中国のトウモロコシと大豆の生産、いずれも過去最高
米農務省(USDA)は1月12日、今年度の中国のトウモロコシと大豆の生産高がいずれも過去最高になったとの推計を公表しました。中国はトウモロコシ生産が米国に次いで世界2位、大豆生産もブラジルと米国、アルゼンチンに次ぐ世界4位の農業大国ですが、輸入はいずれも世界トップです。特に大豆は世界全体の輸入量の約6割を中国が占めています。中国が豊作になれば、中国の輸入が減り、日本など他の輸入国にとっては国外から食料を調達しやすくなります。
中国では通常、トウモロコシの収穫は10月に終了します。中国国家統計局の統計などを基に米農務省が推計したところ、2022~23年度(10~9月)の中国のトウモロコシ生産高は2億7720万トンと、前年度比2%増える見込みです。過去5年平均(2億6200万トン)を6%も上回り、豊作だと言えそうです。収穫面積は1%減の4307万ヘクタールにとどまるものの、単位面積当たり収量(単収、イールド)が1ヘクタール当たり2%増の6.44トンに高まるためです。
収穫されたトウモロコシはほとんどが家畜の飼料として使われます。単収は徐々に増えており、種子や生産技術の改良が進んでいるようです。ただ、米国やカナダは1ヘクタール当たり10トンを超えているので、生産性という点では北米に大きく水をあけられています
米農務省は、中国の生産増の理由について、黒竜江省や吉林省、内モンゴル自治区など北東部の主要生産地が適度な降雨といった良好な天候に恵まれたのが主因だと分析しています。穀物の輪作の促進や補助金交付といった当局の政策も増産につながったとの見方も示しています。南東部は高温や乾燥に見舞われ、生産は減少したとみられるものの、全体への影響は限定的ということです。
米農務省による2022~23年度の需給予測の内訳は以下の通りです(カッコ内は前年度比増減)。
期初在庫 2億0914万トン( 2%)
生産高 2億7720万トン( 2%)
輸入 1800万トン(▲18%)
国内飼料 2億1600万トン( 3%)
期末在庫 2億0732万トン( ▲1%)
一方、2022~23年度(10~9月)の大豆の生産高は過去最高の2033万トンと、前年度比24%の大幅な伸びとなる見通しです。過去5年平均(1710万トン)を19%上回ります。中国で大豆は通常9~10月に収穫されますが、収穫面積は22%増の1027万ヘクタールと、こちらも過去最高を更新しました。単収は1ヘクタール当たり1.98トンと2%増え、過去5年平均(1.92トン)を3%上回りました。ただ、米国やカナダ、ブラジルの単収は3トンを超えているので、生産性の点では依然として大きな開きがあります。大豆は主に、圧砕して家畜の飼料として消費されます。
米農務省は、生産増の要因として、トウモロコシと同様、黒竜江省や吉林省などの主要生産地での良好な天候条件を挙げています。生育にとって重要な6~7月に適度な降雨に恵まれたということです。さらに、2016~17年度から中国当局が大豆の輸入依存度を下げるため、大豆の増産政策に取り組んでおり、その効果が出ているとも指摘します。州政府が各州の大豆生産目標を定めたり、種子開発や作物管理の投資を増やしたり、トウモロコシの価格支持や補助金を減らしてトウモロコシから大豆への転作を促したりしているということです。それでも国内生産の5倍近くを輸入に頼る構造となっています。大豆の栽培面積はトウモロコシの4分の1にとどまっており、今後どこまで増えるのかが注目されます。
米農務省による2022~23年度の需給予測の内訳は以下の通りです(カッコ内は前年度比増減)。
期初在庫 3140万トン( 1%)
生産高 2033万トン(24%)
輸入 9600万トン( 5%)
国内圧砕 9500万トン( 9%)
期末在庫 3133万トン(▲0%)
米農務省は中国のコメ生産高の推計も示しています。2022~23年度(7~6月)は前年度比2%減の1億4595万トンと、2年連続で前年を下回りました。過去5年平均(1億4830万トン)も2%下回りました。収穫面積が2%減の2945万ヘクタールと低迷し、単収は微減の1ヘクタール当たり7.08トンでした。単収は米国(8.28トン)には及びませんが、日本(6.82トン)を上回っています。中国は世界最大のコメ生産国であるとともに、世界最大のコメ輸入国です。
コメの主要生産地である長江流域で7~8月に高温や乾燥に見舞われたのが収穫面積の減少につながったと米農務省は分析しています。中国では、4~6月に作付けを行う単作が全体の66%を占める一方、4~5月と7~8月に作付けする二期作も行われています。高温や乾燥によって単作米と二期作米の生育に影響が生じたということです。
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