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コロナがアートに与えた変化 - 黒沢 鑑人 / 山下 ぼぶ【Fuelwa Talk Session】

今回はnote企画、Fuelwa Talk Session第一弾、『コロナがアートに与えた変化』の②をお届けします!前回は展示の形式や、新たな手法、音楽などの話が出ましたが、今回はどのような内容になっていくのでしょうか?

今回話し合っていくメンバーはこちらの2人です。

【 今回のトークメンバー 】

● 黒沢 鑑人 / Photographer

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日本大学芸術学部写真学科卒。ポートレートやコンセプチュアルアートを撮影。『既成概念を壊す』というテーマでシュールな作品を生み出す。
https://www.instagram.com/kanto_kurosawa/



● 山下 ぼぶ (Bergere et Paysans) / Designer

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1998年生まれ静岡県出身。桑沢デザイン研究所スペースデザイン専攻卒。桑沢卒業後『Bergere』を設立、現在は『Bergere et Paysans』として活動中。CGを用いて言葉遊びから着想を得るという、独創的なテーマで作品を数多く生み出す。Fuelwaの総合的なお助け役。
Instagram URL : https://www.instagram.com/k_bob___

【Fuelwa Talk Session】

コロナがアートに与えた変化
黒沢 鑑人 / 山下 ぼぶ

山下 「今日はコロナが芸術活動に与えた変化について話していきたいんだけど、まず初めに私生活の面で変わったことはある?例えば大学のオンライン授業になったとか。」

黒沢 「1日も大学に行かなかったよ。もう授業も週一でしか無かったし、卒制も写真だったからなぁ。」

山下 「ほんと!?そういえば鑑人の写真はどういうものだったの?」

黒沢 「作品は三年生の時はほとんどセルフポートレート。でも、基本コロナ前で撮影する場所は学校だったから簡単だったけど、コロナ後は学校のスタジオ借りれない、お金もないから外部のスタジオも借りれないじゃない。だから基本家で撮影した(笑)。」

山下 「家で撮ったのか。撮る時に不便はなかった?」

黒沢 「持ってる機材も少ないから、困ったちゃぁ困ったけど、撮ってしまえば作品だし。なんとかしたよ、それをなんとかするのがクリエイターじゃないかな?(笑)」

山下 「かっこいい(笑)。そこからさ、次はスタジオに就職するって言ってたじゃん?変わったこととかある?」

黒沢 「あまり聞いてはいないんだけど、1回目の緊急事態宣言の時は1ヶ月丸々止まってたとこもあるらしい。でも今は普通に撮影入ってるし、感染症対策だけしっかりして、人数制限をかけてるかな。」

山下 「なるほど。写真ってそう考えると特殊だね。完成された形を求めて写真に収めるじゃん。その時に箱っていうのが必要になるからさ。」

黒沢 「そうだね。コロナ後の写真業界ではリモート撮影とか話題になってたね。蜷川実花さんとか荒木隼人さんとか。真似もしやすいし、みんながどうやって写真を撮ったり、ポートレートやったらいいんだろうって時に提案してくれた。撮影再開すると、実際に撮る方が良いよねっていうのがあったと思うけど…。」

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引用画像 : ninagawamika instagram https://www.instagram.com/p/B_MDJP7ANaA/

山下 「リモート撮影っていうのは具体的にどんなことやってるの?」

黒沢 「zoomのビデオ通話機能を使って相手の画面を撮影する。それぞれの場所にいる状態で、写真家がポージングや画角を少し指示したり、モデルさんが映った画面をスクショしたり、もしくは相手が映った画面をカメラで撮影したり。それを編集するみたいな。」

山下 「なるほど。実験的な内容だね。でも今後本格的に使っていくにはまだ課題点がたくさんあるね。蜷川実花さんのYoutubeでHow to動画が上がっているけど、もっと画質がよければな。とかも言ってるね。課題点が改善できればもっといろんなことができるのかも。」

黒沢 「逆にそっちはどう?」

山下 「緊急事態出てから現場に行けなくなって、イベントみたいな仕事がなくなったかな。例えば、土日祝日にある商業施設でのイベント、ポップアップなんてものとか、とにかく人が集まるものもできなくなったかな。外出がしにくくなってから、私生活での潤いが大事になってきそうな気がした。これは楽しみな点なんだけど、IKEAの日用品とか家具みたいな、安価でデザイン性の高いものがたくさん出てきそうな予感。明治以前の農民の、決められた場所で生活して、仕事して、家に帰って寝る。そんな生活の中で、花に水をあげるとか、料理とか、工芸品とかに癒しを求める、日常の些細な幸せみたいな。」

黒沢 「家という限られた空間の中で、何を取り入れるかを見極めなきゃいけないね。」

山下 「でも今はインターネットのおかげで外と繋がれる面白さがあるからね。ただ、リモートワークなんかでも仕事とプライベートとか、メリハリを個人でしっかり持つことが大事になってくるかも。ネットによって、家の中にポツンと外の世界があるようなイメージ。」

黒沢 「面白いねその考え方。もっと使い分ける感じになってくるのかもね。これはリモート、これは実際にやるみたいな。」

山下 「コロナ前にもあったんだけど、奥多摩の方かな?仕事しながらキャンプする所が一時期話題になってなぁ。オフィスワークやりながら自然を味わうみたいな。」

黒沢 「最高だね。」

山下 「今の時点、リモートだと限りがあるじゃん。会議にしても大人数で話しても一人の会話しか聞けないし話せないとか。隣同士でこれってどう?とかの小さな会話ができないというか。」

黒沢 「うんうん。」

山下 「ちなみに写真からグラフィックになるけど、広告とかは何か変化あった?」

黒沢 「コロナ禍の広告で面白いのがあって。励ます系が多いんだけど、キンチョーの新聞広告なんだけど、どう広告にしたらいいかわからないって(笑)。」

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引用画像 : KINCHO web site
https://www.kincho.co.jp/cm/ad_paper/muender/index.html

山下 「面白い!もう企業が焦ってる感じというかね。消費者も一緒になって考えられるような。」

黒沢 「やっぱみんなが考えなきゃいけないからかな。みんな一緒の事を考えてるというのが面白いよね。」

黒沢 「あと、サントリーの天然スパークリングの広告。実はこういうCMをやろうと思ってたんです!という企画を言っちゃうんだけどね、面白いもの作るよね。」

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引用画像 : SUNTORY web site
https://www.suntory.co.jp/water/tennensui/sparkling/family/

山下 「なんか逆手に取ってる感じだね。」

黒沢 「わかんなくねぇ!みたいな笑。共感を誘う感じね。見ちゃうもん。」

山下 「初めて体験したパンデミックで、大きな企業も答えを知っているわけ無かった。そういう中で生まれた、消費者と一緒に考えるスタンスは今までに無かったから面白いね。」

黒沢 「うんうん。」

山下 「自分自体の将来の計画とかで変わった点とかってある?」

黒沢 「就職先を変えようと思った、写真関係ではあるんだけど。元々広告代理店のカメラマンがいいなと思ってたんだけど、コロナ禍で時間があって。6月に試験だったのが、8月、9月になって、もっと調べたら、スタジオの方に就職した方がいいんじゃないかと。」

山下 「その決め手となったのは何?」

黒沢 「フリーランスはまだ不安だし、企業にいた方が間違いはないし、地盤を作ってこうと思ってて。でも今の時代の流れって凄いフリーランスに来てると思ってる。新しい価値をどんどん生み出す人が強いんじゃないかとか。ルーティーンで働く人とかが、今後AIや、外国人労働者も増えてきたり変化して。企業内でしか働けないとか、コロナで解雇もあるって考えると、フリーで力をつけていきたいなと思うかな。スタジオは色々な人が使いに来るから。」

山下 「私も少しそう思う。会社で平日働いて土日どこかに出かけるのも良いんだけど。働き方としては、好きな時に好きな場所で作業できる方が合ってるかも。」


黒沢 「オンライン展示って見たことある?」

山下 「大々的にやってるみたいなのはないかな。展示会にいってQRコード読み取れば詳細が観れるみたいなものはあるけど…。」

黒沢 「そういうのって最近あるよね!」

山下 「あと恵比寿の写真美術館でやってたピアノと携帯が連動してて。」

黒沢 「エキソニモさんですね!」

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エキソニモ《UN-DEAD-LINK》2008年[参考図版]
(左) photo: Stefan Holenstein, courtesy of [plug.in] , Basel
https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-3817.html

山下 「オンラインゲームで誰かが誰かを殺したらピアノが鳴るっていう仕組みにゾッとしちゃってさ。誰が誰を殺しました。って携帯に流れるっていう。こういう体験の仕方ってすごい良いって思っちゃった。」

黒沢 「だってもう携帯って体の一部みたいなものじゃん。何かのアニメかで見たんだけど、携帯を持ってる時点でもうサイボーグ化が始まってるっていう。」

山下 「うんうん。」

黒沢 「携帯って脳味噌の一部なわけで、それを見て確かになぁって。なきゃ生きていけないし、記憶の引き出しだとおもって。携帯使った作品ってなるとさ、自分の体で体験してるんだけど、なんとも言えない感じになって。」

山下 「さらにクラウドってものがあるし、脳の一部をみんなで共有してるって考え方もできるよね。」

黒沢 「携帯を脳に近づけると情報を抜かれるとかいう都市伝説の怖さも含めて魅力的だよね。」

山下 「うん、惹かれる。」

黒沢 「スマホで見て展示を完成させる方法っておもしろいよね。あと、オンライン展示で面白いのが一つあって…」

山下 「うんうん。」

黒沢 「去年やってて、今も見れるんだけどオンライン展示なのに入場制限かけてるんだよ。そのサイト一人しか見れないの。サイトを一人見てる人がいたら、他の誰一人見ることができないんだよね。『隔離式濃厚接触室』って名前の展示なんだけど、今でもたまに見ようとしてもまだ見れてないんだよね(笑)。」

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https://rintarofuse.com/covid19.html

黒沢 「誰かが見てると他の鑑賞者が展覧会を見ている為アクセスできませんでしたって出てくるの。オンライン展示って誰でも何人でも自由にアクセスできるのが良い点なんだけどそれを潰して閉鎖的にやるっていうのがめちゃくちゃ面白いなって。お金もかからないし。」

山下 「それを去年の4月にやっちゃうって速いね。」

黒沢 「それがよりスマホと脳味噌の境界が曖昧になる感じがしてる。だからあえて入場制限かけるのもありかもしれないね。」

山下 「見たくなっちゃうし気になるしね。Youtubeとかで再生数伸ばすために頑張ってるのに対抗してるようにも感じたりする。」

黒沢 「最近そういう傾向があるなって思う。例えばTwitterの鍵垢制度でなんでも話せるところとか、Youtubeのメンバーズ制度とか。ああいう閉鎖的な空間だからこそできることってあるじゃん。やばい奴らの集まりとかもできるわけだから、それをSNSでやるのが面白いんだろうね。みんなで発信するものってイメージがある中での閉鎖的空間だから。またリアルに近づいてるって感じるしね。」

山下 「色々できそうだね。写真と空間だけでもリアルにない世界をネット上に作っちゃって、草原でもなんでもぐちゃぐちゃな世界でもいいけど、ネットで見られるようにして。カルトチックだけど、そこに入れるのは誰かわからないっていうの。」

黒沢 「はいはい笑」

山下 「最初の私生活から、仕事、展示会へと話せたのはすごいよかった。可能性とかめちゃあるなって新しく考えられる感じがするね。」

黒沢 「コロナのせいでとかって言われるけど、なんとか楽しめる時代ができたらいいよね。そういうのを作れる人になるようになっていきたいな。」

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