~7.16 大阪ダービー観戦記~

7月16日(土)ガンバ大阪×セレッソ大阪、伝統の大阪ダービー。
上位争いに食らいつきたいセレッソ大阪、一刻も早く降格争いから脱したいガンバ大阪。リーグ戦の約3分の2を消化し、後半戦に向けてチームのムードにも関わってくる重要な一戦を現地観戦した。


決戦の地・吹田スタジアムに向かう前に、千里中央駅構内のコストパフォーマンス抜群の居酒屋「明石八」で景気付けの昼呑み。

ガンバ大阪のユニフォームを着たサポーターも数組座っており、活気のある店内からは、ガンバの選手名やサッカー用語がちらほら聞こえる。自然とペースが上がり5杯も飲んでしまった。しかし、会計は2000円弱。恐るべし激安居酒屋「明石八」。

店を出て、モノレールに乗り込み、16:30に吹田スタジアムに到着。
ここで同期のにんげんっていいな・松井と合流。彼は高槻市民で、幼い頃からサッカー少年でガンバ大阪ファンだ。松井は、地元のスター・倉田秋を呼び捨てする事が出来ず、終始「倉田くん」と呼んでいた。

キッチンカーが立ち並ぶメインゲート前は青黒のユニフォーム姿で大賑わい。各ステージではイベントが行われており、大一番へ向けて来場者のテンションをジワジワと上げてくれる。

18時に選手たちがピッチに現れ、練習が開始。目が行くのはやはり、東口順昭とキム・ジンヒョンの両守護神。練習を見るとより、安定感とセービング技術が良く分かる。まさしくボールが手に吸い付き、細かいステップから爆発的なジャンプを披露する。日韓のトップゴールキーパーの対決となれば、正確で高水準なフィニッシュが必要とされるハイレベルな攻防が予想され、更に期待感が高まる。

選手がドレッシングルームに戻ると、ピッチ中央に数台の装置が設置された。スタジアムDJが、ホーム・ガンバ大阪のスターティングメンバーを叫ぶ度に、数発の花火が派手に打ち上げられる。大一番・夏の大阪ダービーに相応しい、豪華な演出。上部に漂う煙が霧のように見え、スタジアムの形状も相まって、まるでプレミアリーグやセリエAのゲームの様な雰囲気だった。

両チームの選手が入場し、キックオフ。

ホーム・ガンバ大阪はお馴染みの3-4-2-1のフォーメーション。守備時は5-4-1のブロックを敷き、セレッソ大阪に中央のエリアを使わせない。
トップには今夏、ベルギー・ベールスホットからJリーグに復帰した鈴木武蔵を起用し、ボールを奪うと直ぐにその鈴木武蔵にロングボールを入れるシンプルな戦術。

序盤はこれが大ハマり。少しアバウトなボールも、ベルギーで鍛えられたフィジカルで収め切り、石毛・中村がフォローに入る形でボールを前進させる。

一方のセレッソは4-4-2。センターバック2枚とボランチ鈴木徳真を中心に後方からビルドアップを行なうも、中央のブロックを崩せず低い位置からクロスを入れる時間が続く。
山田、加藤の2トップも鋭い動き出しからチャンスを作ろうとするが、ガンバ大阪は東口を中心に、落ち着いたクロス対応を見せる。

そんな中、前半17分。
石毛のコーナーキックに、ファーサイドから入ってきたクォン・ギョンウォンが頭で合わせ、ガンバ大阪が先制ゴール。J1残留に向けて大勢のサポーターが駆け付けたガンバ大阪のゴール裏は唸りを上げ、応援の太鼓の音もより一層大きくなった。

追い付きたいセレッソ大阪は、引き続き両サイドバックからタイミングの早いクロスで相手のゴールを脅かす。スコアを動かしたくないガンバはやや重心が下がり、セレッソ大阪が相手陣地でボールを握る時間帯が続く。ラスト10分間は常に押し込む展開を作り出すも、ガンバ守備陣の集中力と強度が勝り、ガンバ大阪リードで後半へ。


後半は立ち上がりからセレッソペース。前半に引き続き、GKを含めた最終ラインを高く設定し、前半より少し丁寧にポゼッションしながら11人全員でジリジリと相手陣内に侵入していく。

後半7分。一度、最終ラインまでボールを戻した所で、GKキム・ジンヒョンの縦パスを中央左の大きく空いたスペースで為田が受けると、そのままドリブルで持ち上がり、為田→加藤→為田→山田とワンタッチを織り交ぜたパスワークで見事中央を突破。最後は山田が冷静に流し込み同点。前半からトライしてきたサイド攻撃を布石に、中央からガンバ大阪の強固な要塞を決壊させた。


失点直後の後半9分。ガンバのゴール裏から、大きな歓声が上がった。

復帰したての食野亮太郎がピッチサイドでユニフォーム姿に着替えたのだ。ユース出身の逸材がダービー勝利への期待をその肩に乗せ、パナスタのピッチに帰還。更に、立て続けに片野坂監督が動く。倉田と坂本の投入で前線を活性化し、押し込まれ続けている自陣からの脱出を図る。

ここからはガンバが攻撃に厚く人数をかけながら、積極的な攻撃を見せる。前掛かりになった分、決定機になり得るカウンターを何度も仕掛けられるが、三浦弦太がライン際まで抑えるカバーリングで決定機を幾度も潰し続け、主将として、最終ラインの要として、魂の入ったディフェンスで最後尾から攻撃陣を鼓舞した。

両軍集中力が切れず、このまま1-1で終わるかと思われた、後半45分。
右サイド深い位置まで攻め込んだガンバだったが、セレッソ大阪・舩木がボールを奪取。パトリッキがボールを受け自陣からドリブルを開始すると、メンデスとのパス交換でダワン・斉藤を躱し、独走状態に。北野と上門が最終ラインを牽制しガンバの最終ラインが下がったことで広大なスペースが生まれ、余裕たっぷりで打ったパトリッキのミドルシュートがゴールネットを揺らした。

極限状態でゴラッソが飛び出し、死闘に決着。


これで、セレッソ大阪は3位と勝ち点差2の5位。昨年夏から始まった小菊体制だが、その強さからは円熟味すら感じる。

11人の巧みなポジション取りでボールを保持し、ボールを奪われても連動した切り替えの速さで即刻奪い返す。更に、清武、原川、タガートのセンターラインの主力を怪我で欠きながらも、メンデス、パトリッキといったスピードとパワーに優れた外国人選手をジョーカーとして起用できる層の厚さを見せている。

この試合でも、原川に代わり出番を得た鈴木徳真が終始ボールを動かしながら、毎熊・為田の両サイドハーフが内側のポジションでボールを受けたり、奥埜がゴール前まで顔を出したりと、流動的な攻撃で相手のブロックを混乱させた。


一方、ガンバ大阪はシーズン3連敗。降格圏に転落し、昨シーズンに続き厳しい戦いが続く事となった。しかし、この夏に補強した新戦力を含めたスカッドは申し分なく、残留への戦いにきっと勝利できるはず。その可能性の一端を、今回のダービーで見せてくれた。

2試合とも現地観戦をして感じたのは、大阪ダービーは歴史・熱量・スタジアムのクオリティ、全てが揃った日本一のダービーの1つだということ。この大阪ダービーを中心として、Jリーグというムーブメントが広がる可能性も大いにあるだろう。

さながらミラノダービーやマンチェスターダービーのように、世界に誇れるダービーになる未来を、私は期待したい。

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