ユリシーズ 第14挿話(太陽神の牛) それはいったい誰なのか編

集英社文庫ヘリテージシリーズの『ユリシーズ』(丸谷・永川・高松訳)のみを読んで。
文中 U-Δ 章.ページ数と示す。他に U-Y は河出書房新社・柳瀬訳『ユリシーズ 1-12』とする。

私は奇想班(班員1名)です。いかに面白い奇想を見つけ出すかということに血道をあげるので、そこのところよろしくお願いします。

まずは見つけた細かい発見から。
(1)看護婦キャラハンとオヘア医師は、U-Δ13.464ですでに出てきている。
(2)ディクソン医師も、U-Y 4.122, U-Y 6.171, U-Y 8.280, U-Δ14.19 で既出。
   ブルームが蜂に刺されたときに診てくれて、モルグから産院に異動になった人。
(3)ミリー・ブルームは、歳のわりに大柄な肉付きのいい娘。(U-Δ14.39)ショック…。細身の美少女と思い込んでいたのに。まあ、モリーの娘だし…。しかもバノンにもうやられているらしい…。(U-Δ14.53-54)
(4)マイナ・ピュアフォイ(夫人)の本名、ウィルヘルミナはドイツ語で略称がマイナ(Mina)なのだそうな。(Yahoo!知恵袋 https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1070605050

次にちょっとわかりづらい(註を付けていないのできっと鼎訳でも気づいていない)発見

ブライディよ。ブライディ・ケリーよ。(U-Δ14.69)

とはいったい誰か? この場面、巡査が娼婦を連れていくところだが、U-Y.12.528 に「14Aの巡査」が登場し、U-Y.12.556 に「14Aの巡査はメアリー・ケリーを愛す」とある。つまり、ブライディ・ケリーとは「結婚したケリー」のこと。「一瞬にして<光あれ>」なので、巡査の一目惚れだったのであろう。ジョイスはお茶目にも「その名を忘るること絶えてなからん。…優しき読者よ」と読者の記憶力に挑んでいる。しかも彼女は元娼婦「夜の娘」であり、「名と思ひ出とは汝をしも慰め」ないのだ。

もう一つ。もう少しでつかめそうなこと。

どんな奴にもめんこい女の子はいるものさ。地上のヴィーナス。<かわいい娘たち(フランス語)>。マリンガーの町から帰って来る小生意気ないたずら娘。おれが彼女のことを聞いてたと伝えておくれ」(U-Δ14.94) 

この「おれ」とはいったい誰か? そして、なぜミリーに「おれはあなたのことを聞いていた」と「伝え」たいのか? 
なぜここにこだわるのかというと、ミリーがマリンガーの小生意気ないたずら娘と聞いた場面は、ep.14の他にもう一箇所あるから。それは下記。

ひとりの若者がそばの岩角につかまりながら、どろんとしたゼリーのような水の中で蛙式にゆっくりと緑色の足を動かす。
ーー弟もいっしょか、マラキ?
ーーウェストミーズに行ってる。バノンのとこだ。
ーーまだあっちか? バノンから手紙が来たぜ。かわいいのができたんだとよ。フォトガールだとさ。
ーー速射でばっちりか? 短時間露出だな。
(U-Y 1.42)

この謎の若者が誰なのか、このep.14のやりとりでわかるはずという確信めいたものがあるんだが。いまいち考えがまとまらない。宿題。

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