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忘れられなくて好きという感覚

感覚的な話がしたい。どいつもこいつも、情報を話したがる。感じたことを共有したい。情報じゃなく。体験したことて対話したい。ネット検索し続けて、それが自分の知識だと勘違いしてる人が本当に多い。経験を話したい。経験で対話して、新しいことを生みたい。

ナガオカケンメイ氏

深夜0時。遠く離れた街に住む、学生時代の先輩に電話をかけた。

目に見えない感覚の部分で通じ合える人。
そんな話がしたくて、朝方近くまで4時間も付き合ってもらった。

シェアハウスに住んでいるので、ベランダで電話をした。
猛暑の日中とは思えないほど、夜風が当たって心地よい。

先輩とはお酒を飲まなくても、いろんな話ができる。
何も知らなくても、わかりやすく教えてくれる。

先輩の方言なのか、口調が激しいのかよくわからないけど、
たまに、お笑い芸人のようなツッコミが入るので、笑い転げてしまう。

「○○してっぞっ!」なんて言うので、
「今、人差し指立てました?」と、思わず聞いてしまった。

そんな先輩は、フォークソングに絶大なる愛を持っていて、
フォークの生き方や哲学に共鳴している。

私の暗い感情を打ち明けたとき、
誰かに喩えて話し始める。

吉田拓郎が陽なら、井上陽水は隠だと。

「先輩はどちらが好きなんですか?」と尋ねると、
「私はどっちも好きだよ」と言った。

先輩のそんな考え方が、とても素敵だと思った。
好きを追求したからこそ、よく分かる対極の良さということなのか。

朝5時の空の美しさよ


私は、暗い絵を描く画家の作品が好きで、
知っている中で、全員自ら命を落としている。

好みだから好き、という言葉というより、
忘れられないから好き、のほうが近い感覚だ。

誰かに「好きな画家は?」と訊かれたとき、
この画家を挙げるのに対して、少なからず躊躇うかもしれない。

でも、話がわかる人には好きな画家だと胸を張って言いたくなる。

ハッピーな絵や色使いで描く画家なんて、
歩いていけばすぐ見つけることができる。
商業的であり、共感者も多いから、話も円滑に進むだろう。

だからこそ、「好きな画家は?」という問いには、今でもすぐに答えられずにいる。

持論だが、共通して思うのは、
心が透明で、あまりにも純粋すぎること。
強く生きようとするがあまりに
自らの手で世界を汚してしまっていること。
理想のために、自分で自分を追い込むしかないのだ。

そういう人が表現した作品に出会うと、私は心が揺さぶられる。

作者が亡くなっても、作品が残り続け、
世に知らされ、誰かの目に止まる機会があることには理由がある。

「暗い」「嫌い」「気持ち悪い」という感情を抱くのは自然なこと。
でもそこで終わらないのが、私が思う芸術鑑賞の醍醐味だ。


さらに「好きな音楽は?」と訊かれたとする。

それも画家のときと似ていて、
その時の状況や相手に合わせて答えることが多い。

もちろん、答える曲は好きであることは大前提だけど。

私の好きを知ってほしいと思ったり、
この人ならわかってくれるという望みがあれば、
暗い曲を言いたくなってしまうだろう。

でも、音楽と絵の ”暗い” の表現は違う。
音楽のほうが、暗いけど心に寄り添う暖かみや光のようなものが伝わってきやすい。

私の好きな、サカナクションから選曲。


夜から朝になる微睡。
そんな時間帯に聴くサカナクションが好き。

最近、やっと出会えて購入できた本。

視覚と聴覚で感じとる、暗い表現を味わうのが好き。

根底にある明度の低い部分が浮かび上がるとき、私をいつも救ってくれるのは、芸術という存在だ。

頭で切り替えて、現実逃避できる手段もあるけど、
そのときの感情を味わうことも必要だと思っている。

ここ数年の私は、書店で手に取る本のジャンルを自ら制限していたことに気付く。

社会で生きる考え方や相手への伝え方、
結論から先に述べて言い切るようなビジネス本ばかりを求めていた。

それは、今の自分に足りない知識だったから。
自分を変えたいという一心が強まっていた時期だったから。

攻略本ばかり読んでも、わかった気になるだけだ。
実際に、その通りに動くことは難しい。
その人の経験談を覗き見するまでにしかなれなかった。

感覚的な話がしたい。どいつもこいつも、情報を話したがる。感じたことを共有したい。情報じゃなく。体験したことて対話したい。ネット検索し続けて、それが自分の知識だと勘違いしてる人が本当に多い。経験を話したい。経験で対話して、新しいことを生みたい。

ナガオカケンメイ氏

ナガオカケンメイ氏の言葉を、もう一度。

こんな話ができる人がいてくれるのなら、私は生きていける。

先輩と語り合った夜のおかげで、
今の人生、とても充実している。

私は恵まれている。

先輩の話を綴ったnoteも、ぜひ。

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