#32 The Great Comet of 1812 2017/1/22

帰国して4日が経ちました。まだ日本に慣れないところも色々あって、すごく新鮮な感覚を味わっています。それについてはまたゆっくり書きます。
今回は帰国前夜に観た作品について。


The Great Comet of 1812 (1/17/2017)

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帰国前夜を飾るにふさわしかったです。

舞台がない舞台
とにかく写真からも分かる通り、舞台セットのこだわりがすごいです。このImperial Theaterは、Les Miserable閉幕後から大改造を経て、このThe Great Comet仕様になりました。今回は2階席最後尾でしたが、セット全体の魅力を堪能するにはピッタリでした!
つまりは、舞台という舞台が存在しない舞台なのです。観客も役者もオーケストラもみんな同じ高さ、時空に存在しながら物語が展開します。第四の壁を破るどころか第五の見えないバリアも取っ払ってしまいます。そもそもPhysicallyバリアがないです。そもそも「舞台と客席」という概念自体がないです。
Seating Chartはこちら⬇️

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http://www.broadwayworld.com/article/Immersive-Seating-Plans-Revealed-for-Broadway-Transfer-of-THE-GREAT-COMET-20160501
説明しにくいくらい客席が舞台の一部になっています。Pierre’s studyというところにオーケストラがいます。

一体型の演出

席がこれですから、もちろん演出にもこだわりがあります。イントロシーンから劇場全体に役者が登場して、観客に話しかけます。ただ、一体型意識の割にはちょっと盛り上がりに欠けていた気もしました。やはり席によって観客の温度差にムラが出てしまうのは拭えないのかなぁ。
一番良い席(図の黄色)は、役者が過剰に絡んできます。キスしたり、物取られたり、上に座ってきたり、隣にずっと座っていたり、席移動させられたり…(笑) 日本でやったら観客が対応できないと思います。なんせこちらの観客ですら戸惑っていましたからね。「観客を巻き込む」のレベルが違いました。
これ、役者の方もかなり大変だと思います。自分の芝居の世界を保ちつつ、毎回変わる観客へのアプローチもする。2つの世界を上手く区別しながら物語を進める。生、ライブだからこそ面白いんですけどね!
ただ、聞かせるところは聞かせる、魅せるところは魅せる。ある程度の技術がないとそれは実現できませんから。やはりそこがさすがでした。

役者の多様性
物語はロシア文学のクラシカルなもの。曲調や衣装も中々個性的ですが、どこかPOP&ROCK要素も入っているので面白いです。特にダンスパーティのシーンはNYのクラブみたいにネオンがチカチカしていました。その中でコサックダンスしてました。(笑)
出演者が普通のミュージカル俳優の集まりではないところが魅力的でもあります。主演のJosh Grobanは本業がミュージシャン。本編ではピアノによる弾き語りを始め、アコーディオンやパーカッションも演奏します。他の役者たちも、バイオリンやギター、トランペットなどを演奏、さらに演奏しながら躍り、歌います。
また、役者たちの歌い方が全員違うところが好きでした。前回公演2013年のSound trackを聞いたところ、役ごとに歌い方は決まっているみたいです。The MUSICAL!みたいな歌声の人ばかりではないのがツボでした。様々な楽器を使うけれど、声という一番の楽器も巧みに使っていて、曲ごとにガラリと雰囲気を変えていました。

客が見るもの
役者を見るだけではありません。客が客を見ます。舞台がないので、どこに役者がいるか分からなくなる時もあるし、役者かと思って見てたら観客だったり。観客が見てる方向を見て役者を探したり。観客の反応を見ながら楽しんだり。新しい観劇の仕方を体験しました。

ネタバレの「ネタ」
Playbillにストーリーと相関図が掲載されていて、事前に読むようにアナウンスまでされます。しかもあらすじだけでなく、結末まで書いてあるという。普通なら「ネタバレじゃん!」と突っ込みたくなるところですよね。でもこれ必要でした。結構複雑な人間関係だったりするので。
例えばShakespeareの作品を観る時、話の内容をほぼ皆知っていながら観ますよね?だからこそ、すっと物語に入っていける感覚が味わえたり。これと同様に、本作品も次の展開が分かっているのに、他の要素に驚かされてばかりですごく面白かったです。話が分かっていても、それをどう表現するのかは観ないと分からない!「表現が全て」のミュージカル。表現方法が沢山あるミュージカル。「ネタ」がいっぱいのミュージカル!!!大好きミュージカル!!!!(結局そこに至る)


Then…

あぁぁぁ。NYでのミュージカル漬けの日々が一旦幕を閉じてしまった。泣きそう。というか泣いてます。本当に素晴らしい経験がたっぷりの5か月間をありがとう!吸収したものが多すぎて、まだ消化しきれてないです。時間をかけてしっかりと噛み砕いて、考えて、新しい発見をまだまだしていける気がします。

ありがとうNY!

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Be Hope, Be Mare!

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