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ロシアがアフリカ6カ国に穀物を無償提供

タス通信などによると、ロシアのプーチン大統領は2023年7月27~28日にサンクトペテルブルクで開いたロシア・アフリカ首脳会議(サミット)で、アフリカ6カ国に最大5万トンの穀物を無償で提供すると表明しました。ウクライナ産の農産物の輸出を支援する「黒海穀物イニシアチブ」から離脱したことで、アフリカなど輸入国に懸念が広がっていましたが、ロシアが代わりに供給するとともに、影響力を拡大しようということです。ただ、アフリカには黒海穀物イニシアチブの継続を求める声が多く、ロシアの思惑通りに進むわけではありません。

プーチン大統領は7月27日、サミットでアフリカ首脳らを前に、「ロシアはウクライナ産の穀物を代替できると私は言ってきた。今年は記録的な収穫が期待できる」と述べ、ロシアには十分な供給余力があることを強調しました。その上で、食料を特に必要としている国として、ブルキナファソとジンバブエ、マリ、ソマリア、中央アフリカ共和国、エリトレアの6カ国を挙げ、2万5000~5万トンの穀物を無償で供給すると表明しました。欧米メディアによると、深刻な飢餓に苦しむソマリア以外の5カ国は親ロシアだということです。

プーチン氏は7月28日には、2022年にはロシア産の穀物をアフリカに1150万トン輸出し、2023年は1~6月だけで約1000万トンを輸出したとして、アフリカへの食料供給を増やしているとアピールしました。その上で、6カ国への穀物の無償供給は3~4カ月以内に開始するとの見通しを示しました。

プーチン氏は、黒海穀物イニシアチブについて、最貧国はウクライナ産穀物の3%しか入手できなかったとして、アフリカなど食料を必要としている貧しい国々に提供するという本来の狙いが実現されていないと批判しました。ロシアによるウクライナ侵攻がなければこんなことにならなかったということは棚上げして、自らを正当化しようと努めています。ただ、アフリカなど食料不安が大きい国々にウクライナ産穀物があまり行き渡っていないというのは事実です。

一方、アフリカからの報道によると、アフリカ諸国の間では、一部の国への無償支援ではなく、あくまで黒海穀物イニシアチブの延長を求める声が強いようです。また、諸悪の根源とも言えるウクライナ侵攻をとにかくやめてほしいというのが本音のようです。2019年の前回のサミットにはアフリカ54カ国のうち43カ国から首脳が参加したのに対し、今回は20カ国にとどまったことからも、アフリカ諸国がロシアと距離を置こうとしていることがうかがえます。

サミットのウェブサイト=タス通信提供=より

AP通信によると、南アフリカのラマポーザ大統領はサミットで「われわれは黒海穀物イニシアチブが実行され、黒海が開放されることを望んでいる。アフリカ大陸への寄付を求めるために来たのではない」と主張しました。チャド出身のマハマト・アフリカ連合(AU)委員長は「この戦争は終わらせなければならない。エネルギーや穀物の混乱は特にアフリカのために直ちに終わらせなければならない」と訴えました。

これに先立ち、ロシアは7月17日、黒海穀物イニシアチブの延長に同意しないと表明しました。これは国連とトルコの仲介により、ロシアとウクライナを加えた4者で2022年7月に合意されたものなので、ロシアの離脱によって凍結されることになります。この合意と同時に、ロシア産の農産物や肥料の輸出を促進することがロシアと国連との間で合意されたのに、きちんと実行されていないとして、ロシアは以前から延長に難色を示してきました。ロシアの離脱はある程度予想されていました。

7月31日時点の国連のウェブサイトによると、黒海穀物イニシアチブにより、3285万6036トンのウクライナ産の食料が輸出されました。内訳は、トウモロコシが51%、小麦が27%、飼料原料となるヒマワリミールが6%、ヒマワリ油が5%などとなっています。輸出先では中国が800万トンと全体の24%を占め、スペインが600万トン、トルコが320万トン、イタリアが210万トン、オランダが200万トン、エジプトが160万トン、バングラデシュが110万トンなどとなっています。プーチン大統領がサミットで指摘したように、途上国支援と言いながら、中国や欧州に多く振り向けられているのが実情です。

いずれも国連ウェブサイトより(7月31日時点)




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