見出し画像

〈読書ノート〉ウクライナにいたら戦争が始まった

戦争を知らない。
それは悪いことではなく、良いことです。
わたしも戦争は知りません。映像でしか見たことはなく、文章で読むしかありません。

祖父母は戦争を経験していたので、ことある毎に戦時中の話は聞かされました。

平和ボケ」ということばがあります。
戦争や安全保障に関する自国を取り巻く現状や世界情勢を正確に把握しようとせず、争いごとなく平和な日常が続くという幻想を抱くことです。
あるいは、自分を取り巻く環境は平和だと思い込み、周りに目を向けようとしないことなどを意味します。

祖父はいつも言っていました。
「役人がそれでは困るが、庶民が平和ボケしていられる。いい国になった」
そう語る祖父の顔には、悲しみながら喜んでいるような、切ないシワが刻まれていました。

先人たちが引き受けてくれた痛みを、歴史から学び、知ることは必要です。いかに愚かなことか知ることができます。
それなのに、世界から戦争は無くなりません。
日常にも争いや暴力が蔓延しています。

ノンフィクションのような話ですが、フィクションです。話が進むにつれ戦争の凄惨さは増していき、目を背けたくなるシーンが続きます。

弱者が一方的に蹂躙される。
こんなことが現実でも繰り返されています。
戦争が現実から無くなり、平和にボケていられる世界になることを願うばかりです。

◇ あらすじ

単身赴任中の父とを過ごすため高校生の瀬里琉唯せり るいは、母と妹と一緒にウクライナに来た。

初日の夜から両親は口論を始め、琉唯は見知らぬ国で不安を抱えていた。キエフ郊外の町にある外国人学校にも慣れてきたころ、ロシアによる侵攻が近いとのニュースが流れ、一家は慌ただしく帰国の準備を始める。
空港へ向かうも、新型コロナウイルスの影響で出国はできず、一家は自宅へ戻ることになる。
帰国の方法を探るものの情報が足りず、遠くから響く爆撃の音に不安と緊張が高まる。

突然、戦争がはじまった。
なす術もなく戦禍に巻きこまれていく。

一瞬にして戦場と化したブチャの町で、琉唯は戦争の実態を目の当たりにする。家族と離ればなれになり、偶然再会した妹と戦場になった市街を逃げ惑う。

KADOKAWA:2024.5.25
文庫本:288

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?