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コマを順番に読んで物語を追う少年漫画と、心象と風景を味わう描写が多い少女漫画

※本記事はMANZEMi_pod(@MANZEMI_bot)の2018年8月頃のツイートをまとめたものです。

◉女性作家は「本当に面白い漫画」は描けない? 女性マンガ家がある男性編集に言われた言葉が話題に → 羽海野チカ先生の反応がこちらです – ロケットニュース24

 各方面で話題になっていますが、清少納言や紫式部の昔から、優れた女性作家は幾らでもいますからね。

 なぜこの編集者がこういう発想になったのか、男尊女卑以外にも原因がありそうです。

 男性が少女漫画を読んだとき良くある反応で「どの順番で読んでいいのか解らないコマ割り」という問題があります。
 少女漫画のコマ割りはたぶんにコラージュ的でアリ、順番に読むより全体を味わうモノという側面が。

 コマを順番に読んで物語を追う少年漫画に比較して、少女漫画では心象と風景を味わう描写が多いです。
 心象と風景、それを表現するのに優れた手段は、詩です。和歌や俳句も詩の一種ですが、起承転結の展開がある物語とは、微妙に味わい方が異なります。
 詩はロジックではなく、感覚的です。

 作品タイトルになった「ちはやふる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」という和歌があります。コレなどは正に風景の描写。
 頭の中に浮かぶ竜田川や真っ赤な紅葉の落ち葉や、それが流れる状況の生み出す心象を漫画の形式で表現すると、コラージュ的な少女漫画の表現になります。

 そもそも、男性と女性では、得意分野が異なります。
 あるアメリカの大学の調査で、曖昧な表情をした人物の本当の気持ちを見抜くという点で、女性は男性より高いスコアを出したそうです。
 女の勘などと言われますが、ちょっとした表情や声の調子、仕草で夫の浮気を見抜く女性は、普通に多いです。

 逆に「町内で知らぬは亭主 ばかりなり」なんて江戸川柳が残るように、男性は奥さんの浮気に鈍感だったりします。
 なぜこんな違いが生まれたのでしょう?
 人類の先祖がアフリカで生まれた頃、男が狩りに出掛けているとき、女性や子供、老人は集まって洞窟などに隠れていたとされます。

 そういう距離感が近い場では、相手の感情を読み取り、真意をくみ取る能力が重要です。
 逆に男性は、草原で動いた影が獲物なのか危険な肉食獣なのか、瞬時に見分ける能力が要求されます。
 結果、少女漫画は細やかな内面の変化を追う作品が好まれ、少年漫画ではアクションのある作品が好まれることに。

 良い悪いではなく、これは男女の得意分野の差ですから。
 でも、そういう差があるということが解らない男性編集者は、少女漫画の細やかな感情の変化と内面の揺れが、理解できません。
 理解できない=つまらない・劣っている、という思考の飛躍が生まれる原因が、ココにあります。

 心象と風景を解する詩心があれば、少女漫画のそういう優れた内面描写が理解できるのですが。
 実際、そこを理解して、内面描写をやるためには、少女漫画家に転向するしかないと、少女漫画を描いてみた巨匠がいます。
 赤塚不二夫先生や横山光輝先生ではありません。
 さいとう・たかを先生です。

 劇画を切り開いたさいとう・たかを先生ですが、男性誌は動きと展開が重視されるため、充分に内面描写ができないという問題点も、見抜いておられた。
 優れたアクションの描き手であるが故に、その限界と少女漫画の可能性にも気づいておられたのでしょう。
 残念ながら、2作品で撤退されたそうですが。

 少年漫画を描く女性漫画家や、少女漫画を描く男性漫画家は昔からいて、両方を横断する作家も多いです。
 雑誌の読者層によって、受ける漫画に差はあります。
 ですが、少なくとも編集者には自分の感性を絶対化せず、自分の得意と不得意を自覚して、作家の芽を潰さないよう、願わずにはおれません。

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