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読書感想文『千姫 おんなの城』植松三十里

主人公の千姫は徳川家康の孫娘。幼くして豊臣秀吉の嫡男、秀頼に嫁いだことで知られています。
時代劇などでは、大阪夏の陣で大阪城落城の際に助け出される姿がよく描かれますよね。ただ千姫はその後も七十歳まで生きたそう。そんな彼女の一生を書いた一冊です。

物語は千姫が七歳で嫁ぐ様子でスタート。雨の中の輿入れは前途多難な人生を予感させるようです。
いとこ同士の秀頼と千姫が仲睦まじい夫婦になっていく様子は微笑ましいですが、それとは逆にきな臭さも漂ってきて。千姫が十九歳のときに二人の別れはやってきます。歴史好きなら知ってるはずの結末ですが、胸を痛めながら読み進めましたよ。

大阪城から逃げのびた後も再縁を強いられたり、後に将軍となる弟の相談相手になったり。時代背景が違うとはいえ、同じ女性として「よくぞこの荒波を乗り越えてくれた!」と喝采したくなります。悩み、時には苦しみながらも、生きていくことはやはり大切なんだと改めて気づかせてもらいました。

千姫の他にも魅力的な登場人物がたくさん出てきます。伝通院(お大)にお市、お茶々らの姫君たちから侍女まで。どの人物にも温かく寄り添うような植松さんの筆は、心にじんわりと沁みました。
あの狡猾なイメージの家康すらも、最後には愛情豊かな祖父として描いてしまう。植松さんのお人柄が伝わってきます。

私の地元は家康の生母、お大の生誕地。千姫の曽祖母にあたる人です。この人もまた多難な人生を全うしたそう。植松さんはお大を描いた作品も手がけてらっしゃるのですね。ぜひ読んでみたいと思いました。

素敵な本との出逢いに感謝!

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