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【まほやく2周年イベスト考察】フィガロとファウストの「見ること」(ネタバレ)

「魔法使いの約束」2周年おめでとうございます。

前回に引き続き、2周年イベストの考察を散らかしつつ、お祝いをしていきたい。


今回は、私の心をいつも抉っていくフィガロとファウストについて考察する。なんと2周年の無料10連でこの二人のSSRが一枚ずつきてくれた。これまで全然来なかった反動なのか、ちょっと怖い。

彼らについてはたびたび考察記事にまとめているため、それらを踏まえた上で、2周年イベストから新たに見えたことを述べていきたい。

【過去のフィガロ・ファウスト考察記事】
・【まほやく 南訓練イベ考察】愛すべき「傷」④(ネタバレ)
・【まほやく 東訓練イベ考察】愛すべき「傷」⑤(ネタバレ)
・【まほやく 中央バラッドイベスト考察】自分の在り処(ネタバレ)
・【まほやく1周年イベ考察】愛すべき「傷」⑧(ネタバレ・フィガロ/ファウスト編)

2周年イベスト、前回の記事は↓

いつも通り、大変なネタバレをする予定であり、妄想も多く含まれる。カードストーリーは全く読んでおらず、ゲーム以外の媒体の情報はほとんどチェックしていない上での、二次創作だと思っていただきたい。
また、記事中の画像は全てゲーム内からの引用である。


1.ファウストの向こうに「見たもの」

2周年イベストの収穫といえば、フィガロとファウストが出会った、まさにその時の状況が明らかになったことだろう。その日は流星群の夜だったようなのだ。

決死の覚悟でフィガロのもとへやってきたファウストを見た時のことを、フィガロは以下のように述懐している。

「あの子の、きみたちの背の向こうに、流れ星が見えた」

そしてフィガロ自身はその流れ星を、「世界を変える旅人」「時間を動かす存在」だと思っているとい。だから、ファウストを見た時に「世界が変わる予感がした」と。

ひまわりのエチュードイベストに詳しいが、フィガロはファウストと出会ったことで、「ぐちゃぐちゃの黒い線がまっすぐに伸びる可能性があった、それがきみだったんだ」と言い、ファウストの来訪を「天命だと思った」としている。

まさに、雪と流星群を背景にしたファウストの姿が、フィガロにとっても「天命」ということになろう…なんとも壮絶な眺めである。


しかし、同時に私はちょっとした違和感を覚えたのである。
どうも2周年イベストのフィガロの口ぶりからは、ファウスト本人ではなく、彼の背景や、彼が背負っている使命に目が留まっているような感じがした。


フィガロがファウストを弟子にした理由として挙げられているのは、
「世界をよくするために魔法を教えてくださいと言われたのがはじめてだったから」
である(ファウストの印象(5)参照)

初見では何も思わなかった。
しかし、2周年イベストの回想シーンを経ると、少々疑問だ。

全体的に、フィガロの演出過多であるように思うのだ。

流星群を背景として初めてファウストを見た時の特別感を、ずっと引きずっていないか。流星群と雪と、決死の覚悟でその場に立つファウストの表情が目くらましのようになり、ファウストそのものを見誤っていないか

フィガロは、ファウストに自分のすべてを継承し、二人で一緒に中央の国を見守っていくことを望んでいたらしい。

それだって「ファウスト本人」を欲していたわけではない

ファウストとと同じ景色を見る
だとか
ファウストがいる景色の中に、自分も一緒にいる
ということを望んでいたにすぎない。

だから革命軍で「お客さん」だと感じた瞬間に、ショックを受けて逃げ出したのだ。

初対面時、フィガロはファウスト本人に天命を感じたのではないと思う
彼の背景にある流星群が、そして、ファウストが背負う「革命」という使命が、「フィガロのまわりの景色を変えてくれる」ことに期待し、心惹かれたのだ。
(レノックスが、アレクからファウストを託されていたことも少なからず影響しているであろう。いわば、ファウストとアレクの背後にある「革命」の景色に惹かれたのだと思う)

ファウスト自身に惹かれたのではない。
ファウストの向こうに見えた流星群の景色の中に、フィガロ自身も入り、変化することに惹かれたのだ。


2.フィガロの向こうに「見たもの」


さて、今度は逆にファウストが見てきたものについて考えていこう。

2周年イベスト後半、フィガロに「まだ伸びしろはあるか?」と尋ねるシーンがやはり重要である。

「昔はもっと威厳や貫禄があって、誠実で厳しかっただろう」
とのこと。

これに対してフィガロは、

「きみといた時は、きみに格好つけるのが楽しかった。きみに尊敬されて、嬉しかったから」
だから、そう振る舞っていたのだという。

どうしてフィガロはそのように振る舞ったのだろう。
決してそれが本質だとは思えない(フィガロはもっと多面的で、ゆらぎのある存在だと思うのだ…)


そこで前述した、「世界を良くしたいから」というファウストの目的に心惹かれたという部分に注目したい。

いわば崇高な目的をもって弟子入りに来たのがファウストだ。だからそれに見合う「師匠」を無意識に演じたのではないか。そうすることで、ファウストの景色の中に入れると思ったのではないか。
(もしくは、オズの人格をなぞるようなところもあったかもしれない)

しかし、その努力も空しく、ファウストの世界にフィガロは入り込めなかった。そこに必要だったのは同志として「愛される」ことだったとフィガロは悟ったのだ。
だから、「威厳や誠実さがあったってかわいがってもらえない」という結論に達するのだ。

つまり、ファウストもまた、フィガロの本質は全然見えていなかったということになる。

こうなると、師弟揃って、「革命」という強烈な景色に飲まれて、自分自身や、相手の姿を見失っていた、ということができるだろうか。
いや、「革命に酔っていた」と言ったほうがいいかもしれない。

それはフィガロの離脱を招き、ファウストはアレクの真意をつかみ損ねて、火刑に処されることに繋がっていったわけである…


3.それでも、「見えていた」もの


フィガロとファウストは、何もかも見えていなかったわけではない。それがわかったのもまた、2周年イベストの収穫であったように思う。

もう一度「伸びしろ」のシーンを見直そう(しつこい)。

フィガロが、ファウストの修行を途中で切り上げたエピソードについて話している。その時のファウストの顔を、フィガロは以下のように思い出す。

「すごく申し訳なさそうで、悔しそうだった。真面目というか、負けん気が強いなあと思ってた」

驚くほどファウストを捉えているではないか。
強いて言うなら、負けん気というよりも、諦めが悪いとか、妥協しないだと思うが。

そしてファウストもまた、

「あなたが一番、僕のことを知っていると思ったんだ」

と言っている。見られている自覚があったわけだ。


ファウストは、1年近くフィガロのもとで修業をしていたとされている。たしかに「革命」のための修行だっただろう。だが、1年間もその気配を強烈に保つことは難しかったと思うのだ。

日々の修行をこなす中で、「革命」という掛け値なしに、互いに相手のことをしっかり「見ていた」瞬間もあったということであろう。

それはきっと、純粋に「魔法」を使っていた瞬間―互いの「心」を使っていた瞬間であったように思う。


4.師弟関係のやり直し


まだまだ「伸びしろ」のシーンにこだわりたい(いい加減しつこい)。
私はこの場面を、「師弟関係のやりなおし」だと思って読んだ。


まずはファウストの言葉を確認しよう。

東の魔法使いを前の厄災で亡くし、1周年イベストではシノたちをぼろぼろにしてしまったファウスト。
「生徒たちを守りたい(失いたくない)」とい思いから、

「呪いでも、禁忌の術でも、どんなことをしてもいい。強くなりたい」
と言い出す。

「強くなりたい」という言葉がでたのがとても重要だ。

もう一度思い出そう。
フィガロは、ファウストがほかの弟子志願者たちとちがって「強くなりたい」と言わなかったことに惹かれたのだ。

ところがどうだ。ファウストはテンプレートな弟子志願者と同じように「強くなりたい」と言ったではないか。

革命という強烈な光に翻弄され、こじれてしまった師弟関係。それを改めて、スタンダードな形でやり直す機会が訪れたとしか思えない。

ファウストの言葉を「弟子入りのやり直し」だと感じた理由はもうひとつある。その直後にフィガロが

「あの子にとっては、俺に突然破門されているんだな…」
と、ファウストと離別した当時のことを、捉え直しているからである。アレクを外して、考えられている。
完全にすれ違っていた二人の師弟関係が、ようやく双方向になりつつある。


もちろん、革命の傷は消えない。
ファウストはそのやけどを身体に残している。フィガロもまた、忘れられない「流星群の景色」として、その挫折と痛みを反芻している。
しかし、同じ傷を抱えているから、わかりあえることもあろう。

今回、フィガロは、自分の行動によりファウストが傷ついていたことを知った
これで、ファウストが、フィガロの傷心に気が付くことができればあるいは…師弟関係のやり直しが叶うはずである。ある意味それは「過去のやり直し」でもあるのだから、ファウストの厄災の傷にも…良い影響があるように思われる。


少し飛躍するが、フィガロとファウストが再度師弟関係になるとして、フィガロはファウストに何を継承させるのだろうか。

ほぼ間違いなく、「フィガロ自身」であろうと思うのだ。
それはフィガロが「石になる」ための準備だ。

そこでファウストが、フィガロ自身を欲してくれれば…と願わずにはいられない。二人で見る景色がなくてもあっても、「フィガロ、あなたが必要だ」と言ってほしい。フィガロそのものを、見つめながら。


ということで、いつものように、呻きながら、フィガロとファウストについて考えてみた。

簡単にまとめてしまえば、なんだ、似たもの師弟ではないか…というところだ。全然似ていないように見えて、思考回路や、ひっかかるところは、やっぱり似ている。

フィガロがファウストだけを、継承者―弟子にしたのも納得といえば納得だ。

だからこそ、二人で並び立つ未来を諦めてほしくないという思いを強くしたのであった。


3回にわけて2周年イベストを考察してきたが、メインストーリー並みの情報量であったため、十全にカバーできなかったところがある。自己満足で書き散らすことしかできず、申し訳ない。盛り込むべき情報があれば、ぜひコメント欄などでご指摘いただければと思う。

イベストでこの量なのだから、第2部が今から楽しみなようで、少々不安である。2部を浴びて、私はどうなってしまうのだろうか…賢者のみなさまと一緒に、心を落ち着かせて春を待ちたいと思う。

長文にお付き合いいただき、ありがとうございました!

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