「箪笥(原題:장화, 홍련)」2004年 #映画2本目
2本目。「箪笥(原題:장화, 홍련)」(2004年)
今回は悲しくも美しい韓国ホラー映画、「箪笥」について書き記していきます。
俳優の演技力の高さや美にこだわった舞台装置や撮影方法など、魅力あふれる作品だと感じました。
まずは簡単にあらすじをご紹介します。
【あらすじ】==========================
精神病棟で医師にカウンセリングを受ける女性。今日はどうだったか、家族の写真を見てどう感じるか、様々な質問を医師は尋ねるものの、女性は一切答えようとしない。
「あの日のことを話してくれるかな?覚えているはずだよ。」
再び医師が尋ねると、女性はゆっくりを顔を上げ外の景色を見つめた。
映像は回想へと入り、ある姉妹が父親と一緒に田舎のお屋敷にやってくる。落ち着いた性格で妹想いの姉”スミ”と、そんな姉を慕う、怖がりな妹”スヨン”。屋敷に入ると美しい義母が二人を歓迎してくれたが、実のところは二人との関係構築はうまくいっておらず、特に姉スミとは顔を合わせるといがみ合う仲だった。
スミは2階の自室に入り、荷ほどきをしようとするがどうやら部屋の様子がおかしいことに気が付いた。カバンから取り出した本と全く同じものが既に机上にあったり、箪笥の中身が今着ているのと同じ服でいっぱいになっていたり、物が重複しているのだ。一方の義母も父親の下着を片付けようとするものの、ランドリー室の前に既に同じ下着が置かれていることに不審がっていた。
場面は変わり、食卓の場で義母は兄弟夫婦をディナーに招待することを提案するが、姉妹は乗り気でない。父は我関せずといった様子で、結局招待することが決まったのであった。
家の主かのように振る舞う義母の様子にますます嫌悪感を募らせるスミとスヨン。
義母の兄弟夫婦が来訪した日、姉妹はディナーには同席しなかったため4人で食卓を囲みながら話をするが、せわしなく話しかけてくる義母に対して、弟は拒絶的な態度を示す。
家の異変を感じ取りながらも、義母は常用の精神安定剤を飲んでは眠りにつくという日々を過ごしていた。
ある日、義母が大切に飼っていた小鳥が無惨な姿で見つかり、スヨンによるものだと激怒した義母は、スヨンを部屋の箪笥に閉じ込める。
泣き叫ぶスヨンを助け出したスミは、この仕打ちを父親に打ち明けて激怒するが、父親は逆にスミの態度が理解できないと耐えかねた様子。
どうしてスヨンがいじめられているのを無視するのかと声を荒げると、父親は「スヨンは死んだよ」と告げるのだった。
スミはかつて箪笥の下敷きになり死んだスヨンのことを、自分の責任だと感じていた。現実を受け入れられず、精神の病に罹ったスミは、自身の中にスヨンと姉妹をいじめる義母を作り出していたのだった。
疑念が確信に変わったのは、本当の義母がスミの前に現れたからだった。
妄想の義母になりきっていたスミは本物義母を目にした瞬間に自分を取り戻し、精神薬を服用した。
スヨンが死んでいたことを思い出したスミは、また精神病院へと戻っていく。
一人病室で妹との記憶を思い出し涙を流すのだった。
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それでは、本作の魅力のなかでも3つの要素に注目していきたいと思います。
・日本ホラーに親しみある雰囲気づくり
本作は韓国映画ですが、陰鬱とした雰囲気や、けしてテンポよくはない物語の運びなど、日本ホラー王道の『リング』や『呪怨』に近いものを見ていて感じました。
日本ホラーが好きという方にはぜひ見ていただきたいです。
また、和訳タイトル「箪笥」とつけたセンスの良さも感じます。実際の原題「장화, 홍련」は日本語訳では「薔花, 紅蓮」となり、かなり印象が変わってしまうのですが、韓国の古典怪談、『薔花紅蓮伝』という話をもとにしていることからつけられたタイトルだそうです。韓国の古典怪談に馴染みのない日本人に向けてつけたタイトルとして『箪笥』は100点という印象です。
・映像の美しさ
ホラー映画としての陰鬱とした雰囲気をしっかりと演出しながらも、どの場面を切り取っても美しいのが本作2つ目の魅力です。
構図の美しさとしては、姉妹が会話する桟橋のシーンや、食卓を囲む家族のシーン、姉妹がそれぞれの自室のベッドで横になっているシーンが印象的でした。
特に姉妹のシーンはどれも家族の写真アルバムにしまえるほど姉妹愛を感じられます。
また、それぞれのシーンにフィットするように、彩度や温度うまくコントロールされているように感じました。舞台装置としての屋敷の内装やインテリア、登場人物の衣装も映像にメリハリを与えていました。
例えば、姉妹の桟橋のシーンはアイボリーやライトブラウンといった優しい印象、義母のシーンはビビットな内装が目に留まる食卓周りや義母自身の原色に近い派手な衣装が彼女の異質さやヒステリックさを印象付ける効果を与えているでしょう。
・俳優の演技力の高さ
3つ目の魅力は何といっても俳優たちの演技力の高さでしょう。
特に称賛したいのが義母役のヨム・ジョンアさんです。彼女は映画の序盤、空回りしたようなテンションの高さを見せたり、姉妹の行動に対するヒステリックな様子から他家族と比べて浮いた存在に感じられます。
しかし、スミの事実がわかってからのそれまでの義母に対する印象が大きく変わるのが本作の見どころです。
スミの前に現れた本当の義母はごく自然な人物なのです。スミに対して適切な距離を測りながらコミュニケーションを試みる、普通の大人の女性であることに、主人公スミの絶望感すら感じられます。
もっと嫌な奴だったら、と最後に妹を助けるチャンスを逃した自分を呪っているのでしょう。実際のところ義母は、スミには伝えていませんが、箪笥が倒れた直後に部屋を訪れたにも関わらず見て見ぬふりをしていたので、その時悪であったことに間違いはないのですが。
義母に対して妹スヨンは映画の最初から最後まで愛くるしい人物として存在しています。本当のスヨンは既に亡くなっているので、過去の回想の中でのみ登場しますが、場面としては非常に少ないです。
スミが演じていたスヨンは、心から姉を慕うかわいい妹という印象にほかならず、義母からひどい仕打ちを受ける際は顔をぐしゃぐしゃにして泣き、助けを求める様子が庇護欲をかきたてます。スミの守れなかった、守りたかったという思いがそのまま反映されていて見事です。
以上、3つのポイントで「箪笥」をご紹介しました。
韓国映画のクオリティの高さが感じられる作品でした。
それにしても姉妹のスミ役のイム・スジョンさんと、スヨン役のムン・グニョンさん、お二人ともとてもかわいいですね!
AmazonPrimeでも視聴が可能です。
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