してしまうと、道ができません。最初に道を作って、そこから根気よく再現性を作っていくという覚悟を決めることが大事ですね。
その上で、チームで対応できるようにスキルの明確化や組織化を進めて行くことになると思うんですが、その中で最も手軽に、再現性高く習得できるのは実は「プロダクトの理解」なんじゃないかと私は思います。
社員向けオンボーディングを徹底的に強化して、クライアント様から「プロダクトに関するプロ」と思っていただけるレベルに到達できるようにする。これはエンプラに限らずCS全体、願わくばセールス側にも波及させておきたいところです。
これも私の経験則でしかないですが、プロダクト理解を深めなくても良い、という前提に立ってしまうと、社員間での屈強な信頼関係やリスペクトがない場合は割と関係性がギクシャクしがちになってしまう印象です。プロダクトを共通言語としてクライアント様に向き合う。SaaS屋さんはこれを大事にしたいですね。
その上で、個々人の個性を活かして、たとえば深耕営業が好き!とか、様々なビジネスや役割を学びたい!というWillを持つ人を新規案件にアサインしていくとか、コンサル等でバリバリ過ごしてきたシニアレベルの人をMRRの高い案件にアサインしていく、というのが現実的な進め方ではないかなと思います。こう書くと、一定の再現性は作れるように思えますね。
ちなみに個々人の個性だったりWillだったり、というのを把握して周りの皆さんの可能性を最大限発揮していくことや、思い切って権限委譲していくことってマネジメントの手腕が問われるところでまたこの辺も書いてみたいところなんですが、また気持ちが乗った時にw
さいごに
年始にこんな記事が出ていました。
一部引用します。以下。
「サクセスはセールスチームの一部に形を変え、人が介在して顧客を満足させるという役割は衰退していく」みたいなことが書いてあるように見えます。
SaaSというビジネスを突き詰めれば、そうあるべきなのかな、とも思いますが、前述した通り最終的にクライアント様は「価値を実感したものに対価を支払う」はずなので、特にエンプラ領域において、人が介在して顧客を満足させるという役割が急速に衰退していくことは今は考えにくいな、と感じます。特に日本においては。
じゃあ未来永劫べったりとクライアント様に張り付き続けるCSという役割が必要なのか?と言われれば、まだ私にはわかりません。それでもクライアント様、及び世の中のビジネスに対して強い好奇心を持ち続けて学び、ビジネスの最前線に立ち続けることで、なくてはならない存在に変化し続けるのがカスタマーサクセスだと思うので、それを信じて邁進することが大事ですね。その頃には「カスタマーサクセス」という言葉自体はなくなっているかもしれません。
そもそもエンプラCSに限らずですが、カスタマーサクセスはまだまだ世の中では新しい概念です。折れずに根気よく、かつ誠実に、時間をかけて挑んでいくことが、遠回りのようで最短ルートなのではないかと思います!
というわけで以上です!長々とした文章にお付き合い頂きありがとうございました。私はまだまだカスタマーサクセスとしてチャレンジを続けて行くので、これを読んでくださったあなたと、どこかでお仕事でお会いできる日を楽しみにしています!😊
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