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川崎ゆきお超短編小説 コレクション 5

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2021年12月の記事一覧

手を抜く

手を抜く



 手を抜く。これは入れていたのだろう。指ではなく、手。手首まで、あるいは腕まで入っていたのだろうか。
 指だけなら小手先。手の先は指なので、小手先の芸は指芸。しかし、小さな手と書くので、一寸だけの芸だろう。
 では、手を何処に入れていたのか、突っ込んでいたのか。それは物事だろう。
 手は抜くものの、本当に抜いているわけではない。少し抜くだけで、全部ではない。そうでないと事柄などを処理できない。

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潜伏先

潜伏先



 篠原村から西へ少し上ったところに、船越村がある。方角的には北ではなく、坂の続く山沿いを上ったところだ。この村だけがぽつりとあり、その先は山の腹にぶつかり、道はあるが山を越えないと、もう里はない。
 船越村そのものが中腹に近いところにある。そこだけが台のようになっており、田畑もある。一番近いのが篠原村で、船越村の入口になっている。篠原村を含む西の郷には他にも村々があり、土地は肥えており、それな

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