[今だけ無料]ジブン解決! 恋愛不感症だと思っていたジブンから解放されたゲストの思考回路詳細|ジブン解決マドリンネ婦人 File.0002-11
「第一、数」
「俺のストライクゾーンは、ものすーっげー狭いってこと」
「そのようね。だからたいていの表面的な可愛さだけでは、あなたは魅了されなかった」
「あと、ちゃんと自分の中にセンサーついてるなってのも実感。要は、俺に見合うヤツが出てくるまでの数には、まだ足んなかったってだけ」
どんな人だろ……東大卒のエリート女子、とか? 年上キャリアウーマン?
「まぁま! 言うじゃないのー。第二、キスもベッドも効果なし」
「それさ、今のでよーくわかったわ」
「どういう意味で?」
「マダムは男は狼だと思う派?」
「そういう人もいらっしゃるわね、とは」
「……だな」
「自分のこと、狼だと?」
「ま、浅い人間関係ではあるけど、仲いいのは男が多かったからな、ゲス野郎が多いのは事実として知ってる。不順な動機、倫理的にまずい状況ですら、すげー燃えるバカとかフツーにいるし……。だから、どうせ俺もそーゆー部類のロクでもねぇ人間かと思ってたけど……違うわ。俺がちゃんと俺に責任を持てば、俺はいうほど悪かねぇなって。わかってたんだけどな……恋愛に体の反応が含まれるのは当然だろうけど、体が反応してもそれが恋愛とは限らねぇ、ってのはサ……。っつーわけで、宣言しとくわマダム」
「うかがいましょう?」
「昔からの俺、ほぼほぼ間違ってなかった。ま、むやみやたらに遊んでたわけじゃねーしな、一応。ケド……今まで、好きだからとか惚れてるからとかいう感情先行で、その肉体にまで惹かれたっての、ねぇーんだよな。……それ、目指す」
「あら、禁欲宣言?」
「キレーゴトじゃねぇーって。ただ……最上級の結果を手に入れてみてぇっつー、欲深なだけ」
「という建前のもと、自覚のある主目的は?」
「ハハッ、ヤベッ、バレバレなのな。ま……消費の過去を、新鮮な経験っつー可能性に変えてみてぇな、って。……ここまで来たんなら」
この人……ホントに恋愛がしたいんだな。欲に溺れる人間はめちゃくちゃいる。でも彼はその欲を認めて、それを制御下に置こうっていう宣言だもん、今の。……この人なら、やりとげる気がする。いいな……その、前向きな姿勢。それに、今わかった……この人、マジメなんだ。だから、ちゃんと信念を貫ける。ホントのチャラ男は、口だけのいい加減ヤロウーーつまり、見た目や聞こえが良いことをほのめかすくらいしかできない。言動に一貫性がない……。それは男じゃなくても、いい加減な人間はみんなそう。……私だって、まだそっちの、たいしたコトない人間分類。
「やっぱりアタクシ、理想が高いってあなたのような人のことを言うと思うわ」
「ケド、理想を下げたらマジィだろ? だって、それだけ無責任な人間のあいまいな駆け引きに振り回されるし……俺自身も含めて、な」
それって……。
「うふふ、ずいぶんダークな時代があったことを思わせる発言ね〜」
「あんな親とのグダグダな幼少期だったけど……途中でいろんな人を泣かせてばっかだったけど……いい加減で無責任だったジブンも、全くなかったとは言えねぇけど……。ケドサ、まぁ、悪くなかったのかもなって。俺が今の俺であるためには、全部必要な過程だったろうし」
完全に抜け出した……負の、ループ。過去を肯定しただけじゃない。今では、過去を責める彼が、いない。
「いいわね! その、過去への解釈が変わること。それが、時間は未来から過去に流れている証拠よ。出来事は同じでも、その意味付けは現在で変えられる。だからこそ、過去があってよかった、とも思えるようになる。第三、全部やり尽くした」
「そこはミス……。身勝手さ全開で自由に振る舞う。この最初の第一歩を間違えてたとはなー、俺としたことが」
「怖い笑みね〜、まったく。第四。どう? 汚い自分……」
「ん? んなコト、俺言ったっけ?」
「んまぁ!」
「フッ。だってさ、思うんだけど……こういう汚いジブン込みでぶっちゃけてく素の方が、モテる気がすんの、俺」
……当たってるような気がいたします。
「それはまたなぜ?」
「え? だって面白いっしょ、こういうやりとり」
「うふふ、全く調子がいいんだから! 『つまんねー』と思われるに決まっていたのではなくって?」
「フッ……フツーなデートしたいだけなら、男なんかゴロゴロいるぜ、ってな。ま、それも要は相性とタイミングーーご縁だろーし。多分俺の隣にいるヤツは、きっと俺のこういう話にちゃんと乗ってくる……だろ? マダム」
「だから言ったのよ、理想が高いって。あなたわかっているの? あなたに言い返すのはなかなか大変よ? 意図を理解して、さらにそこへ自分の意思や考えをこめて、ちゃんと返さなきゃいけないんですもの。それ以前に、乙女は恋心に振り回されて大変なのに……」
さすがマドリンネ婦人……私とおんなじことを思ってる。
そしてこの時返事をしない早坂さんの背中からは、なんとなく、不気味なくらい嬉しそうな笑みが漏れている気がして、私もニヤけずにはいられなかったのでした。『……妥協するつもりはないし、いるだろ1人くらい』って言いたげな雰囲気が感じられる。……おそるべし、早坂さん!
「汚くて偽りだらけ、気持ち悪い生き心地……今はどうかしら? こういった単語は」
「……不思議だよなー。何にも思わねぇ。あーんなにこだわってて、その言葉聞くだけで身体中が気持ち悪い体感になってたってのに……。もう、全部過去であって、これからの俺、いや、今の俺と一致してねぇなーって。……あ、コレか! 『過去のジブンに戻れなくなる』ーー確かにー!」
……あれ? まただ……ココも、言っている意味が……。
「大事でしょう?」
「だな。特に俺みたいに、小さなプライドかざして、カチコチのジブンの頭の中の世界に閉じこもってる人間にはな。あと……大事だな、リアルで真正面からいくっつーやり方。よーやく、マダムのやり方が対面専門っつー理由がわかった」
「体感は、言葉や思考よりも強烈なインパクトがあるものネ♪」
「その意味で言えば、強烈マダムだったから、ってのもあるかもなー。一応これでも俺、人を見る目はあるつもり。営業だしな。だから、本音と建前はすぐ感知する」
「ということは、アタクシは合格だったということかしら?」
「じゃなきゃ、エゴエゴなジブンが全部排除してただろーな……甘い理想ばかりを気だるく語るペテン師、みたいな?」
「ひどいたとえだこと」
「いや、それこそ紙一重だぜ? 結果を出せなきゃな……そんだけ、リスク高いことやってるっつー自覚、あるんだろ?」
ほら。そういう時、彼女はうっすら微笑むだけ。その裏には心強いほどの自信が見える。……本物の、Professional。
「ケド……サンキュマダム。あんたは本物だった」
「うふふ〜、けれどあなたは、もうすぐそこまで来ていたんですもの。それに、自分にとって刺さる相手、和ませてくれる相手……多くの組み合わせが許されるのがこの世界。あなたは、これからもっと多くの人との本質的な人間関係を楽しめるにちがいないわ♪ ……少年時代は、終わりね」
「当然! 俺は男だからな!」
「楽しみだわ〜、『恋人』を連れていらっしゃるその日が!」
「なーんか、含みのある……あー。『彼女』とか『相手』じゃなく、だな? フッ……ま、相当数打たなきゃ出てこなさそーだけどな」
「あーら、嬉しそうな顔! ……Mr.早坂。忘れないで。『それで、あなたはどうしたいの?』ーーそれだけよ。特に恋愛は不確定で不安定。だからこそ、大事なのはあなたが次に何を選ぶか」
ニシャリーー背後にいる私にすら、その意図を理解した彼の笑顔が見えた気がしました。
To be continued..
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
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