見出し画像

交錯|かわいくねぇヤツ File.b0002-3


 ……えーっと、これは、一体?

「ヘェー! 女性、でしたか……」

「ん? 俺、男だなんて言った?」

「あ、いえ。ただ、胸ぐらを……」

 ハッ! ……エェッ?! ももも、もしかしてー?! チラッと無表情で視線を向けたものの、彼は私の内心の怒りを既に感知してか、眉をピクリとさせてから目をそらしました。……言ったんだー!

「そ。この人が、俺に甘いと檄を飛ばしたマウリちゃん」

 あー、そんな堂々と! それもまた、下の名前で!

 ……何、私、一体どんな顔をすればいいの? でも、つまりこの人……先週金曜に早坂さんに告白した人、ってことだー! え? どこまでぶっちゃけたんだろ?! ってか、その前になんでここに……? え! それも今日まだ月曜だよ?!

 いや、とにかく考える系は後回し。とりあえず、挨拶! 私は相変わらずのポーカーフェイスで頭を下げました。

「ようこそ、『お菓子な』マドリンネ館へ。パティシエール秘書の金町と申します。ごゆっくりおくつろぎください」

 私はテーブルにグラスを置いた後、速やかにその場を立ち去ろうとしました。しかし……!

「あの……私が彼に告白した話、その……全部、聞いたんですよね?」

 ……やっぱりィィーー! コイツ、なーんで私のことまで! ……ってにらみつけたいけど、私は大人。かつ、そんな幼稚くさいことをしたら、絶対この恋愛モード女子に……勘付かれる!

 というか……あれ? この人、ずーっと、私の方を見てくる。……何?

 ハッ! そうだったー、反応!

「はい、申し訳ありません! ……最初、聞いては礼儀を欠くとは思ったものの……長年の早坂さんのモヤつきが晴れるなら、と……」

「あ、いえ……はい、これまで何度も後味が悪い思いをしてきたからだって……聞いてます。なるほど……。あの、別に怒ってませんので……。すいません、仕事中にお引き止めしてしまって」

「いえ……ごゆっくりどうぞ、失礼いたします」

 ホッ……。あっさり、解放された。……何で、あえて私に話しかけたんだろ? 怒られるのかと思ったけど、そういう意図は感じられなかった。むしろ……なんだか彼女、すごく嬉しそうで、女子オーラすら感じたし……。実際、私が去った後、彼女は嬉しそうに彼の方を見ていました。

 今日はマドリンネ婦人がいないから、ホール内のマイクはオフ。2人の会話は、私には届かない。それでこそ、フツーのカフェなんだけど……。

「早坂さん……彼女じゃないですか?」

「そー言ったじゃん、胸ぐら掴んできたヤツ」

「違いますヨ……早坂さんの好きな人」

ここから先は

8,086字

¥ 111

『色とりどりの最高の個性で生きる喜びと自己成長の最大化に貢献する』をモットーとしたProject RICH活動に使わせていただきます♪ ありがとうございます❤