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昨今のアナログレコードブーム

皆さんこんにちは。
今日はブーム再来、復権真っ盛りのアナログレコードについてお話したいと思います。
ぼくはずっとアナログレコードを聴いて育ってきた世代です。そんなこともあり、いろんな側面から今のブームを紐解いていきたいと思います。



・昨今のアナログレコードブーム

今、アナログレコードが空前のブームになっています。
その流れを受け一部のミュージシャンは新譜をアナログとCDの両方で販売をはじめています。
若い世代の方たちも興味を持ちアナログプレーヤーを買うようになりはじめているそうです。
そういう状況を見ると昔からのファンとしては純粋に嬉しいですね。
しかし、その一方で危惧していることがあります。
…これが一過性のブームになってしまいはしないかと。

・心配の原因

心配の原因は”本質”を見誤らないだろうか?…というものです。アナログレコードで聴く価値はフィルム同様、ジャケットなどの付帯要素…つまり音以外も含まれます。
しかし、音楽を楽しむための媒体ですから、言うまでもなく最優先すべきはあくまでも”音”なのです。
そこをはき違えると付帯要素に飽きたとたん「なぁんだ、サブスクでいいじゃん」となりかねない。
だからこそ、アートワークやジャケットなど音以外の要素も楽しみつつ”音”を軸にアナログレコードの良さに触れてほしいんです。

・写真と音楽の違い

写真には正解がありません。
あるのは撮る人の頭の中のイメージ。だからどう撮ろうとそれを他人がとやかく言う権利はありませんし、自由なのです。
しかし、音に関して言うと答えはひとつです。
それは”生の音楽”、スタジオ盤で言えばミュージシャンとエンジニアが意図した通りの音。
…それ以外の答えはありません。
そこへ近づけるためオーディオ好きは日夜苦労をしているのです。勿論、基準になる”音”は生演奏です。
とは言え実はレコードには録音したままが入っている訳ではなく、マスタリングその他いくつもの工程で人間の耳の特性に合わせ、かなりいじっています。勿論あくまでも生の演奏が生に近く聴こえるようにです。
その辺りも写真のレタッチとは全く違います。

・費用面のハードル

しかしここで問題があります。
アナログレコードをCDに負けないクオリティで聴くためにはかなりの費用が掛かるということ。
この数十年の技術的進歩でネットワークオーディオを含めたDAコンバーターなどのデジタル機器は大幅にコストダウンが可能になり、性能も飛躍的に良くなっています。
ところがアナログプレーヤーは数十年前の時点で技術革新が止まっていること(光カートリッジなど一部を除く)、既に技術・ノウハウがひとつの頂点まで達していること、物量投入を要する機器であること…などからコストダウンが困難なのです。少しでもコストを削ったとたん音質に影響してしまう繊細な機器なのです。
つまり覚悟を決めてある程度以上のものを買わないとレコードの良さに触れることができません。
昔は他に選択肢がなくオーディオを揃えることが音楽好きの若者たちの最大の買い物だったのです。しかし今はiPhoneにノイズキャンセルのbluetoothイヤホンでも充分に楽しめます。わざわざ高いお金を出してオーディオを揃えようなどと考える若い人は少数派でしょう。または仮に買ったとしてもデスクトップオーディオが中心で昔ながらの大型コンポーネントで揃える人はほぼいないと思われます。

・本物に触れること

勿論、安価なプレーヤーからはじめるという”きっかけ”は大事です。しかしそこから更に興味を広げて本質を知った上で好きになるには、”いい音”で聴くこと、「あぁ、レコードって本当に音がいいんだな」と感じることが必要なんだと思います。
昔はオーディオやレコードを買うお金が無くてもジャズ喫茶やクラシック喫茶がその欲求を満たしてくれました。コーヒー一杯でリクエストをしたり何枚もアルバムを良質な音で聴くことができたのです。今でも数は少なくともそういうお店がありますので自分のお気に入りを見つけ聴きに行くというのもいいことだと思います。…但し音のいいお店へ。
そして教養ある耳を持つために、できるだけライブやコンサートへ行き生の演奏、本物の音に触れてほしいです。

・CDは音が悪い?

CDが発売されて間もなく、マニアの間では「CDは音が悪い」と言われ続けた時期がありました。
実は最近、当時のCDは音がよく価値があると言われはじめ、今では高額で取引されています。
では何故、このようなことが起きたのでしょうか?
…原因はプレーヤー側にあったようです。
発売当初、”デジタルはハードの影響を受けない”…と今では考えられないようなことを言われていたのです。CDプレーヤーはメカとしてはアナログです。今では当たり前に知られていることですが、電源、ピックアップの精度、アナログ変換後の信号の扱いなど…全てノイズその他の影響を受けます。
勿論、ごく一部には今でも名機として整備されながら活躍するCDプレーヤーもあります。しかし、一般の音楽ファンがそういうものを手にして聴くことはごく稀だったため結果として「CDは音が悪い」となってしまったのです。
同様にアナログレコードもデメリットはあります。
振動の影響、チャンネルセパレーションの悪さ、インサイドフォースの影響、外周と内周の音の違いetc…。そういうことも理解した上で音を改善させる喜びも味わってほしいです。

・どこに価値を見出すのか

フィルム写真の粒子感や暗所耐性の低さなどが無条件に”エモい”と言われる傾向にあります。
アナログレコードも同様に「あのパチパチ言うスクラッチ音が”エモい”」…となると昔から聴いている音楽ファンとしてはちょっと疑問符が付きます。
価値観は自由です。でも個人的にはレコードの価値はあくまでも音の良さにこそあると確信しています。CDやデジタルで聴けない音が確かにそこにあるからこそレコードで聴くのです。
でなければ小さな針先に気を遣い、毎回レコードをクリーニングして…などと面倒な作業はしません。
是非、若い人ほどアナログレコードの”本質の音”に触れてほしいです。そして現在のブームが一過性で終わることのないように願いたいです。

それではまたお会いしましょう。

#アナログレコード #アナログプレーヤー #レコード

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