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「神経可塑性ってなんだっけ」やり直しリハビリシリーズ#1


この記事を通して皆さんが獲得できること:

 ・神経可塑性を理解できるようになる
 ・私たちの先生であるカレン博士のことをもっと知り、信頼できるようになる
 ・そろそろカレン式リハビリを実践しよう!と、心の準備が整う

Maorisサークルでは、今までサークル内で発信してきた「発達促進」に関する情報をさらに日常生活で実践しやすいように、今月からママライターaya8による「やり直しリハビリシリーズ」として発信します。
「何をしているの?」と聞かれることが多いことから、今日は第一回として公開させていただきます!自宅リハビリにご興味がある方はぜひお待ちしています!

自己紹介とMaorisとの出会い

初めまして!
今年度から、これまでMaorisで配信されてきた「神経可塑性」「カレン式リハビリ」に関する記事を書かせていただくことになったaya8と申します。 

本題に入る前に少しだけ自己紹介を。
私は、この4月から保育園生活が始まったばかりの年少の息子と小学2年生になる娘を持つ2児の母親です。息子にはダウン症があります。

Maorisには設立当初から、しかもメンバー第1号という極めて前のめりな形で参加した古株にあたります。息子が生まれたのは2019年の秋の終わり、Maorisが始動する約半年前のこと。そこから私がMaorisに行き着く経緯について改めて考えてみました。 

息子が生まれてすぐから、持ち前の前のめりさが功を成してか、いわゆる「暗黒期」があまりなかった私は、親として息子にできることはなんだろうと考え始めました。そこで思い浮かんだのが、知的な遅れのある子を育てるには「習慣」がものを言うのでは、ということでした。何事も知識として教え込むのは大変だけれど、日々繰り返す活動の中に知識や経験を盛り込めば身につくことも多かろう、と言うわけです。 

この考えをもとに息子を育てるための指針探しが始まりました。
重要視したのは最高の専門機関や頻繁に通える療育教室を探すことではありません。「私」が「行えること」を教えてくれる人を見つけることです。Maorisに入ったのはまさにそのためだったのですね。特別な訓練も受けず、医療の知識が無くとも、親こそが我が子のスペシャリストになれると言う気持ちに寄り添うサークル、それがMaorisなのだと感じました。 

0歳から大人になるまでの我が子を一番近い場所で見つめられるのは親や保護者だけです。その親である私たちに継続して最新の知識と情報を与え、希望ある未来を見せてくれるMaorisはサークルというより、不安や困難の多い「障がい」にまつわる世界を並走してくれる心強いパートナーだと言えるのではないでしょうか。

Maorisが配信する知識やスキルを、我が子のスペシャリストであるママ・パパにとってより一層覚えやすく、使いやすくしていくこと。今回こちらで記事を書かせていただくにあたって私が一番に掲げたのがこの目標です。皆さんと共に学びを深め、我が子の成長を促し、新しい未来を切り開いていけると信じています。どうぞよろしくお願いいたします!

 

復習その1:神経可塑性とはなんぞや

さて、本題です。神経可塑性とはなんぞや、と言う復習です。いつも思うのですがこの言葉、難しいですよね。
ママ友に「神経可塑性のアプローチで子どもを育ててる」なんて言ったら最後、コダワリの人?と敬遠されるんじゃないかと言い出せない人もいるんじゃないでしょうか(→私)。
でも、です。じゃあ神経可塑性ってなに?と言うところをシンプルにシンプルにブレイクダウンしていくと、その核となる部分は非常に明確なんですね。
私の捉え方はズバリ、「脳の中の繋がりは柔軟である」です。
「人間の脳って柔軟だから、いろんな成長を促せるよう頑張ってるんだよー!」と言って後ずさりするママ友はあまりいないでしょう。

 皆さんもご存知の通り、私たちの身体は脳内の神経間の繋がりによって呼吸したり、動いたり、排泄したり、考えたり、その他ありとあらゆる行為が可能になります。
しかし、先天的な欠損や後天的な事故によってこの繋がりが無かったり、断たれてしまった場合、紐づく機能もまた永久に失われたままなのでしょうか。答えはNO!ですね。
神経の可塑性、つまり脳の柔軟性がここで真価を発揮します。繋がりは新たに作ることができます。強化できます。そして、失われた繋がりを迂回して代替になる繋がりを再構築することだってできるのです。こうした脳の特性が生きることで、人間は様々な形で能力を獲得し、開花させることができるようになるのです。

 復習その2:Maorisのカレン先生って何してる人?

この脳の特性に着目して、障がいのある子どもの発達を促すための独自のメソッドを編み出したのが皆さんもお馴染みのカレン・プライアー博士です。カレン先生はご自身のクリニックで10年にも渡る臨床研究を重ね、その成功例だけを集めここに紹介されている「カレン式リハビリ」にたどり着きました。
大きな機関からの資金的なバックアップがあったわけではありません。すべて自費研究です。あの「こする、揺する」のシンプルなテクニック(その他たくさんのテクニックと同様に)に行き着くまでに、先生は文字通り全てを投じて研究に没頭されました。
「手間がかかっては続かないだろう。お金がかかっては開始すらできない。」
「訓練だとわかれば嫌になるだろう。では遊びにしたらどうか。」
と、常に保護者と患者の気持ちに寄り添いながら臨床研究を続けてこられました。
「こんなことで本当に発達するの?」と時に誤解されてしまうあのシンプルなテクニックは、最新の神経科学と理学療法に思いやりのエッセンスを加えた融合作品だったのです。先生の献身的な姿勢と、そして実際のテクニックがとても効果的だということ、この功労が当時のオバマ政権でも高く評価され、「大統領ボランティア賞」を受賞するまでに至ったほどです。

 あれ、ちょっと待って。先ほどご自身のクリニックという言葉が出てきました。クリニックとは医療的処置を行う場所のこと。
カレン先生は理学療法士なのでは?なぜそんなことが可能なのでしょうか。

実はアメリカでは理学療法士がドクターの資格を持ち、医療処置を施すことができるシステムがあるのです。日本では医師が診断を下し、セラピストがそれに則って施術を行うと言う手順が一般的ですよね。ほんの15分程度、それも1年に数えるほどの外来で息子の何がわかるのだろう、といつもモヤモヤを感じる私にはこの制度が非常に羨ましく感じられます。

 カレン先生は理学療法で学士を得た後、大学院でさらに専門的な学びを深めドクターとなりました。臨床での活動は現在に至るまで40年以上。と同時に、数々の教育機関で講師や助教として後世の育成に当たられたり、医療関連団体で審査官やアドバイザーとして活躍される姿もあります。いつも動画で見るあのフレンドリーでひょうきんな先生はアメリカ理学療法界の重鎮だったんですね。

(おまけにオーストラリアの理学療法であるフィジオセラピー学、自然医学療法学においてもドクターをお持ちです!)

 そんなカレン先生が編み出したメソッドを皆さんがご自宅で取り入れることでどんな効果が期待できるのでしょうか。

結論からお伝えします。

それは、「障がいがもたらす影響の根幹にアプローチをかけることで、未来の発達に繋げていくことができる」ということです。
簡単に言うと「土台を強くし、大きく成長させる」です。

日本では、お子さんに障がいがある場合、早い段階から専門機関での施術を受け、様々なアドバイスをもらうことが一般的な流れになるのではないでしょうか。
息子の場合、「肩の低緊張が顕著なのでたくさん手押し車をしてください」が最初のアドバイスでした。PTを卒業する前後でよく言われたのは「坂道をたくさん歩かせてください」です。
これらのアドバイスの先にあるのはすべて、直近の能力の獲得です。手押し車で肩を鍛え、手先の発達を促そう。坂道をたくさん歩かせて足の裏を使い、外反扁平足を改善させよう、と言った具合に。肩の弱さ、手先の不器用さと外反扁平足は低緊張という同じ原因から由来しているのに、アドバイスは常に局所的で、それぞれが十分なスキルを得たと判断されたらそこで「セラピー終了」でした。OTや S Tでもおそらく似たり寄ったりなのではないでしょうか。

しかし、「カレン式リハビリ」が見据えるのはその奥かつその先です。
弱い箇所に注目するのではなく、弱さの原因に焦点をあて、神経を通して根本的な改善を目指します。そして、根本が強化されることでその先の発達が可能になる、というわけです。

 

神経可塑性テクニックは育児に取り入れられる

ここで、神経可塑性のアプローチを実践した一つのエピソードをご紹介させてください。ブロガー「あぽりさん」が娘さんの誕生時について綴ったブログです(「絵日記でございますー1500g未満の赤ちゃんー」 by あぽりさん)。以前ご本人がMaorisでどのような育児をされていたのかご紹介してくださいましたね。
あぽりさんは生涯重い障がいを抱え続けると診断された娘さんに、オリジナルの神経可塑性アプローチを用いて担当主治医に「奇跡だ」と言わしめる偉業を成し遂げました。神経可塑性の言葉は登場しませんし、当時ご本人もご存知なかったそうですが、脳の性質について独学でリサーチされたそうです。ブログで描かれているのはまさにその全容です。カレン式リハビリが見据える「その奥かつその先」が何を意味するのか、神経に刺激を与え、脳を育てるアプローチがどう花開くのかが非常にわかりやすく記されているので、まだ読まれていない方はぜひご覧になってみてください(一度読まれた方も是非もう一度!)。個人的にあぽりさんがどのように日常に神経可塑性を取り入れたのかがとても参考になり、今でもその姿勢を真似させていただいてます。全部で34話ありますが、お忙しい方は30話あたりから読んでいただけると良いかもしれません。
※インスタではより簡潔に読むことができます。「apori33」でご検索を!


byあぽりさん

 さて、今週のお話はここまでです。カレン先生について、そして神経可塑性について、改めて振り返ってみていかがでしたか。
私はまた新鮮な気持ちで日々のリハビリを見直すことができ、今朝の息子への「こすり」が妙に楽しかったです(調子に乗りすぎて息子にはしつこいとたしなめられましたが)。日々のアプローチの原理を学ぶことは大変ですが、応用が効きやすくなりますし、何より「何のためにやっていることなのか」と「何を目指しているのか」が明確になり、継続することがかえって楽になる気がします。

 来週は「カレン式」の効果についてもう少し掘り下げてお話していきたい思います。ご質問、ご感想などありましたらどしどしお知らせください!必要なことはMaoris本部に確認しつつ、皆で知識を共有していければと思っています。

 それではみなさん、ご拝読ありがとうございました。また来週~!

 

【今週号の関連記事】★リンクは会員様しかアクセスできません
カレン先生 プロフィール詳細
https://note.com/maoris/membership/boards/073c8e8ca502/posts/ef9d8d365f0d
 
「カレン式」入門編
https://note.com/maoris/membership/boards/073c8e8ca502/posts/6c7bf93d18a9
 
あぽりさん寄稿記事
https://note.com/maoris/membership/boards/073c8e8ca502/posts/38faa881170e
https://note.com/maoris/membership/boards/073c8e8ca502/posts/22ded0243571
 
竹村先生による「呼吸」の記事 
https://note.com/maoris/membership/boards/073c8e8ca502/posts/204bacd73641
※来週少しだけ「呼吸」のお話を取り入れたいと思っています!
 


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