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【私大】受験科目「政治・経済」の特徴と勉強法

 私立文系の受験教科といえば、だいたい「英語」に「国語」、あとは社会科目・・・多くの場合「世界史」か「日本史」どちらかを選択するのですが、実はあまり知られていない選択肢として「政治・経済」というものがあります。

 「政治・経済」は、高校の学習における公民科のひとつで、国公立大学志望の受験生が共通テストの選択科目として選ぶ(この場合、メインで勉強することはない)イメージがありますが、実は、大学・学部によっては選ぶことができます。予備校で国公立志望にこの話をしたら、「えー!そうなんだ!」と驚かれることもあります。
 なお、国公立大学の二次試験、慶應義塾大学の入試で「政治・経済」を選択することはできません。

マイナー科目「政治・経済」

 政治・経済がマイナー科目である理由に、以下のことが考えられます。

1.受験校の幅が限られてくる(「地理」選択にも同じことが言える)
2.抽象的な知識を問う問題(計算問題など理系チックな問題)の存在
3.教科書にない知識を問う問題の存在

 1に関しては、先程述べたとおりです。使える学部は、主に法学部、経済学部など、社会科学系の学部です。

 2は「政治・経済」の大きな特徴です。「世界史」と「日本史」は出来事(具体)を学ぶのに対し、「数学」は理論(抽象)を学びます。「政治・経済」はこの両方をやることになります。
 近年の大学入試は数学的能力が重視されており、第一回共通テストでも理論に関する知識を問う問題が出題されました。私自身含め、文系にとっては耳が痛い話ですが、何としても対策する必要があります。

 3が、「政治・経済」受験生を苦しめる一番の要因でしょう。
 「教科書にない知識」は、日々のニュースについての知識である時事問題などがよく知られていますが、意外な落とし穴が「ほかの教科に関する知識」だったりします。

 例えば、「近代民主政治の確立」がそうだったりします。この分野は世界史のほうが詳しく扱っていて、私大入試は「政治・経済」の教科書には載っていなくて「世界史」など他教科の教科書には載っている知識を聞いてくることがあります。

他教科に登場する知識の例
倫理
・社会主義思想に関する深い知識
・大衆意識に関する分析の知識
・マスメディアの分析に関する知識
世界史
・近代市民革命の深い背景理解
・第一次世界大戦に関する知識
・冷戦についての深い背景理解
日本史
・大日本帝国憲法制定までの深い背景理解
・戦前・戦時中の議会政治や経済発展に関する知識
・労働運動における「プロレタリア文学」の知識
地理
・都市開発(「都市問題」として扱う「政治・経済」の教科書・参考書もある)

 時事問題も含めこういった問題は予想が立てづらく、予備校でも「政治・経済」の勉強法は確立されていないと言います。
 ただ、これらは平均点を下げるための工夫なので、全問解かなくとも大丈夫。教科書の知識問題を全問正解して、そういった問題は50%ぐらい得点できれば、合格に十分だと思います(そういった点では「基本に忠実に勉強していた」が一番重要ですね)。

 2と3が難所になってくるのですが、これらは政治・経済にしかない特徴だと思います。いわば「政治・経済」の醍醐味といえるので、そこを楽しみながら勉強するといいですよ。

「政治・経済」選択のメリット

 個人的には、「目標とする大学・学部が明確に決まっている場合」に限り、「政治・経済」ほどオイシイ科目はないと思っています。

 まず、勉強量が「世界史・日本史」に比べて圧倒的に少ないです。理論問題が存在してくれるおかげで、教科書のページ数も自ずと減っているのです。確かに理論・計算問題は面倒なのですが、覚えてしまえばこっちのもの。節約した勉強時間を、時事問題なり他の科目の勉強にあてればいいのです。

 また「政治・経済」の知識は、実生活で本当に役立ちます。政党史や外交関係、地域紛争の知識がニュースの深い理解に役立つのはもちろん、企業、株、為替の基本知識は就職やビジネスの現場でも必須でしょう。公務員試験でも一般常識として公民科の知識が問われるので、やっぱり「政治・経済」は「オイシイ」科目だと思います。

勉強の流れ

 大学によって出題傾向が異なりますが、進め方の目安を載せておきます。

1.教科書レベルの知識の定着(ただし国際分野、環境問題、司法改革など時事問題的要素が強い知識はまだいい)
2.ハイレベルな知識の定着(資料集、インターネットの活用)
3.理論・計算問題が解けるようにする
4.教科書にない知識を問う問題の対策(用語集、他教科の科目、過去問)

 1はひたすら暗記です。憲法の条文をはじめ、基本用語を覚えていきましょう。ただし国際分野と環境問題は、教科書の知識だけではあまりにも得点しにくいと思うので、まだいいです。

 2からハイレベルになってきます。とくに環境問題については問われる知識が深く、京都議定書とパリ協定の違いについて正確に説明できるくらいの知識は欲しいです。資料集や用語集を使い、それでもわからないところが出てきたらインターネットを使って調べましょう。経済用語などは証券会社のホームページなどがまとめてくれていたりします。
 統計資料は地方自治や財政の分野で頻出で、差がつく問題です。最新の資料集で確認しておきましょう。

 3は計算問題なので、問題演習をメインにやっていきましょう。専用の問題集などもあります。文系科目であることを考えると、これも差をつける部分になりそうです。

 1から3までが完璧であれば、GーMARCH・関関同立レベル(明治大学や学習院大学、関西大学など)の合格点は十分に狙えるはずです(ただし早稲田大学だけは4も結構重要になってきます)。2と3の勉強は時間がかかるので、1をいかに早く終わらせるかがキーになってきます。

 4は仕上げの段階です。まず最新の用語集を買ってきて、じっくり読みましょう。その中にわからない単語が出てくるはずなので、それを覚えましょう。時事問題は毎年秋に各出版社が出す社会人向けの書籍で確認しましょう。単純にキーワードを覚えたほうがいいのか、詳しく説明できるようにするかは志望校によって変わってくるので注意。

 このタイミングで他教科の教科書も開いて、政治・経済に関連する分野だけ一通り目を通しておきましょう(例えば日本史の教科書であれば、江戸時代までは読み飛ばし、明治時代のページから開く)。世界史・日本史の基本知識は日東駒専(日本大学や東洋大学など)レベルで意外とよく出るので得点できるようになっておくと心強いです。

 過去問をやっていると新しい用語も出てくるので、その都度メモして調べましょう。とくに不正解の選択肢などは、調べてみると「政治・経済」に直接関係はなくとも社会科学の面白い知識が得れたりするので楽しいですよ(個人的には「政治・経済」の一番好きなところ)。

 難関大学は、1のレベルを全問正解した上で2・3で差がつくというイメージで望むと良いのではないでしょうか。

 勉強法こそ確立されていませんが、枠にとらわれず自分で探求していくのが「政治・経済」の受験勉強の楽しみだと思うので、そこを意識して取り組んでみてください。

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