「虎に翼」67話

昨日から初登場した星航一。第一印象は「やりづらい」が前面に出ていましたが、今回少し印象が変わりました。
というのは、今回は航一の父である星朋彦が出てきたことで、「息子としての顔」を垣間見ることができたような気がします。

航一と本の改訂作業を行って三週目。
この間、星朋彦は一度も現われません。どうやら闘病の為だったようです。病は、親しい人にしか明かしていなかったとのこと。
星朋彦は、本が出版される直前に亡くなってしまいました。

自分のことを「出がらし」「信念より金をとった」と自虐ぎみに話していましたが、法律への思いは真摯で、素敵な人でした。
星さん自ら記した序文の内容は、「法律」というものの全てが詰まっているようで、感動しました。

とっっても良かったので、全文掲載します。

「今時の戦争で日本は敗れ、国の立て直しを迫られ、民法も改定されました。私たちの現実の生活より進んだところのものを取り入れて規定していますから、これが国民に馴染むまで、相当の工夫や努力と日時を要するでしょう。人が作ったものです。古くなるでしょう。間違いもあるでしょう。私は、この民法が早く国民に馴染み、新しく正しいものに変わっていくことを望みます。民法は、世間万人知らねばならぬ法律であります。決して法律家にのみ託しておいて差し支えない法律ではありませぬ。私のこの拙著がいささかにても、諸君の民法に対する注意と興味等を喚起するよすがとなることを得ましたならば、誠に望外の幸せであります。昭25年6月 星朋彦」
(引用元:「虎に翼」寅子“優三の夢”叶えた!出がらし星長官が名序文 ネット涙「心に染みた」梅子拍手 平田満名演― スポニチ Sponichi Annex 芸能

「民法は、世間万人が知らねばならぬ法律」「法律家にのみ託しておいて良い法律ではない」
確かにそうですね。
民法は、契約の結び方や贈与、相続、不動産譲渡など、生活に結びついた内容が扱われていますので、知ると知らないとでは全然違います。
民法は、仕事だけでなく家族間でも、友人・知人間でも使う可能性がある法律です。

そして気になるのがやはり親子関係。寅子が、仕事以外で法律に関われることに生き生きとしている一方で、優未ちゃんが寂しそうだったのがすんごく気になる。
これでもかと言わんばかりに描写されているので、親子の衝突?言い争い?は規定路線だと思うのですが、怖いようなちょっと見てみたいような。

今の猪爪家は、外にでて稼ぐのも、家事を行うのも両方とも女性。
それによって、仕事vs家庭というのは性別の問題ではなく、社会の構造の問題だと提示してくれていて素晴らしいと思います。

昨日の放送回の話になるのですが、「稼ぎの良い仕事を探さなきゃ」という直明に対して「そんなこと考えなくて良い。自分のやりたい仕事を見つけなさい」という寅子が、花江と対比になっているように感じました。

「直明ちゃんはお勉強に集中していていいのよ」と家事を一人で回していた花江と、「稼ぎは私に任せて」と言わんばかりの寅子。
本質としては同じことを言っているはずなのに、なんとなく、家事を回している女性のほうが「務めを果たしている」ような気がしませんか。
もちろん、家事労働が劣っているということではありません。

どちらも家庭を維持していくために同じくらい尊い役割のはずなのに、女性が仕事に専念すると「出過ぎ」「仕事しかやることない人」みたいなうっすらした偏見を持たれることは少なくないと思います。制度上平等になることと、人々の意識まで平等になることは違います。難しいですね。

「虎に翼」というドラマがヒットしているのは、このような描写が共感を呼んでいるからという理由は大いにあるでしょう。
しかし、女性ばかりを取り上げているわけでもなく、男性社会(ホモソーシャル)のなかで葛藤する花岡のような人や、「大黒柱として支えなきゃ」と気負ってしまう直明のような人もきちんと描いてきた。

「女性の話でしょ?なんか気まずくて見られないな」という方こそ、見て欲しい。女性だけじゃない、男性にも理解が深まるはずです。

このドラマが一人でも多くの人の目にとまること、そして気づきを与えてくれることを願ってやみません。



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