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実家で一人暮らしの母親には会えるだけ会っておいたほうが絶対にいいという話

ことし会いたい人は?と聞かれて真っ先に思い描くのは実家で一人暮らしをしている母親です。

仕事モードであれば、尊敬する、手の届きそうにない著名な方から、わたしよりも一歩先にいて、わたしのことを引っ張ってくれる心から尊敬する、実際にはお会いしたことのないオンラインコミュニティの先輩など。ことしはたくさんの方にお会いしたいと思っています。

ただ、仕事モードの方々とお会いできる代わりに母親とは会えないという条件がもしあれば、即決でお断りしているでしょう。

わたしにはそう考えるに至った、ある要因があるのです。

コロナ禍での後悔

2019年12月、世界中で新型コロナウィルスが蔓延しました。中国武漢市から始ったウィルスは瞬く間に全世界に広がり、日本でも長い間移動制限が続きました。

わたしの自宅から実家へは県跨ぎになるため移動制限の対象です。

無理矢理移動しようと思えばできたかもしれませんが、そういった行動が拡大する感染の収束を遅らせることになると考えていたので当時、一年以上実家には帰っていませんでした。

母親とは電話でやりとりを行なっており、電話口からは普段通りの元気な様子が伺え、まったく気に留めてもいませんでした。

ある頃から、電話口で母親が「まだ帰ってこられへんよなぁ」とか「○○さん(ご近所さん)のところへ話しにおいでって言われてるけど、まだ行かんほうがええよなぁ」と、今思えば一人でいることへの不安を訴えるようなことを話すようになっていました。

当時のわたしは、母親のそんな気持ちにも気付けず「そうやなぁ、まだコロナ落ち着かんし、高齢者は危険やから一人で家におった方がええんちゃう?」と母親を感染から守ることだけを考えて話していました。

それが母親を社会から隔離することになるとは思いもせずに。

2021年某月の早朝5時、実家の母親の携帯番号から着信がありました。

その日は仕事も休みだったので「あとからかけ直そう…」とそのまま二度寝。

その後、7時を過ぎた頃に今度は東京に住んでいる姉からの着信。内容はわたしにとって衝撃的なものでした。

「お母さんが今朝3時ぐらいに(近所にある)埋立地におって、警察に保護されたらしいねん。今、○○(妹)が警察に迎えに行ってるから、あんたも(実家に)行けるんやったら行って」

早朝5時の着信は警察からの連絡だったとのこと。

もう訳がわかりません。

そのあと、話を聞いてみると母親は警察に保護されるひと月程前から「自分の行動を他人に見られている」「○○さん(ご近所さん)がずっと自分のことを監視している」などと言った症状があったらしいのです。

のちに診察を受けて出された診断名は「妄想性障害」。

主に幻聴で、現実にはない声がハッキリと聞こえてくるらしく、時には自分のとっている行動を実況されたり、聞きたくもないひどい言葉をかけられたり。

そんななか、あの日、深夜にもかかわらず自分のことを優しく誘う友人の声に導かれるように深夜の埋立地へ向かったそうです。

ほんとうに運良く保護されたから良かったものの、一歩間違えば…

実家で一人暮らしの母親には会えるだけ会っておいたほうが絶対にいい

それから数ヶ月たった今では、少し幻聴はあるものの、ちゃんと「自分」を取り戻して過ごせています。

わたしは、この時のことを一生忘れることはないでしょう。たとえコロナ禍であったとしても母親を孤立させない為の方法がきっとあったんじゃないか、コロナを理由にして実は帰省することを面倒に思っていたんじゃないかと考えてしまいます。


2017年の内閣府調査によると、65歳以上の一人暮らし高齢者は2015年時点で約592万人、2035年には約762万人にもなるとされています。

これからますます少子高齢化が進むなかで、わたしが社会にできることは限られていますが、少なくとも自分の母親には精一杯のことをしていきたいと思っています。

今年に限らず。

この先ずっと。

会えるだけ会っておきたい。


有料記事について調べていて思いました。有料記事は書き手が作品に価値を見出している。他方、サポートは読み手が作品に価値を見出している。自分以外の人から認めてもらえる、そんな文章をこれからも。