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【アイナナ6部総括】究極の「触媒」、七瀬陸(ネタバレ)

みなさま、新年あけましておめでとうございます。
そして、遅ればせながらアイドリッシュセブン6部完結おめでとうございます。
プロジェクトとしても一区切りのようなので、そのあたりも踏まえて本作についての考えをまとめようと思っていたら、うっかり三が日を過ぎてしまった。

3部配信中から中途履修した本作だったが、足掛け5年くらい追いかけたコンテンツであった。
そのひとつの綴じ目に立ちあえたことは、大変感慨深い。取りに足らない人生だが、生きていてよかった。

ということで、「新ブラホワ」によって、4グループがどのように着地し、結局本作は何を描いたのか…というところを、ざっくりまとめておこうと思う。
繰り返しになるが、私の中で本作は、「ゼロ」における陸と天の歌唱でほぼ終わっている過去記事参照)のだが、新プロジェクトの情報を得る前に、頑張ってもう一度考えなければと思った次第である。

あくまでも、これは私個人の解釈であることを、はじめにことわっておきたい。多少文句も言うかもしれない。愛ゆえである。申し訳ない。
また、過去の考察を前提に書くので、初めての方は過去記事を参照してほしい。

いつも通り、大変なネタバレと妄想を含むため、苦手な方はUターンをお願いしたい。また、文章中の画像はすべて©アイドリッシュセブンより引用している。

1.結末の振り返りと新曲について(ネタバレ)


ストーリー既読の方には蛇足きわまりないのだが、とりあえずブラホワの結果を改めて整理しておく。

【出場者および結果(登場順)】
①ŹOOĻ

新曲「utopia」発表。月雲了は遠隔参加であったものの「ŹOOĻを創れてよかった」と発言。
②IDOLiSH7
新曲「TOMORROW EViDENCE」発表。壮五の父がはじめてパフォーマンス鑑賞。
③TRIGGER
新曲「BE AUTHENTIC」発表。ファンである「まげちょん」の曲を採用。九条鷹匡に一流認定される。
④Re:vale
新曲「YOUR RHAPSODY」発表。「新ブラホワ」に至る革命は「Re:valeが楽しみたい」から起こったと評される。

重要な出来事を併記してみた。
意図的にやっていると思われたくないのだが、相変わらずアイナナは個人の問題に終始していて、グループ全体での話題が少ない。最後まで壮五の問題で引っ張るとは思わなかった。
いやしかし、それもそのはず。このグループ、表立ってグループ全体が危機を迎えたことはなかったのである(ですよね?)。
最も解散が危ぶまれたナギの帰国問題の時も、結局問題は公にならなかった。最後までそこが貫かれたということか。

さて、新曲タイトルにも少し注目しておこう。
やはりアイナナだけが異質ということになる。一組だけ「明日(未来)」のことをメインタイトルに据えている。「今」はどうしたんだという話である。
もうこの時点で勝敗はお察し…というところだが、このことについては後述したい。

それ以外の3グループについては、彼らの「現状こうである」あるいは「今こうありたい」という想いがそのままタイトルになっていると言えよう。これも詳しくは後述したい。

まあ何が言いたいかと言えば、最後までアイナナは異質だったのだ、ということなのだ。
もちろん本作に、アイナナ以外の3グループは必要不可欠である。ただ、どちらかと言うと、アイナナと関わったことで、他グループに大きな変化がもたらされた感が強く残るのである。ではアイナナは、この長いストーリーを通してどうなったというのだろうか?

このあたりを踏まえつつ、それぞれのグループについてつらつら所感を述べてきたい。

2.ŹOOĻ―場所があるから、自由に生きられる


まず、ŹOOĻに関しては、TRIGGERとの第3部問題を解決できたとは思えていない。しつこいようだが、もうどうしようもない。
宇津木が懲りずに「ツクモとして新ブラホワを推進して、禊は終わった」ようなことを発言しているが、それとŹOOĻ本人の償いは別物であるということは、最後までうやむやになってしまって、残念である。尺がなかったのだろう。

さて、彼らの新曲は「utopia(=理想郷)」
演出も、モノが雑然と置かれたステージを、四人が思い思いに動くスタイル。

虎於がアクロバットを披露している辺りからも、そこが彼らにとって「ゆるされた場所」なのだということがわかる。「ここなら好きなことをやっていいよ」という場所を、これまで彼らは与えてもらえなかったり、失ったりしてきたのだ。
いうなれば、今いる舞台は彼らにとって理想郷だ。

その舞台がある限り、彼らはステージを降りないということだろう。そのステージを用意するのは、彼ら自身ではなく、彼らを見守ってくれる「ファン」であるという気付きを得たのが、ŹOOĻの成長であったと思う。

ある意味彼らは、個々人では「つながっていない」のかもしれない。ŹOOĻに用意された舞台という土台を共有するという意味で、まとまるのだろうなと思った。
4グループの中でも、衣装のバラバラ感が強いのもそういうことだろう。彼ら自身も「寄せ集め」という意識はまだ持っていて、でもそれが「本物になった」と感じている。

共有する舞台を最初に作ったのは月雲了で、それを安定させたのはファンである。新ブラホワ前後で、了との関係も回復し、ファンとのつながりも再確認した。
そういう意味では、大変綺麗な着地を迎えたと言っていいだろう。

彼らの次の目標は「レッフェスの再出場」とのこと。大変明確である。
個人的には、彼らは国内より海外の方がウケるだろうなと思っている。


3.TRIGGER―「夢」という劇場への誘いと終幕


TRIGGERもまた「場所」が大切なのだが、ŹOOĻとは少し性質が異なる。
まず確認しておきたいのは、彼らが4部以降、復活のための武器としてきたのは「ミュージカル・舞台芸術」なのである(「クレセント・ウルフ」「ゼロ」)。
これは八乙女事務所が推進してきたプロデュースが、「役を演じる技能・才能」という次元にアップデートされたことを意味すると私は思っている。

その彼らの新曲は「BE AUTHENTIC(=本物である)」
3部から繰り返し彼らを表現する言葉として使われてきた「本物」。奈落での「本物」は負け惜しみや強がりに聞こえたかも知れないが、這い上がった今はそう聞こえまい。

TRIGGERは自分の本質とは異なるアイドル(=嘘)を「演じて」きたわけだが、それが光と闇を経て、「本物」になったということである。もう包装紙もなにもないのだ。
仮面も包装紙もなにもかも、まるっと本物の「TRIGGER」なのである。

ライブのセットは、ライブというより…やはり舞台セットだと言った方がいいだろう。
そして、他グループ(特にŹOOĻ、アイナナ)に比べると、個人の表情カットが多く、セットを縦横無尽に動き回る感じではない。それぞれの演技力で、観客を飲み込むスタイルと言っていいだろう。

しかし、それが独りよがりではないことを、「まげちょん」の曲を歌うことで示して見せた。醒めない夢を上演する劇場は、TRIGGERとファンとで作り上げるのである。いわば、TRIGGER自身も、ファンも、劇場の一部。


帰る港を一度失ったTRIGGERという船は、ついに港まで自ら作り出したということか。強い。

新曲冒頭の九条天の吐息は、その「夢」の劇場にファンを誘う合図、そしてエンディングの門扉が閉まる音と天の微笑みは終幕の合図であろう
…どこまでも劇場型アイドルである。

個人的には「終幕」が示されたのが大きな変化だと思った。
「夢」と現実の境目が明確でなかったから、3部の悲劇は起こったのである。TRIGGER本人も、ファンも、「ここからここまでが夢」と線引きできる固有結界のような「劇場」があれば、あの悲劇は二度と繰り返されないだろう。

彼らの次の目標は、「ゼロアリーナでの単独ライブ」である。
3部から掲げられていた目標が、ようやく現実となる。こちらも大変明確であり、本当に彼らはブレないなと思わせてくれた。

4.Re:vale―新たな階層を創る、原点回帰


個人的には、新ブラホワの優勝はRe:valeだったなと思っている。
やはり王者、最後まで革命をやってのけたではないか。

開幕直前のメッセージ映像の中で、またとんでもないことを言い出したなと…思ったのである。
ファンが一番大切、という良い子発言を撤廃し、

「千が一番大切」「ライブは百の楽しそうな顔を見る時間」
と言ってしまったのである。
他グループとは明らかに別スタンスである。

もちろん、これはデュオだからできることだし、これまでの夫婦売りに乗っかるつもりといえば、そうなってしまう。しかし、彼らの過去を知る者としては、これこそが「本音」であろうと思うのである。

百にとって千はアイドルであり、千にとって百もまたアイドル。
楽しませてくれる、居場所なのである。

そういうRe:valeの関係性見守って「楽しむファン」というのは、Re:vale本人たちとは別階層であることが明確に示されたのである。
私はこれこそ革命であると思った。

だからこそ、みんなに好かれなくてもいい、楽しみたいときに見てくれればいい、と言えてしまうのだ。
だって、Re:valeの二人がいればそれで、Re:valeはアイドルなのだし、楽しいのだし、居場所なのである。周りがなんと言おうともそうなのだ。
とはいえ、ファンがいなければ、百は笑顔になれない。千もそれを見て幸福を感じられない。だからファンは大切なのだ。

彼ら新曲は「YOUR RHAPSODY(=狂騒曲)」
う~ん、火事場に戻ってきたらしい(3部参照)!


終始お互いを見つめすぎている二人、舞台装置も至極シンプル。Re:valeに狂った男たちの、お互いのための狂騒曲である。

ファンの発言として「Re:valeは極上の嘘(エンタメ)を提供してくれる」という言葉があったが、「いかにも寄り添ってくれているように見せかけて、実は別階層にいるアイドル」ということなのかな…と思ったりした。

二人の間に入り込むことは、万理であってもたぶん無理である。
前述した発言にしても、アイドルとしては「狂気じみた」発言である。それを新ブラホワでやるという、究極のエンターテインメント。
いやあ、Re:vale恐れ入った。

彼らの次の目標は、もちろん「王座奪還」…と言わざるを得ないのだが、上記のような革命を起こした後なので、必ずしもそうならないのでは?と思っている。
というのも、相手がアイナナだからというのもある。最後にそのアイナナについて考えたい。

5.IDOLiSH7―行先はわからない、白紙の未来


タイトルロールのグループなのだから、アイナナが優勝しないはずはない。
それはマネージャー各位もうすうす気が付いていたのではなかろうか。
が、正直言って、彼らの勝因なんてよくわからないのである。もっと言えば、他グループよりも「なぜ勝ちたいのか」がかなり曖昧だったのがアイナナである。

私はここが肝要なのだろうと思った。

5部を思い出してみよう。
バクマジが開始されたとき、アイドルの定義を松永Pはなんと言っていたか。

「「友達」のようで、助けてあげたくて、同情されてゆるされる特性」

私はこれを、「アイドルとして成長してはならない」という縛りだと考えている。

真っ白であれ、未熟であれ、無垢であれ。
それがアイナナ、もとい、七瀬陸に課せられた役割であった。

無垢で未成熟なアイドルが、明確な勝利への欲を持ってはならない。だからアイナナはフワフワしたまま、運動会前のテンションでブラホワ当日を迎えたのであろう。

彼らの新曲は「TOMORROW EViDENCE(=明日?未来への証明?)」
前述したが、アイナナだけ未来のことをタイトルにしている。

舞台演出も確認しよう。飛行船と、気球と、星?が空中に浮かぶ。とてもふんわりしたコンセプトだと見た瞬間に思った。ふわふわと緩い速度で飛ぶ飛行船。
どんな未来に向かうかはわからないし、速度もわからないし、でもみんな一緒に遊ぼう!行こう!

…なるほど、無垢である。
アイナナのグループとしての個性ってなんだっけ?

その上、飛行船ステージに3人、4人は地上ステージに分断。6部で散々匂わせがあり、明確に答えが出ていないグループ分裂の可能性も引きずっていないか…?

あれ、なんだろう。アイナナだけこの先が不安でならない。
だから無性に応援したい、がんばれ!
…そうか、それがアイドルか。

最後までアイドルを地で行くアイドリッシュセブン。さすがタイトルロールである。

さて、彼らの次なる目標は?
…具体的には示されていない。虹を作る、見たこともない景色を見せる、新しい時代を作る、それだけだ。
それもそのはず、飛行船の行先はわからないのだから。

6.七瀬陸という触媒の物語


結局アイドリッシュセブンはなんだったんだという話である。
注目したいのは、ブラホワ直前に陸の呼吸器疾患がぶり返しかけていたこと。

ああ、デジャヴ…と思ったマネージャーがほとんどだろう。
メインストーリー1部で、彼の呼吸器疾患は、サウンドシップ初登場での失敗、和泉一織の挫折に繋がった。
現在に至るまで、この七瀬陸の呼吸器疾患は、常にアイナナの爆弾としてそこにあった。

爆弾が暴発しそうになるたび、他メンバーは七瀬陸を徹底的にケアし、フォローを約束し、結束していった。その究極の形がセンター交代だったわけだが。
まあつまり、物語開始直後から抱えているこの七瀬陸の疾患問題は、「まったく解決していない」のである。

それでは、今回の「新ブラホワ」直前の顛末を改めて確認しよう。

いつも通り、一織がまっさきに異変に気が付き、ナギが飲み物を運び、他メンバーは「俺たちにフォローは任せろ」と発言。
いつも通りである、ここまでは。

今回は、七瀬陸が「困ったときに助けてくれる人」の存在をはっきりに認識したことで、「治った」と言うのである(根治かどうかはわからない)。

そして、ステージの最中に思うことは…

「オレにできることがあるって信じさせてくれてありがとう」

この筋書きを読んで真っ先に思ったのは、
「もしかして、七瀬陸はこのタイミングでやっと「自分はアイドルできてる」と思えたのか…?」
ということ。

たしかに、発作を抑えて、アイドルとしてファンとの約束は守れている…
九条天に怒られたときのフレーズをここで持ち出してくるのだから、七瀬陸にとってファンとの約束を守ることが、「アイドルか否か」の判断基準だった可能性は高い。

だとしたら、この6部までの長いメインストーリーを通して、ようやく、「七瀬陸はアイドルになりました」という結末なのかもしれない。

これだけ膨れ上がった七瀬陸の存在感には見合わない、あまりにも小さな変化のように思える。

少しだけ周りに目を向けてみよう。

七瀬陸以外のアイナナメンバーは、アイドル活動を通して、かなりの変化を経験したことがわかる。ざっと以下のようになる。

・一織:プロデュース業の告白、兄弟関係の修復
・大和:父との関係性の修復、「一生懸命」
・三月:「アイドル観」の変化と劣等感克服、兄弟関係の修復
・環:居場所の獲得、やりたいことの発見
・壮五:居場所の獲得、自分を好きになる
・ナギ:兄弟関係の修復、友人の死と鎮魂

七瀬陸には上記のような変化、成長がない。
強いて言うなら、九条天と同じ「アイドル」を知ったことで、兄弟関係が変化したことが挙げられるが、他メンバーの変化とはやはり異質である。

もう少し踏み込んだ言い方をしよう。
つまり、七瀬陸は「かかわった人々に変化を起こす装置」なのではないかと思うのだ。
いわば「究極の触媒」である。

「触媒」自体に個性があってはならない、色がついていてはならない、成熟してはならない。
だから、七瀬陸は無垢で、純粋でなければならなかった
人を選ばず作用する「触媒」だから、多くの共感を呼び、「訴求力」を生み出した…?

だとしたら、「アイドルになったと自覚した」七瀬陸の今後は、ますますわからない。
成長し、成熟を始めてしまった彼は、「触媒」としての役割を終えて、どうなるのだろう。
「無垢で、純粋で、成熟していない」アイドルを「王者」としてしまった観衆は、アイドル界は、いったいどうするのだろうか。どうやって彼を受け止めるのだろうか。

まさにここから先が、七瀬陸の「革命」なのかもしれない。
だからこその、「ひとつの結末」なのかもしれない。



ということで、私なりにこのアイドリッシュセブンという物語全体を解釈してみた。
「触媒」という、強めの語彙を選んでしまったので、またお叱りを受けるかもしれない…申し訳ない。

とはいえ、落ち着くところに落ち着いたな、という6部ラストだったと思っている。
各グループがステージを楽しんでいるようだったのが、何よりも良かった。
特にTRIGGER視点でストーリーを辿ってきた身としては、九条天が楽と龍を「最高の友達」と言っただけで、涙が出た。末永く喧嘩しつつ仲良くやって欲しいものである。

1/7(土)には新プロジェクトの情報が解禁されるようだ。


既存4グループが継続して採用されるのか、あるいはまったく別グループなのかわからないが、楽しみである。

ひとまず、私のアイドリッシュセブンの考察記事も、いったんここで一区切りにしようかと思っている。
はじめは、自分の備忘録として記していたnoteだったが、多くの方に読んでいただき、コメントやフォローまでいただき、とてもうれしい驚きであった。アイナナ以外の記事は引き続き書いていきたいと思っているので、引き続きお付き合いいただけたら幸いである。

アイドリッシュセブン考察記事、長らくお付き合いいただき、ありがとうございました!

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