【声劇台本・2人用】黒姫様のお戯れ

「黒姫様のお戯れ」

ジャンル:ファンタジーコメディ

こちらは声劇を想定した台本になります。
よろしければお読みいただけると幸いです。

◆内容
とある世界、とある国の頂点に立つ高圧的な女王様のお話。
城の玉座で今日も政(まつりごと)に指示出す女王は、少しの勇気を出すことにした

◆登場人物
黒姫:とある国の女王様。冷静冷血、無表情で国民から恐れられている。黒いドレスを着ている。容赦がない
カイエン:黒姫に仕える側近。真面目で黒姫の傍で働けることをとても光栄に思っている。

※(M)はモノローグの意味

・声劇等で使用される際は作者名をどこかに表記またはどこかでご紹介下さい。作者への連絡は不要です。
・性別・人数・セリフの内容等変更可です。1人での朗読も可。また演者様の性別は問いません。
・自作発言はセリフの変更後でもお止めください。
・アドリブ可。好きに演じて下さいませ。

(以下本文)
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カイエン:(M)ここは、どこかの世界の、どこかの国。
そこでは、一人の女王様が、一人で政(まつりごと)を担っていました。
彼女の政策は国民に対して容赦がなく、恐れを混じらせた声で、国民達は女王の事をこう呼びました。
「黒姫様」と。
今日も女王は黒のドレスを身に纏い、孤高にも優雅にも、玉座へと向かうのでした。

黒姫:さあ、私の一日を始めましょう
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カイエン:おはようございます、陛下

黒姫:おはよう、カイエン。今日はどんな話が来ているかしら

カイエン:はッ。国境の領地42から、税の引き下げの要求が来ております。

黒姫:税の引き下げ…?

カイエン:はい。国境ともなれば、他国への防衛費が嵩(かさ)んでしまい、税の支払いまで手が回らない、との封書が届いております。

黒姫:そうですか

カイエン:どうされましょうか?

黒姫:現在、税はいくら来ているのですが?

カイエン:ええ、と、領地42からは月10万ベルグの支払いを命じています
※ベルグ=通貨の名称

黒姫:なら、来月から税を15万ベルグに指定しなさい

カイエン:え…上げられるのですか!?

黒姫:そうです

カイエン:何故…か、伺ってもよろしいでしょうか?

黒姫:領地42には以前も防衛費を理由に税を下げています。なのに、また、このような事を言ってくるだなんて…甘えが出ていますね

カイエン:甘え…

黒姫:我が国民に求めるものは規律、そして秩序です。甘えが生まれれば、それを乱す輩も生まれてくる。それは、招かれざる事態です

カイエン:な、なるほど…

黒姫:ときにカイエン。領地78と領地85の様子はどうですか?

カイエン:え、領地78と85ですか…?あの領地は資源に乏しく、税を支払うのも難しい状況が続いておりますが

黒姫:では、今回増えた5万ベルグを分け、それぞれへ送りなさい

カイエン:陛下…!?

黒姫:2つの領地が潰えてしまっては、元も子もありませんからね。頼みましたよ、カイエン

カイエン:は、ははッ!
…さすがは陛下でございますね。貧しい領地の事もお考えとは!

黒姫:そうですか?

カイエン:私は、陛下の側近を務めることができ、光栄の極みでございます!
このカイエン、命尽きるまで陛下に付き従う所存でございます!

黒姫:そうですか…ふむ、そうですか。なら…

カイエン:はい!

黒姫:じゃ私とキスしなさい

カイエン:ははッ!
………は?

黒姫:キス、しなさい

カイエン:は、え、いや、えと、誰に

黒姫:私に

カイエン:え、えと…あ!もしかして手の甲にするキスの事でございますか!?敬愛の意思を示すっていう…

黒姫:でなくて口に。おくちに

カイエン:あ、え?そんな、急に陛下、お戯れが過ぎますよ…

黒姫:戯れではございません。早く

カイエン:え、ええ、あえ~~、…何故?

黒姫:理由が居るのですか?

カイエン:え、ええ~…?理由がない、のに、く、口づけなどと…

黒姫:早(はよ)う

カイエン:え、あ、え、あ、えああああああえええええ~~~~~…
…ご、ご!ごめんなさい~~~~~~~~ッ!!!!(逃げ出す)

黒姫:…逃げたか…意気地なしめ

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(次の日)

黒姫:おはよう、カイエン

カイエン:お、おはようございます、陛下

黒姫:さて、私の一日を始めましょう。今日はどんなお話がきているかしら

カイエン:はぁ…よかった、元の、いつもの陛下だ
隣の国から、交易(こうえき)の話が来ております。

黒姫:ほう…あの国王がですか。以前の国王会議では、流通は国内で補えると言い張って、鎖国状態を貫いていましたのに

カイエン:こちらが、交易品のリストになっております

黒姫:どれ…。ふむ、なるほど

カイエン:陛下?なるほどとは?

黒姫:あの男は交易というのを理解していないようですね。見てみなさい

カイエン:リスト、ですか?…これは…値段が一桁違っているのではないですか?

黒姫:でしょうね。でなければ、あの国は余程の間抜けか、木偶(でく)しかいないようですね

カイエン:という事は…

黒姫:当然、断ります。カイエン、書の用意を。後ほど私が文を書きます

カイエン:かしこまりました

黒姫:本日は以上ですか?少ないですね

カイエン:はッ。陛下も、たまには一日、お部屋でお休みしてはいかがですか?

黒姫:そうですか。そうですね…ふむ…

カイエン:陛下?返事用の紙面は後ほど部屋までお持ち致します。なのでしばしご休憩を…

黒姫:部屋…部屋…あ…
…あっ。痛っ。いた、いたたたたた。

カイエン:へ、陛下!?どういたしましたか!?

黒姫:あっ、いた、いたたたたた。なんだか、足が痛いです

カイエン:あ、足が!?す、すぐに医者をお呼びします!

黒姫:呼ばなくていいです痛いです。カイエンどうにかしなさい

カイエン:え、わ、私がですか!?

黒姫:あー、痛い。これは、私の部屋のベットで休んだ方がいいかもしれませんね

カイエン:ベット…確かに!横になった方が良いですよね!

黒姫:という訳でカイエン私を抱きかかえなさい

カイエン:え!?わた、私に陛下の御身に触れろというのですか!?恐れ多いです!!

黒姫:私がやれと言っているのです。私がどうなってもいいのですか?

カイエン:それは…!

黒姫:私を抱きかかえ、そのまま城内を歩き、他の者へ見せつけた後、私の部屋に入り、私を私のベットに寝かせるのです

カイエン:勝手に話を進めている…!まだやると言ってないのに…!

黒姫:そして、私の右耳の横に左手を、私の左耳の横に右手を置くのです。そして私の腰の両端に、あなたの両膝(りょうひざ)を置くのです

カイエン:…えっと右耳の横に左手、左耳の横に右手、腰の両端に両膝…
…それは、思いっきり覆いかぶさっている状態ではありませんか!!

黒姫:そうです。そうすれば私の足は治ります

カイエン:そんな、嘘をついて…

黒姫:嘘ではありません。さあ

カイエン:あ、え、ああ…ええ…?

黒姫:手を

カイエン:あ、ああ、ああえ、あ~…!

黒姫:早う

カイエン:あ、えあ、ああたくし、医者を呼んで参ります~~~~!!!!(逃げ出す)

黒姫:…ちっ。度胸の無い…

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(次の日)

黒姫:おはようございます、カイエン

カイエン:…お、おはようございます、陛下

黒姫:カイエン、少しやつれましたか?

カイエン:いえ…大丈夫です

黒姫:して、私の一日を始めましょう。今日はどんな話が来ているのですか?

カイエン:は、はッ。領地12から、招致の誘いが来ております

黒姫:招致…ですか

カイエン:なんでも、新しくできた果物がとても美味(びみ)らしく、是非とも陛下に召し上がってほしいと

黒姫:なるほど…新しく流通に加えてほしいと、考えているかもしれませんね
ですが私は黒姫。私を恐れる民はとても多い。遠征中、私を狙う輩も少なくないでしょう

カイエン:その通りです!外出など危険極まりありません。この話はお断りいたしましょう

黒姫:あっ

カイエン:え?

黒姫:領地12に向かうとなると、当然宿泊することになりますね

カイエン:そ、そうですね。領地12とこの城は距離がありますから。それが何か…

黒姫:やっぱり行きましょう

カイエン:え!?いや今危険と…

黒姫:そこの宿泊施設に泊まることにしましょう

カイエン:え!?庶民が利用する宿ですよ!?そりゃ領地12の人間も、招致するくらいだから上等な部屋を用意するでしょうが、泊まり心地も、ベットだって、この城のものより劣って…

黒姫:そこで子作りをしましょう

カイエン:ぶーーーーーーーーー!!

黒姫:なんですかカイエン。汚いですよ

カイエン:こ、こづ、くりって…お相手は…?

黒姫:勿論(もちろん)あなたですが

カイエン:ぴーーーーーーーーー!!

黒姫:なんですかカイエン。よくわからない声を上げて

カイエン:わた、わたくしが相手って、な、何を考えているのですか!

黒姫:何を言うのです。私が許すと言っているのです。大人しく従いなさい

カイエン:そ、そんな、どうか、どうか!ご自分を大切にしてくださいませ!

黒姫:大切にしています。…時にカイエン

カイエン:…は、はッ!何でございましょうか!やはり遠征は断念して…

黒姫:はじめては痛いというのは本当ですか?

カイエン:………………は?

黒姫:ですから、はじめては痛いというのは本当なのでしょうか?

カイエン:陛下…もしかして未経験…

黒姫:問いに答えてください、カイエン

カイエン:そ、それは、しょ、しょ、しょ、しょしょしょしょしょ…

黒姫:しょ?

カイエン:…正直、体がもちません~~~~~~~~~~!!!!(逃げ出す)

黒姫:…また、逃げられてしまいましたね。まったく、唐変木(とうへんぼく)め

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(数日後)

黒姫:おはようございます、カイエン

カイエン:へ、陛下!…いや、おはようございます

黒姫:では私の一日を始めましょう。して、相手は…いえ、窓の外を見れば分かりますね

カイエン:陛下…

黒姫:地平線まで続く軍勢。あれは、隣の国の兵隊を引き入れましたね。やれやれ、叛乱(はんらん)を起こされるとは、私も甘かったようですね

カイエン:そんな、陛下は正しかったです!

黒姫:カイエン、政(まつりごと)に正(せい)も誤(ご)もないのですよ。誰かにとって正しくても、誰かにとっては間違っている。理不尽な世界なのです

カイエン:…

黒姫:どうやら、私自身、規律に縛られていたようです。そして、私より先に、国民がその重圧に耐えられなかった。それだけでしょう

カイエン:それだけって…。陛下…裏から逃げましょう。その為の隠し通路だってあります

黒姫:私が逃げれば城に残った家臣たちはどうなるのです

カイエン:それは…陛下、自分より家臣たちを考えて…!

黒姫:本当は、私、黒いドレスて嫌いなんです。私を隠してしまうみたいで。
でも、それを身に纏(まと)うことによって、私は女王陛下を「被(かぶ)る」事ができた

カイエン:…

黒姫:表に出ます。運がよければ、私の首一つで許してもらえるでしょう

カイエン:陛下…いえ、お戯れはおやめ下さい

黒姫:カイエン…?

カイエン:以前、申し上げたでしょう…私は、命尽きるまで、陛下のお傍にいると

黒姫:…強がりは止めなさい。あなたまで巻き込む訳には

カイエン:この誓いは、私の心の柱。決して折る事はできません。さあ、私の手を

黒姫:…ありがとう

カイエン:参りますか?

黒姫:ええ…
きっと、私の後釜となった人間は、もしかしたら、私より国民の事を、大事にしないかもしれませんね

カイエン:陛下…最後まで国民の心配を…

黒姫:行きましょう…いえ、最後に一つ、あなたに命じます

カイエン:…謹んで、お受けいたしましょう

黒姫:私と、キスしなさい
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(終わり)

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