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日常に役立つLife Style Design 革編 No.05

2021/9/26(Sun)
本日も、引き続き「日常に役立つLife Style Design」 をお届けします。
このシリーズでは、エクササイズ的な内容としてファッションアイテムに
使われる素材(Fabric 、Material)を例に挙げ、お届けいたします。

日常に役立つLife Style Design 革編03_人工レザー

今日も、前回の革編 No.1の中でお伝えした製品に使われる素材について
問いかけた内容を、下から順に拾い上げながら、順次お伝えしています。

前回の文面の中から、今日は、下記の問いかけの中から、今日は、

問い
・本革は動物愛護の観点で、問題視されている事はご存知でしょうか?
・人工皮革を使用する方が環境に良いと言われているのは何故でしょう?
・現在流通している、多様な製品の原材料は、どんな物でありますか?
・その原材料はどれぐらいの量が使われ、天然素材、合成繊維、
 (人工革皮等も含む)は、どれぐらいの割合で使われていますか?
・本革=動物の皮を何故?人は使うようになったのでしょう?

本革は動物愛護の観点で、問題視されている事はご存知でしょうか?

について、お伝えしていきます。まず、最初に、皆さまが持っている
動物愛護について、下記の中から想像できる項目を上げてみて下さい。

1:絶滅危惧種の動物を守る
2:動物への虐待をしない
3:猫や犬、ペットなどで飼われる動物を簡単に放棄しない
3:牛や豚、鶏などの食用飼育動物は動物愛護には関係ない
5:動物全般に対して、動物愛護の観点は関係している


以上の五つの中で、どれが正しいと思いますか?

答えは、どれも、正しいけれど、どれも本当の意味で正しくない
これが、正しいか?正しくないか?の観点で捉えた場合の答えです。
意味不明ですよね?

では、まず、動物愛護のルールについて考えていきましょう

「アニマルウエルフェア」とは、日本も加盟している、政府間機関である「国際獣疫事務局(OIE)」で、世界の動物衛生の向上を目的とする勧告において、示されている指針となります。

「アニマルウェルフェアとは、動物の生活とその死に関わる環境と関連する動物の身体的・心的状態」と定義されています。アニマルウェルフェアについては、家畜を快適な環境下で飼養することにより、家畜のストレスや疾病を減らすことが重要であり、結果として、生産性の向上や安全な畜産物の生産にもつながることから、農林水産省としては、アニマルウェルフェアの考え方を踏まえた家畜の飼養管理の普及に努めています。

引用:農林水産省「アニマルウエルフェア」より

また、「アニマルウエルフェア」の意識が高い欧州の中でも、特に意識が
高い英国では、「アニマルウェルフェア」関連の法整備が進んでいます。
そのため、動物愛護団体の活動も活発である事からも、畜産物の輸出拡大も踏まえ、日本も世界標準の「アニマルウェルフェア」に取り組むことが一段と求められています。

そうした中で、G7にも名を連ねる日本では、約9割が、その言葉を知らず、取り組みも進んでいない事が問題となっています。また、各国によって
「アニマルウエルフェア」について、指針に基づく基準も微妙に異なって
います。

EU加盟国では、前述のEU指令に基づく国内法が整備されている中で、英国
では、EU法の流れとは別に、英国独自のアニマルウェルフェアに関する法律として、2006年アニマルウェルフェア法(Animal Welfare Act 2006)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますがある。同法では、家畜など人間の飼養下にある動物に限らず、野生動物を含めた全ての脊椎動物(人間を除く)を対象に、致傷行為などの各種禁止事項を定めている

引用:JETRO
  「アニマルウェルフェア先進国「英国」と、求められる日本の対応」

どう違うのか?ですが、日本の「動物の愛護および管理に関する法律(いわゆる動物愛護法)」よりも厳格であり、英国では、下記の規定以外にも、
盲導犬や警察犬など業務中の動物(Service Animal)に関して、2006年アニマルウェルフェア法が改正され、施行されています。

・闘牛や闘犬などの動物を戦わせる行為の禁止。
・16歳以下と推定される人への動物の販売の禁止。
・ある動物に関して責任を有する者(一時的か永続的かは問わず)がその
 動物に適切な環境、食事などを与えていないと判断される場合、検査官
 は期限を定めた改善の要求を通知できる。
・検査官は人の飼養下の動物が苦痛を受けていると判断した場合、それら
 の動物の苦痛を軽減するために必要な措置を取ることができる。

引用:JETRO
  「アニマルウェルフェア先進国「英国」と、求められる日本の対応」

こうした基準は日本には、あまり関係ないように思われますが、実際には
今後は消費者の方にも、日本国内の経済的な問題として、深く関わって来る問題です。前述したように、G7にも名を連ねる日本では、約9割が、
「アニマルウエルフェア」の言葉を知らず、取り組みも進んでいないという現状だった。という事ですが、では、何故?日本国内は、こうした国際的な取組みが、認知されずらいのでしょうか?


その一因は、取り組みに伴うコストにあった。高齢化した生産者には、
新たな設備投資や人件費などのコストを負うのは、実際のところ難しい
現実があるようです。

引用:KOKOCARA

こうした問題点は、日本の消費者にはあまり知られていないため、行政も
産業界も現状維持のままで良いと思っている事から、消費者も知るきっかけが少ない。という悪循環に陥っているようです。

そんな中、ヨーロッパなどでは一般の消費者にも「アニマルウエルフェア」について、認知が高くなった亊から、消費者が店やレストランに対応を求めたり、多少高くても「アニマルウエルフェア」指針に沿った商品を優先的に購入する消費者も増え、指針に沿って対応された製品が店に出回るようになりました。こうした認知によって、それまで知らなかった消費者も知るようになった亊が好循環となり、「アニマルウエルフェア」に配慮した製品への需要が高まっているそうです。今では、各国で指針に沿い、配慮された畜産動物の認証制度があり、消費者も認証ラベルを見て、肉や卵の商品を選択しているようです。

日本は他国と異なり、安価で高品質な畜産物を提供してきた事、また、
各地方では、古来の飼育方法を守り「アニマルウェルフェア」指針に近い
飼育をしている地域もある事から、あまり重要視されていなかった事、
また、生産者の高齢化と共に、国などからもそうした指針に対する対応に
応じた支援策がなかった事も、知られていない要因のようです。

皆さまは、これはご自身達にとって、あまり関係のない話だと思いますか?実は食に関わる現場だけではなく、人が動物を食用として加工した際に出る原皮を扱う皮革産業は、過渡期にあります。現在、原皮は食用の副産物であり、「アニマルウエルフェア」の指針からは外されてはいますが、
海外のブランドや皮革製品を扱う事業者は、食の認証制度と同じく、厳密な
認証制度を受けている、いないで、取り扱いが厳しくなる問題があります。

・欧州では一般にアニマルウェルフェアへの配慮が要請され、皮革関連
 産業でも無視することができない状況にあるが、基本的には「食肉 の
 副産物」であれば許容されている。
 
・国内の皮革製品メーカーや商社等でもアニマルウェルフェアに関する
 海外の状況は注視されており、サプライチェーンにおけるサステナビ
 リティへの配慮の必要性が高まる中で、今後は皮革メーカーも看過する
 ことはできない状況にある。 

・ EU諸国では畜産業におけるアニマルウェルフェアの対策が進んでいる
 ことを背景に一定程度アニマルウェルフェアに配慮した原皮を調達できる
 状況にある。皮革製造でトレンドとなっている、原皮調達時のトレーサ
 ビリティの確保もアニマルウェルフェア対策として機能している。 

・ 一方、国内産原皮は通常、「食肉の副産物」であるという点は、充足
 されるが、畜産業におけるアニマルウェルフェアの対策の進捗や原皮の
 トレーサビリティの実現可能性の現状から、個々に確認や留意が必要な
 現状にある。

引用:三菱UFJリサーチ&コンサルティング
令和元年度 皮革産業振興対策調査等(海外主要国における皮革関連産業の
サステナビリティ活動等)の動向・対応調査

そうした中、国内では、国際基準の認定制度を取得しているタンナーは
2020年2月現在で1社のみとなっています。また、そんな希少なタンナーが廃業した際、国内の制度では、新たな廃棄処理許可問題の観点から、新しい事業者がタンナーとして起業出来ない事情もあります。


その為、食の「アニマルウエルフェア」の認証制度に関する問題と同じく、国や行政の支援の元、事業者への国際的な基準に準じていくための施策が
必要となってきています。現在、日本の伝統技法を活かした二次加工法や、リサイクル素材・技術、資源の再利用などによって製品に高付加価値を
付け、海外への発信・販促を行っていますが、今後の国際的な流れから
考えていくと、高付加価値だけでは厳しくなって行く可能性が高いと思われます。
特に、アパレル製品は、これまでのように、石油由来の合成繊維の
人工レザーではなく、天然由来の資源を活用した、新しい素材に注目が集まっています。



そうした海外の迅速な動きに対して、日本の悪循環は、皮革製品を取扱う、加工場=縫製職人を抱える事業者の減少について手を打ってきた策があまり進んでおらず、本来、大手企業よりも中小、小規模事業者が国を支えてきた日本国内で、食生活に関わる生産から、消費に至るまでの循環が滞れば、
人材の雇用問題にも繋がっていきます。


大手企業も、終身雇用制度を廃止している中、中小・規模事業者の廃業も増えれば、就労先も減少し、皆さまの安定した暮らしにも影響が出て来る事が考えられるからです。こうした悪循環が現実的になるのは、もう少し先のように感じると思いますが、10年前、海外からのファストファションが台頭した時代から、現在までの流れのスピードを踏まえると、全く異なる流れがあっという間に起こる事は、前述した海外の認証制度の整備内容・対応力の速さからも、見えてくると思います。

エシカル消費や、サスティナブルは確かに、地球環境に負荷をかける程の
生産により、無駄な量を生産してきたという悪循環を正していくべき課題
ではありますが、地球に住まうのは、私達人間も同じです。そうした事からも、単純に、地球環境に優しいからよい素材、良い製品として見ていて本当の意味でのエシカル、サスティナブル、持続可能な社会はありえません。

そうした流れを最もよく理解している海外ほど、自国を守るための認証制度を強化しているようです。また、各国では認証制度を踏まえた対策を行いながら、自国の産業存続と共に環境保護だけではなく、国をも維持するための政策を次々に打ち出しています。フランスでは、国内の専門職人材を守るための施策も講じられています。

現在の日本はどうでしょうか?

日本は本来、他国からも注目されるほど、伝統的な手仕事や細部にまで
拘った他国にない技術と知見、繊細で量産品であっても一定した品質を
保てるほど、高度な技術を持っていました。ですが、そうした純日本製を
創り出せている製品は、現在わずか3%。専門職の技術者は高齢化が進ん
だこともあり、認証制度のための設備投資なども施策はあっても、現実的
には使えない状況が多々あります。

そうした中、設備投資もまなならない中小・小規模事業者が多い日本で、
国際的な認証制度に対抗する方法が、繊細で歴史ある技術による高付加
価値製品であったとしても、それは後、何年続ける事が出来るでしょうか?

そうした際に、皆さまの雇用先も守っていくためには、日本国内の製品を
地産地消として、日本製を日本の方々が購入され守って行く必要があります
海外製品が悪いとか?他国への対抗意識という問題ではなく、現在の日本は
国の政策からしても、中小・小規模事業者を守る施策や制度が遅れている
状況です。そうした中で、高度な技術製品を海外は日本の化学繊維技術と
日本の伝統技法を求めながらも、自国の製品を認証制度で守っています。



これも大切な考え方です。日本はこうした捉え方で、自国を守りながら
他国に発信する力が弱いように感じます。そのためにも、皆さまが自国の
地域の製品を、購入されながら地域産業の安定と、皆さまの雇用先を守る
ためにも、各地域産業の継承者が継続して安心、安全な日本製品を届けて
いけるように、コロナ禍が落ち着くまでは出来るだけ、地元の製品について
調べてみたり、購入され、職人の方々が創り出す、ぬくもりのある製品の良さを改めて発信してみて下さい。

海外が今注目している天然由来の素材や、人工レザーの元は、天然素材の
皮革と同じ考え方です。天然資源を食した後や、加工した後に出る資源を
大切に活用し、新たな素材を生み出す。それは、人が食用として加工した
牛の皮を無駄なく、皮から革製品へと変え、新たな製品へと加工するのと
同じ循環です。又、そうした天然素材は破棄する際も、土に還り循環される年数は石油由来製品よりも早く、新たな土壌を創り出す土台にもなります。


そうした考え方として、天然素材は国内製品。国内製品を国内の地で消費し
長く愛用しながら、自然な年月で循環されれば、各国が躍起になっている
認証制度以上の効果が、10年後には見えてくるのではないでしょうか?



そうした観点からも、動物愛護「アニマルウエルフェア」という考え方も
また、動物を家畜し、食してきた歴史は長く、自然な循環で食され、食した
後に出る皮をも大切にしてきた、人、本来の正しい文化を再認識するための
制度として、日本でも考えて行く必要があるように思います。


合成繊維04

そして、ファションの世界でも、日本の美しい四季を楽しむように、季節に
応じた装いや、自然循環を踏まえた日本らしい文化についても、改めて考えてみませんか?そうする事で、本当に、ご自身にあった装いや自分らしさが
見えてきます。

本革09


今日は、各地域産業で頑張っている方々をご紹介致します。こうした方々の集いに参加されるのも、また、日本らしい文化を再発見できる良い機会になると思いますので、お時間が許せば、覗いてみて下さい


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