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AFCアジアカップ2023【歴代最強のアジアチャンピオンへ】

AFCアジアカップとは文字通りアジア地区のナショナルチームのチャンピオンを決めるアジア最高峰の国際大会。そんなアジア諸国の威信をかけた大会が日本時間にして1月13日に開幕。

歴代最多の優勝回数を誇る我らが日本代表は、9連勝中という”史上最強”チームで、14日20:30に初戦のベトナム戦に4-2で快勝。

優勝を期待される今大会をより楽しむため、過去のアジアカップにおける日本代表の成績、今大会の注目点を紹介したい。



1992年広島大会(優勝)

日本代表のアジアカップ初出場は1988年のカタール大会。しかし、アマチュア選手主体だったこの時代の日本サッカー界では、代表戦より国内リーグが優先され、学生を中心に構成された実質”Bチーム”での出場となった。

つまり、サッカー日本代表”Aチーム”としての初出場は、開催国として出場した1992年広島大会となる。そして初の外国人監督ハンス・オフトが率いた日本代表は、この大会をもってアジアの舞台で頭角を現す。

グループステージでは、負ければ敗退の状況で当時のアジアサッカーの盟主・イランとの3戦目を戦い、三浦知良の決勝点で勝利。ノックアウトステージ初戦では中国を相手に3-2の打ち合いを制する(得点者は福田正博、北澤豪、中山雅史)。

決勝戦では広島広域公園陸上競技場(現・エディオンスタジアム広島)に集まった6万人の大観衆のもと、高木琢也のボレーシュートでサウジアラビアを下し見事、初優勝を飾る。Jリーグ開幕の前年、まさに日本サッカーの夜明けである。

この大会のMVPはキング・三浦知良が受賞したが、そのフットボールIQと献身性をもって、有識者の間で『影のMVP』と評されたのが、現在の日本代表監督・森保一であった。

1992年大会の森保一


1996年UAE大会(ベスト8)

加茂周監督が率いたこの大会のメンバー表には、94年にドーハの悲劇を経験した主力に加え、名波浩、前園真聖、城彰二ら若手選手が名を連ねた。
グループステージは3連勝で突破を決め連覇の期待が膨らんだが、ノックアウトステージ初戦のクウェート戦に0-2で敗北。

この大会は西アジア、中東地区での戦いの難しさが露呈したと言われている。移動、高温多湿の気候、食事、水、レフェリング。この早期敗退をきっかけに、様々な環境面のサポートが改善され、翌年97年の”ジョホールバルの歓喜”や、2000年大会の優勝に繋がっていく事となる。

前園真聖


2000年レバノン大会(優勝)

フィリップ・トルシエが組織し、1998年フランスワールドカップと2000年シドニー五輪のメンバーが融合したこの大会の日本代表は『アジアカップ史上最強』と評される程の強さで大会を制した。

初戦で前回王者サウジアラビアを4-1で下したのを皮切りに、続くウズベキスタンからは8得点を奪い大勝。ノックアウトステージ初戦ではイラクを4-1で下し、サウジアラビアとの決勝戦は中村俊輔のCKに望月重良が合わせて1-0で勝利。前線のタレント達が躍動し6試合で21得点をマークした。しかも中田英寿を欠いて、だ。大会MVPは名波浩が受賞。

中村俊輔、稲本潤一、高原直泰、柳沢敦、明神智和ら、トルシエチルドレンともいえる面々がアジアカップで華々しいデビューを果たし、2年後の日韓ワールドカップに弾みを付けた。

MVP・名波浩


2004年中国大会(優勝)

中国での開催という事もあり”全試合アウェイ”と表現しても過言ではなかった印象的な大会。

アテネオリンピックのオーバーエイジ招集や、怪我での離脱で主力を多く欠く中、遠藤保仁、福西崇史、玉田圭司ら国内組の新戦力が抜群のパフォーマンスでジーコ監督の期待に応え連覇を達成。その中心にいたのは大会MVP・中村俊輔。日韓ワールドカップメンバーから外れた鬱憤を2年越しに晴らすかの様な、アジアの枠を超えたパフォーマンスでチームを引っ張った。

そして何と言っても、準々決勝のヨルダン戦。日本サッカー史に残るPK戦が行われたのがこの大会。中村俊輔、三都主アレサンドロが連続でPKを外し、主将・宮本恒靖がピッチコンディション不良を理由にサイドを変更するよう主審に交渉。その後、川口能活が本当に神が憑依したかのようにビッグセーブを連発したあのPK戦だ。ああいったイレギュラーな状況が起こるのもアジアカップの魅力と言える。

川口能活


2007年タイ・マレーシア・ベトナム・インドネシア大会(4位)

日本サッカーに新風を吹き込んだイビチャ・オシムが率いたこの大会。オシムジャパンの象徴ともいえる、中村俊輔、中村憲剛、遠藤保仁、鈴木啓太で構成された中盤を幹としたインテリジェントなフットボールをベースに、高原直泰、巻誠一郎の得点力が発揮されグループステージを首位で突破。

準々決勝の相手はアジアサッカー協会に転籍し、初めての出場となったオーストラリア。迎えたPK戦、またしても川口能活の2本のPKストップで準決勝に進出するも、サウジアラビア、韓国に敗れ4位に終わる。

この大会の4か月後オシム監督が脳梗塞で倒れ、監督を辞任。オシム氏の創ったフットボールを唯一見られた国際大会として日本サッカーファンの記憶に残っている。

イビチャ・オシムと中村俊輔


2011年カタール大会(優勝)

1月開催となった事で、アルベルト・ザッケローニ監督就任直後の1月に迎えた大会。南アフリカワールドカップのメンバーをベースに香川真司、吉田麻也を加えた形が基本布陣だったが、大会序盤のグループステージで苦戦を強いられる事となる。

初戦のヨルダン戦。前半終了間際に失点を喫した後、深く守る相手守備陣を切り崩せず、試合終了間際の吉田麻也の劇的ゴールで何とか引き分けに。次戦のシリア戦は疑惑の判定でGK川島永嗣が退場。引き分け濃厚のムードの中、岡崎慎司が獲得したPKを本田圭佑が決め勝利。3試合目のサウジアラビア戦は快勝し、終ってみれば1位通過。苦しい戦いを連続でモノにした事で、チームに勢いが付いた。

準々決勝のカタール戦は89分の伊野波雅彦の逆転弾、準決勝は120分戦ってのPK戦で韓国を破り、決勝のオーストラリア戦も延長戦へ。李忠成の劇的なボレーシュートで4度目の優勝を決めた。大会MVPは本田圭佑が受賞。
薄氷を踏むような試合を幾度と無く勝ち切ったタフなチャンピオンだった。

李忠成の決勝戦のボレーシュート


2015年オーストラリア大会(ベスト8)

ハビエル・アギーレに監督が交代した直後の1月に行われた大会。日本代表はディフェンディングチャンピオンとして恥じない豪華メンバーで連覇を目指した。

選手のクオリティに担保された美しいフットボールで、初戦のパレスチナに4-0で快勝すると、その勢いのまま無失点で3連勝。しかし、ターンオーバーをせずに3試合を戦ったツケが回ったのか、準々決勝のUAE戦は1点を先行される苦しい展開に。終了間際、柴崎岳の同点ゴールで追いつくもPK戦で本田圭佑、香川真司の二枚看板が失敗し敗退。

2000年以降では初となる準々決勝敗退に加え、大会後にアギーレが八百長疑惑で退任。後味の悪い大会となった。

柴崎岳


2019年UAE大会(準優勝)

この大会から参加国枠が16か国から24か国に拡大。
森保一監督就任後最初の国際大会となったこの大会。南野拓実、中島翔哉、堂安律、冨安健洋らのニュースターに期待がかかるも、グループステージから難しい試合が続く。初戦のトルクメニスタン、3戦目のウズベキスタン戦では先制される展開を許し、1点差で辛勝。3連勝でグループステージを突破したものの、内容は褒められた物ではないという論調が強かった。

ノックアウトステージもサウジアラビア戦、ベトナム戦共に1-0で何とか勝利を収める。準決勝のイラン戦こそ3-0で快勝を収めるも、決勝のカタール戦は何も出来ずに1-3で敗北。

決勝戦まで勝ち進んだものの、ロシアワールドカップ直後で高まっていた期待に応えられる内容は見せられなかった。

完敗に終わった決勝戦


2023年カタール大会

そして、間違いなく史上最高の状態で臨む今大会。
前回大会に出場していない東京五輪世代の台頭、監督交代が起こらなかった事によるチーム完成度の高さ、カタールの地を経験している選手の人数、クラブでのコンディション、層の厚み。優勝に近づく要因が、多すぎるほどに揃っている。

三苫薫、冨安健洋の怪我の状態は気になるが、ノックアウトステージまでには間に合うという算段があるから招集しているはず。

なので、期待を込めて言おう。
『最低でも優勝』

今の日本代表はこんな極端な台詞が出てしまう程のチームだ。欧州式のモダンなフットボールで、きっとアジア王者を奪還してくれるだろう。


そんな期待とは裏腹にライバル達が強力なのも間違いない。
まずは開催国カタール。一昨年のワールドカップでは初戦の敗戦でビジョンが定まらず、”史上最弱の開催国”という屈辱的なラベルを張られてしまった。このアジアカップでは挽回を期しているはずで、日本代表のライバル筆頭といっていい。特に中東No1プレイヤーの一人、アクラム・アフィーフ。絶対的なストライカー、アルモエズ・アリの得点力は健在。この開催国を倒さないと優勝は無い。

アクラム・アフィーフ(アル・サッド)

そして、韓国。選手のネームバリューの高さだけで言えば今大会No1。今季のトッテナムを技術的にも精神的にも支えるアジア1のアタッカー、ソン・フンミンはもちろん、ファン・ヒチャン、イ・ガンインも今シーズン絶好調。この強力な『個』を組織で守り切らなければ簡単に勝利を奪われる。最終ラインにはバイエルンでも欠かせない存在のキム・ミンジェ。カタールの地で名を挙げたチョ・ギュソンや、セルティックで古橋とポジションを争うオ・ヒョンギュといったニュースター候補にも要注意だ。

ファン・ヒチャン(ウルヴァー・ハンプトン/ENG)

そして、昨年夏にロベルト・マンチーニ監督が電撃就任したサウジアラビア。元来フィジカル面でアジアでは優位に立っていたサウジアラビアに、EURO2020でイタリア代表をヨーロッパチャンピオンに導いた名将のエッセンスがどのように注入されるのか。食い合わせの悪さを露呈する可能性も大いにあるが、今大会最注目のチームであることは間違いない。一昨年のワールドカップでアルゼンチンからゴールを奪ったアル・ドサリは大会トップクラスのアタッカーとして注目されている。

ロベルト・マンチーニ

まとめ

ともかく優勝が至上命題であることは間違いないが、まずはグループステージを手堅く突破する所から。ベトナム戦も終わっても見れば快勝だったが、一時はリードを奪われた。5バックの丁寧な守備と、素早いカウンターは上質で、ベトナムのようにアジア全体のレベルは間違いなく上がっている。

しかし、そんな実力伯仲のアジアの舞台だからこそ、日本代表には他の追随を許さない強さを見せつけてほしい。

”アジアの戦い”が難しいのは重々承知。だが、そんな常識で語っていい程、今の日本代表は小さなスケールでフットボールをプレーしていない。

見せてくれ。
”ワールドカップ優勝”という合言葉が、はっきりとした輪郭を帯びるような、そんな強さを。

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