世界の有機農業面積は7640万ヘクタールに増加、日本は89位

スイスの有機農業研究機関FiBLとドイツのIFOAMが2023年2月14日に発表した報告書によると、2021年の世界の有機農業の面積は7640万3777ヘクタールとなり、前年比1.7%増加しました。日本の面積のほぼ2倍に相当します。1999年以降で7倍に増加し、過去最高を更新し続けており、着実に増加していると言えます。全農地に占める割合は1.6%となりました。欧州連合(EU)や日本のように、有機農業の拡大を掲げる国・地域も多く、増加傾向はしばらく続きそうです。

地域別に見ても、オセアニアや欧米、アジア、アフリカがいずれも増えています。増加ペースに違いがあるものの、有機農業は世界の全地域で拡大しています。

日本の有機農業面積は1万1992ヘクタールで、89位となっています。全農地面積に占める割合はわずか0.3%です。2021年に策定した「みどりの食料システム戦略」は2050年までに有機農業の面積を25%に増やすという野心的な目標を掲げ、ここ数年に急に力を入れ始めましたが、世界的に見るとかなり遅れています。目標達成は容易ではなさそうです。

有機農業面積の内訳を見ると、国によって差がとても大きく、首位はオーストラリアで、3568万7799ヘクタールと、全体の47%という圧倒的なシェアを占めています。2位はアルゼンチンですが、規模はオーストラリアの8分の1以下と、かなり差をつけられています。3位はフランス、4位は中国、5位はウルグアイと続きます。カナダまでの上位12位と、日本など主な国は以下の通りです。日本はオーストラリアの3000分の1なので、グラフではほとんど見えなくなってしまいました。中国は近年、有機農業を急拡大させており、2021年には世界で最も多い31万8700ヘクタールも増えました。

地域別にシェアを見ると、オセアニアが47%と首位で、ほとんどがオーストラリアです。欧州が23%、中南米が13%、アジアが9%、北米が5%、アフリカが3%となっています。

用途別では、永年草地が4953万8263ヘクタールと、全体の65%に上ります。オーストラリアの有機農業面積の大半はこの永年草地で、家畜の放牧に使われているようです。このほか、穀物などの耕作地が19%の1475万0358ヘクタール、野菜や果物、コーヒー、カカオなどの永年作物が8%の621万3298ヘクタールと続きます。北米や欧州、アジアは耕作地の割合が最も大きく、アフリカは永年作物が最も多く、オセアニアと中南米は永年草地が多くを占めています。割合は地域によってかなり異なっています。

全農地に占める有機農業の割合が最も高いのは、欧州のリヒテンシュタインで、40.2%に上ります。世界平均は1.6%なので、その25倍というすさまじさです。2位はサモアで29.1%、3位はオーストリアで26.5%となっています。有機面積が最も大きいオーストラリアは農地も大きいので、9.9%にとどまっています。米国や中国は1%以下で、日本より少し高い程度です。上位10カ国と主な国をグラフにすると、以下の通りになります。アフリカの島国サントメ・プリンシペといった聞き慣れない国も上位に入っています。

一方、2021年の世界全体の有機食品の販売額は1248億4500万ユーロとなりました。国別では、米国が486億1800万ユーロと、全体の39%を占めています。2位はドイツ(158億7000万ユーロ)、3位はフランス(126億5900万ユーロ)と欧州勢が続いた後、4位に中国(113億1900万ユーロ)が入っています。地域別では欧州と北米がほぼ同水準となっています。日本は2021年のデータはないようで、2018年は14億1900万ユーロだったと紹介されています。日本は生産、消費ともに有機農業では後進国であることが浮き彫りになっています。

1人当たりの消費額はスイスが425ユーロと首位で、2位デンマーク(384ユーロ)、3位ルクセンブルグ(313ユーロ)と、欧州勢が上位を独占しています。欧州では食に関する意識が高いことが示されました。日本は2018年に11ユーロでした。


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