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いよいよカンヌ2021 チタニウム部門ショートリスト通過20作 一挙紹介①

いよいよ1年のブランクを経て、カンヌライオンズ2021が21日に開幕します。残念ながら全てオンラインでの開催となりますが、昨年の中止を経た2年分のエントリー作を審査する内容の濃いものとなることが期待されます。

開催に先がけ、チタニウム部門のショートリスト通過の20作がすでに公開になっています。チタニウム部門は、カテゴリーの垣根を超え、広告やクリエイティビティの未来を切り拓く重要なアイデアに与えられる賞で、最も名誉があるとも言われています。この中から今年の顔となるものが出てくる可能性も高く、その20作を一挙にご紹介します(これまでに取り上げたものは以前の記事を転記しています)。

IKEA "Buy With Your Time"

世界各国のIKEAは総じて郊外にある。家から来店までにかかる無駄な時間を何か有効なものに換えられないか?ということで、顧客データやGPSと連動、来店までにかかった時間を商品価格に換算(それぞれの国の平均時給をもとに計算)して買物ができるようにしたプロモーション。


Diesel "Enjoy Before Returning"

オンラインショッピングで買われる衣類の40%が返品されているという事実(着てすぐ返す、という意味でwardrobingという新語まで生まれている)に、ファッション業界は頭を悩ませている。そうした現象に、ディーゼルらしい皮肉も込め、ファッションウィーク期間中、タグを付けたままであればいくら楽しんでもらっても返品可能と返品規約(Return policy)を変更し、話題化に成功。セールスは24%アップ、返品率はなぜか9%ダウンするという結果も出た。


Burger King "The Moldy Whopper"

アメリカのバーガーキングのキャンペーン。自社製品に保存料等の人工添加物(artificial ingredients)を使うことを止めたことを告知するため、看板商品であるワッパーを35日間に渡って微速度撮影、保存料が入っていないことを証明するカビのはえた(Moldy)ワッパーをキービジュアルとしてムービーやOOHに展開し、話題となった。広告を見た人の88%が好意的に受け止めたそうで、品質イメージが26%アップ、売上も14%上昇した。84億というとてつもないインプレッション数を獲得した。

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Burger King "Stevenage Challenge"

同じくバーガーキングのヨーロッパ向けキャンペーン。Stevenageは、イングランド4部リーグの最下位に甘んじるほとんど知られていないサッカーチーム。サッカーゲームFIFA20にこのチームが登録されていることに目をつけたバーガーキングはゼッケンスポンサーに。ゲーム内では、メッシやネイマールなど名だたる選手を使ってチームを組めるモード(Career Mode)があり、ゲーマーたちがStevenageでプレイしてゴールを決めたシーンをSNSでシェアする度にワッパーを無料でプレゼントすると告知。25,000以上のゴールがシェアされ、Stevenageは一番プレイされたチームになった。


beats by dr.dre "You Love Me"

「あなたはブラックミュージックやファッションやアスリートが好き。でも、私のことは好き?」。警官の黒人暴行事件や人種差別運動が加熱する中、その本質的問題を問いかけるムービー。大坂なおみやレーサーのダレル・ウォレスJr、アクティビストのジャナヤ・カーン、ラッパーのリル・ベイビーなどが出演している。ナレーションは、ラッパーのTobe Nwigwe。演出は、ビヨンセのMV等で有名な女性ディレクターのMelina Matsoukas。鮮やかなコピーは、NYのインディペンデント系エージェンシーTranslationの制作。


Warner Music Group "Saylists"

子供たちの言語障害の治療(Speech Therapy)に用いられる復唱用の教材は、とても退屈なもので長続きしないものだった。そこで、ワーナーミュージックはApple Musicと協力し、そのアーカイブにある7000万曲のポピュラー音楽からアルゴリズムによって復唱教材を自動制作できるツールを開発、子供たちが飽きずにできる復唱教材へと進化させた。


Nike "You Can't Stop Sport"

突如巻き起こったコロナの世界的蔓延は、人々からスポーツしたり観戦したりする楽しみを奪った。そんな中、人々を勇気づけるためにNikeが世界にメッセージを放った3本のムービーキャンペーン。Play for the world(家の中でトレーニングすることで世界を救おう)。Never too far down to come back(我々は過去どんな困難があっても立ち上がってきた)。Nothing can stop what we can do together(団結すれば何ものも我々を止めることはできない)。新たな撮影が困難な中、既存の素材を使って見事なクオリティ高い映像を作り上げた。


Regent Park School of Music "Parkscapes"

カナダ・オンタリオ州は音楽学校への補助金を半額にカット、それによりトロントのリージェントパーク音楽学校は存続の危機に陥った。そこで、トロント出身のグラミー賞音楽プロデューサーFrank Dukesに曲提供を呼びかけ、生徒たちが演奏した曲をアルバム「Parkscapes」として発売。テイラー・スウィフトがその曲をアルバムに採用するなど多くの使用料が得られ、学校の運営費に還元、政府の補助金に頼らない方法を確立した。

Match Group "Swipe Night"

マッチングアプリのTinderの施策。日曜夜、プラットフォーム上でオリジナルドラマ"Swipe Night"をオンエア。ドラマは進行中にいくつかの2択が現れるインタラクティブ型ストーリーで、swipe機能を使いながら進めていく。8分のストーリーは2,000もに枝分かれし、同じような選択をした人がアプリ上に現れ、マッチングが楽しめる。マッチング率は、26%上がったそう。


Michelob Ultra "Contract for Change"

食品のオーガニック化が進む中、ビール原料である大麦のオーガニック率は1%以下。生産農家たちにとって、畑のオーガニック化には少なくとも3年かかり、先行投資ができないことがネックになっている。そこで、オーガニックビールの代表ブランドであるMichelob Ultra Pure Goldは、全米の大麦生産農家に3年間の買取契約を結ぶと呼びかけ、10万エーカー(400平方キロ)の畑がオーガニックに移行、潤沢な原料供給により2023年には25%の売上増が見込まれるそう。

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次回は、後半の10作をお届けします。

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