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無心


 新年度早々午前中の会議に参加すると、急に、カードをラミネートし、大量に切り取る作業が課せられた。
「単純作業だし、まぁすぐできるでしょ。」とたかをくくっていたのだが、
恐ろしいことに、1台しかないラミネーターがストライキを起こした。
「ういーん・くちゃくちゃ きゅるきゅる(バックする音が・・)
 ういーん・くちゃくちゃ・・・」
機械は怪しげな音を立てて、全ての原稿をくちゃくちゃにしはじめ、私は作業開始早々に時間泥棒された。
仕方が無いから、原稿を印刷し直し、
別の部署のラミネーターを借りて、
やっとの思いで、すべてのラミネートを完了したところで、
すでにその日の午後の時間のほとんどを消費されていた。
もはや、本来の自分の業務が完遂できないと気づき、その作業は翌日回しにしてと、にかく優先順位が先の作業を終らせた。

翌日、とにかくやらなきゃ終らないので、ラジオでも聴きながらやるかと、気を取り直して、リズム良く切り離し作業に入った。入ったつもりだった。ところが、静電気体質が災いし、次々と切ったラミネートの切れっ端が体にくっつきはじめた。
「はぁ?どうなってるの?綿シャツ着てるんですけど?」
独り言にも拍車がかかる。
すぐに腕も身体も透明な切れ端だらけになって、
しまいには、はさみにもくっついて、もう
「キーーーーーー!!」
ってなった。

単純作業は好きだけど、これやる必要あるの?ってちょっとでも疑問に思っちゃうとだめなんだよなぁ。

もう心を無にして作業した。
そう、無心。単純作業には無心が最強。
ラジオもすでに耳の中に入らず、
途中職場の人に話しかけられた時
「あ?は?・・・はい」
とちょっとだけ現実に戻ったが、その後も無心。

かどまる君でカードの角を丸くし、
磁石を貼り付け、結局翌日の午前中もすべて費やし
なんとか全部完成。

全部終ったときの開放感半端なかった。
やりきったよ私。頑張ったよ私。
無心の神様ありがとう。

その日の昼食のおにぎりは、2割増しでうまかった。

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