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川崎ゆきお超短編小説 コレクション 5

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2017年12月の記事一覧

目目目目目玉

目目目目目玉



 下坂はパソコンを使って部屋の中でできる仕事を細々と続けている。効率を上げるためにはもっと速いマシーンやメモリを増やせばいいのだが、そんなゆとりはない。個人事業主なのでこれは備品。必要経費のようなもので、仕事のためのもの。しかし家電量販店の一番安いのを使っている。効率を上げても、それほど仕事があるわけでもなく、時間も十分あるので、問題はないのだろう。しかし将来が心配。いつ仕事がなくなるかと不安

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一日一善



 一日一膳では茶碗に一杯なので腹が減るが、佐々木は一日一善を続けていた。しかし、よいことをしているはずだが、そうでないことも多くあり、また気付いていないが、逆に悪いことや、悪い結果へと導いていることもある。
 人が道を渡ろうとしていると、さっと車を止め、さあ、どうぞと合図するのはいいが、対抗車線から車が来ていると、これは事故になる。
 止まってくれた車のためにも、渡ろうとする。せっかくの善意を

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招かざる客

招かざる客



 暮れの押し迫った頃、貧乏神がやってきた。招かざる客だが、他に客はいない。本村は友達がいないので、客も来ない。年賀状は一通だけ来る。郵便局からだ。これは触れば分かる。薄い。
「今年はどうですかな」
「何を聞きに来た」
「今年は越せそうかと聞いておる」
「君が来なければ越せる」
「ほう、それは何より、それじゃわしの出番がない」
「だから、君が来るから越せないのだ。来ただけで、もう駄目だ。越せそう

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