米国の穀物作付けは9年ぶり高水準か

米農務省(USDA)は2023年2月23日、トウモロコシと大豆、小麦の主要3作物の2023年の米国での作付面積について、前年比3%増の2億2800万エーカー(1エーカー=約0.4ヘクタール)との予測を公表しました。予測通りとなれば、2014年以来、9年ぶりの高水準となります。ロシアによるウクライナ侵攻の影響で価格が高騰したことを受け、小麦が特に増えると予想しています。米国では小麦の作付けや生産は減少傾向が続いてきましたが、需給の逼迫を受け、農家は増産に転じるということです。需給の緩和により、3作物ともに価格は前年から下落するものの、過去10年間の平均は上回るとUSDAは現時点ではみています。

USDAは毎年この時期に「アウトルック・フォーラム」と題した会合を首都ワシントン近郊で開き、その年の米国産農産物の需給予測を明らかにします。ただ、この時点の予測は過去のデータなどから機械的にはじき出した数値であるため、結果的に大外れとなる可能性もあります。USDAは今後、農家への聞き取りや実地調査を経て数値を順次修正していくので、穀物市場はそれを見ながら一喜一憂することになります。

USDAの予測によると、2023年の小麦の作付面積は8%増の4950万エーカーと、7年ぶりの高水準となります。収穫面積は8%増の3840万エーカー、単位面積(1エーカー)当たり収量(単収)は6%増の49.2ブッシェルとして、生産高は14%増の18億8700万ブッシェルと見込んでいます。生産面積の拡大に加え、干ばつの影響で前年に落ち込んだ単収も改善し、大幅増産を予想しています。

2023年のトウモロコシの作付面積は3%増の9100万エーカーと、2年ぶりに増える見込みです。収穫面積は5%増の8310万エーカー、単収は5%増の181.5エーカーで、生産高は10%増の150億8500万ブッシェルと過去2番目の多さになるということです。大豆の作付面積は前年と同じ8750万エーカー、収穫面積は0.5%増の8670万エーカー、単収は5%増の52.0ブッシェル、生産高は5%増の45億1000万ブッシェルと予測しました。

他の作物の作付面積予測は、綿花が21%減の1090万エーカー、ソルガムが3%増の650万エーカー、コメが13%増の250万エーカーとなっています。この3作物を合計しても1990万エーカーと、トウモロコシの2割、小麦の4割に過ぎないので、米国ではトウモロコシと大豆、小麦の主要3作物のシェアがいかに大きいかがよく分かります。

一方、2023年度の米国産農産物の輸出額を前年度比6%減の1845億ドルに引き下げました。2月15日に1900億ドルとの予測を示したばかりですが、早速下方修正しています。特にトウモロコシやソルガム、綿花について、世界需要の低迷や輸出競争の激化により減少すると説明しています。ただ、前年度は過去最高の1964億ドルとなっており、水準としては過去2番目の大きさとなります。

輸入額は3%増の1990億ドル(従来予測1991億ドル)と小幅ながら下方修正したものの、過去最高を見込んでいます。この結果、農産物貿易の赤字額は145億ドルと、従来予測の91億ドルから拡大することになります。

輸出先としては、中国が340億ドルと前年度から減るものの、3年連続で首位を維持すると予想しています。2位がメキシコ、3位が僅差でカナダと続き、4位は4年連続で日本となっています。日本向けはトウモロコシや牛肉が減るということです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?