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後ろ指を刺されても!Marching Schoolトークイベントvol.2「リノベーションと場づくり」

2020年10月に “ 鳥取駅前中心市街地の「新しい暮らし」と「新しい働き方」を実現すること “ を目的として設立されたMARCHING bldg.(マーチングビル)。
その活動の一環として、鳥取の若手社会人が学んだり、新たな活動のスタートを支援する「オンラインプログラム」を開講しています。
第2回となる今回は、「パーリー建築研究」の提唱者でもあり、シェアハウス「喫茶ミラクル」や宿泊施設「HamaVilla」の運営をおこなっている宮原翔太郎さんをお迎えして、リノベーションと場づくりについてお話ししていただきました。

皆さんは「やりたいこと」がありますか?
社会人になってから、仕事の忙しさにも、変わらない日常に慣れてしまい、「刺激が足りていない」ということはありませんか?
そんな方は、今回のイベントの内容を覗いてみてください。
自分のやりたいことや、実践に繋げていくヒントが見つかるかもしれません。

面白いまちづくり=人作り

丸毛:まずは、このイベントをすることになった経緯を「株式会社まるにわ」の齋藤さんの方から説明して頂きます。
齋藤:こんばんは。普段は銀行で働いている齋藤です。
「株式会社まるにわ」は、「面白い街を作るには面白い人がいるだろう」という考えの下、自分たちの暮らしや街をDIYする活動を続けてきました。
僕らがやってきたように、やる気のある若手の方が増えていったり、自分のプロジェクトを持つための「きっかけ」が生まれるといいなと思い、セミナーやワークショップ、そこから生まれるイベントなど、すでに自分のプロジェクトを持っている人の手伝いをしながら「自分のやりたいことを見つけていく」という感じでやっていこうと考えています。

騒げや騒げ、パーリー建築

宮原:こんばんは。簡単に自己紹介をさせていただくと、僕は東京出身で、大学を卒業した後デザインの専門学校に行き、いろいろなところで古い家を直しながら、コミュニティスペースやカフェを作る活動を始め、2017年ぐらいに鳥取へやってきました。
今日は主に、鳥取に来てからのお話をしていこうかな、と思っています。

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宮原:「パーリー建築」とは、作業期間中は毎晩パーティやお祭り騒ぎをして、建築とその過程を楽しむ集団です。「パーリー建築」と言うぐらいなんで、各地いろいろなところを回って、いろいろな人とパーリーをしながら「古い家に命を吹き込んでいく」という活動を4年ほど続けていました。
その後「温泉街に住みたいな」と思って、2017年の冬ぐらいに鳥取市にある浜村温泉に引っ越してきたんですけど、ちょうど温泉がなくなっちゃったタイミングだったので、結構ショックでした。(笑)
仲間と一緒に引っ越してきたので、現在は物件を改修し、自分たちが住むシェアハウス兼、1階はカフェ営業もできるイベントスペースとして「喫茶ミラクル」を運営しています。

喫茶ミラクルについて

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宮原:「喫茶ミラクル」は「カフェがやりたい」という人がいれば、日替わり店長みたいな感じでお店を開けてもらったり、音楽のイベントをやったり、ポップアップショップや展示など、いろんなことができるスペースとして使っています。土曜の朝は不定期で「ミラクル朝市」をやったりしていて、まだ少し勢いが足りないところを、これから変えていこうとしているところなので、興味を持っていただけたら嬉しいです。

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令和建築:採算度外視の廃材リサイクル建築

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宮原:現在は鳥取市の大工さんと建築ユニット「令和建築」を結成し、「ガテンを合点に」を合言葉に、家屋の解体とリノベーションをおこなっています。この現場(以下写真参照)では、実験的に解体した家の材料を使って小屋を作るということをやってみました。僕たちは「全部が全部直せばいいというわけじゃない」と思っていて、元の家をそのままリノベーションして使うとなると、お金がかかることも多いので、ケースバイケースでベストな選択を考えながらやっています。この時はちょうどいいタイミングだったので、「廃材を使用して小屋を作ってみよう」と思って実践しました。

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(解体前と解体後のビフォー・アフター)

元々離れだった場所は野菜畑になり、廃材で作った小屋は農機具置き場になったそうです。廃材を利用するのは、建築業界では「コストに見合わない」とされていたようですが、宮原さんはそこに敢えて挑戦したのだと言います。

なぜ「廃材再利用」をしようと思ったのか

丸毛:「家を解体してもう一回作る」というのはチャレンジングなことだと思いますが、なぜやろうと思ったんですか?」
宮原:とてもシンプルに言うと「解体して出た廃材の再利用が要になって、いろんな問題が解決できそうだ」と思ったんですよ。
丸毛:解決策としてはシンプルですけど、それってすごく大変ですよね。家を壊して部品取るよりも、持ってきて作る方が早いと思いますし、大抵の人は大変だと思ってやらないかもしれない。
宮原:そうですね。でも、誰もやっていないことだからこそ、本当にできないのか、本当に不可能なのか、やってみないことにはわからないので、実際にやってみた感じです。
「シンプルが一番いい」とみんなわかっているんだけど、業界の中にいると実践するのは難しいんですよね。でも僕たちは「いいことはやろう」と常々思っているので、建築業界のセオリーやしがらみに囚われず「一番シンプルで一番合理的なやり方を考えよう」と、まっすぐにやってみました。

曇天野外:ネガティブなイメージなんてひっくり返して楽しもう!

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宮原:「曇天野外」というのは、浜村温泉の古い建物を使っておこなった音楽フェスです。鳥取にずっと住んでいると気付きにくいかと思いますが、太平洋側出身の僕からすると、鳥取の冬はずっと曇ってるんですよね。
僕は元々音楽が好きなんですが、曇りの日に合う音楽がたくさんあるんですよ。天気は悪いけどあったかいコーヒーを飲んだりして、音楽を聴きながらゆっくりしたいな、と思い、このイベントを考えました。
「曇天」というパッとしない感じを面白がったり、いろんなアーティストの方々に協力してもらいながら会場を手作りしたり、そういうのがいいんですよね。元々工務店の作業場だったところを、片付けたり地面を整えたりしたら、ファンタジーの世界みたいになって、何もかもが楽しかったです。

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「曇天野外」の会場は、宮原さんがおっしゃるように幻想的な世界に見えました。暗い空の下、仄明るい電飾に照らされた人々は、楽しくてしょうがないといった表情で、陰鬱な気分など微塵も感じさせないような空間が、そこにありました。

《曇天野外2018の様子》

宮原:基本的にはネガティブと捉えられるような要素を、いかにユーモアと知的さを混じえてできるかというのを、常に目標としてやっている感じはあります。「曇天」というネガティブに捉えられがちな気候だけでなく、古い家空き家だったり、温泉が無くなった温泉街だったり、みんなが「どうしよう?」と悩むようなことを、自分たちなりに面白がりながら、活動を続けています。

一棟貸し宿泊施設 HamaVilla

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宮原:そうこうしているうちに、2020年の9月頃から新しい物件を修繕することになりました。「喫茶ミラクル」は元々理容室なんですけど、理容室の向かいに美容室があったんですよ。かつての温泉街は華やかで、芸妓さんたちもいたから、身なりを整えるために美容室があったんでしょうね。そこを半年くらいかけて直して、一棟貸しの宿泊施設にしたんですよ。

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宮原:割と明確に「こういう音楽が好きで、こういう服装着てて」みたいなとこまで考えて、当たるかなと思いながらやっていたんですが、狙った通りになりましたね。だけど、客層として全く想像できなかったような人も来るんですよ。個人的には自分の友達になれそうな人や周りにいそうな人に来て欲しかったので「やっぱりそういう人たちが来るんだろうな〜」と思っていたんですが、意外とギャルファミリーが来たりして。その人たちは、入ってすぐに「TikTok」をやったりして喜んでくれていたんですけど、そういう客層の人は「喫茶ミラクル」じゃ呼べなかったと思います。
狙ってなかったところから人が来るというのはとても嬉しくて、これまで限られた人たちにしか響かないようなパンチばかり打ってたので、「こういうもんか商売は!」みたいな感じで、とても良い学びになりました。

文房具屋でジュースが飲める!?「ジューススタンドめじろ」

▼「ジューススタンドめじろ」についてはこちら

宮原:「ジューススタンドめじろ」は、自分たちのプロジェクトとは違い、依頼を受けて内装工事をした事例です。「ご家族と一緒にお店をやる」というので、今までにない緊張感で押し潰されそうになりながら、なんとか工事をやり終えました。内装を作るとき、具体的なデザインで「何がカッコイイか」というような感覚は持っているんですが、大切なのは「どういう人が来てどういう使われ方をするのか」ということなんです。
「ジューススタンドめじろ」のある「ヲサカ文具店」は昔から営業しているお店なので、僕が普段仲良くならないようなおっちゃんやおばちゃんがお喋りしにきているんですよね。年齢層はもちろん絞られてはいるんですけど、その層がもっと広がって「お喋りしに来るついでにジュースを飲もうかしら」となるような場所になればいいな、と思いながら作っていました。

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多くの人と仕事をされてきた宮原さんですが、現在はお知り合いの方たちと「浜村温泉ラジオ」というインターネットラジオをやっているそうで、とある回では「ジューススタンドめじろ」の尾坂さんがゲストとして参加したそうです。

場づくりで宮原さんが大切にしていること

Q. 場づくりする時に「キーマンを意識する」だとか「気の合わない人はフェードアウトさせる」だとか、意識してることがあれば伺いたいです。
宮原:基本的に管理するとか管理されるとか苦手なので、そういうことはしないです。僕らのやることの中ではアドバイスやコーディネートもしません。ただ、人同士の紹介や相性の良さそうな人の引き合わせはしたりしますね。
齋藤:「気の合わない人をフェードアウトさせる」というのは、特有のコミュニティの方がうまく行くし、めんどくさい人とかがいたとしたら排除した方が早いんじゃないか、ということだと思うんですけど、問題が起きたとしても、それを任せるみたいな感じですか?
宮原:思想的にはそれが1番大切だと思っていて、物事が起きた後、それぞれが対話をすることが重要だと思ってます。でも、それを続けるのはしんどいので、難しいことだと思います。浜村温泉にもホームレスのおっちゃんとかいるんですけど、例えば「そういう人たちに対してどういう態度を取るのか」というのと、構造的には同じだと思うんですよ。コミュニティブレイカーみたいに「気が合わなさそうな人にどういう対応をとるのか」というのは重要ですね。

齋藤:そこが東京の場づくりとローカルの場づくりで違うところかな、と思ったんですが、都会とローカルでも場づくりの「人」と「物」をどう巻き込むのか、コミュニティブレイカーがいたとしても、どうやって対応するのかは変わってきそうですね。僕個人もシェアハウスをやっているんですが、仕事の場よりもシェアハウスの方がコミュニティはうまくいく感じですか?
宮原:一緒に生活する分、シェアハウスの方が大変だと思いますよ。今はそこら辺を考えてみようと思って、アップデートしていく予定です。

宮原さんは自由を好み、その場で起きる人間関係も楽しんでいるようで、あまり自身の手を加えずに、展開されるコミュニケーションを含めた空間に興味を持って運営しているように思えました。

自分の好きな時間と仕事のバランスに迷っていて、やりたいことがやりきれずにちょっと楽な生活をしていたんですけど、宮原さんがお金を稼ぐために「HamaVilla」を始めたとおっしゃっていて、自分たちの課題と向き合いながら、やりたいことや生活に妥協していない感じに刺激を受けました。

仕事とやりたいことの両立は難しく、仕事や日常に忙殺されて「やりたいこと」「面白いこと」よりも「休憩」を選んでしまう人も多いと思います。宮原さんはそこを乗り越えて、自分達や社会全体の課題、しがらみや固定観念に立ち向かうようなパワーを持っておられるので、それが「やりたいこと」や「生活に妥協していないこと」に繋がっているのかな、と思います。

まとめ

そんな妥協しない宮坂さんからの最後の言葉は「人生は短いので、皆さん後ろ指さされながら、後ろ指さされるようなことをしてください。そういう仲間が増えればいいなと思います。」というロックなものでした。ここだけ聞くと「一緒に悪いことをしようぜ」というふうに聞こえるかもしれません。しかし、宮原さんが本当に伝えたかったのは「自分が正しいと信じているなら、他人からなんと言われてもやり抜こう!」ということなんだと感じました。きっと、宮原さんのお話を聞いた参加者全員が、心で理解したのではないかと思います。

自分が「良い!」と思ったものは、たとえ矯正されるようなものだったとしても、ともかく「やってみる」。そんな姿勢が大切なのだと学ばせていただきました。宮原さんを含む、イベント参加者の今後の活躍にご期待下さい!

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最後は記念に「ハイ、チーズ!」

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