青黒の苦境と希望【ガンバ大阪】

J1リーグがいよいよ佳境を迎えている。

クラブによって試合の消化数は異なるが、おおよそ2~3試合を残すのみとなった。

横浜Fマリノスと川崎フロンターレの優勝争い、それ以下のACL出場権争いはもちろん、今シーズン特に苛烈を極めているが残留争いだ。

12位から17位までが勝ち点差5以内にひしめく大混戦で、現在最下位に沈んでいるジュビロ磐田も降格圏内では最も消化試合数が少ないという、どう転んでもおかしくない展開となっている。

そこに巻き込まれてしまっているチームの1つが、ガンバ大阪だ。
西野朗氏、長谷川健太氏、両監督の下、2度の黄金時代を築いた西の名門。もし降格してしまえば、2013シーズン以来、2度目のJ2での戦いになる。

クラブ創立30周年、新監督の招聘で再起を計ったガンバ大阪がどうして今の様な状況に陥ってしまったのか。そして、再び黄金時代を築くためにも、意地の残留を果たすことはできるのか。


☆準備万端

ガンバ大阪は2022シーズン開幕前、クラブ創立30周年を記念し、チームロゴを一新。更に、ホーム戦当日には複数のイベントを打ち出し、ピッチ外でも大きな話題を提供し続けた。

現場でもクラブの意気込みを感じる大きな変化があった。2014年、国内3冠を達成した際に長谷川健太監督の右腕としてヘッドコーチを務めた、片野坂知宏氏が監督に就任。日本きっての戦術家がこのタイミングで堂々凱旋。

戦力的にも、ピークこそ過ぎているかもしれないが宇佐美、東口、三浦、昌子ら元代表クラスと、若手・中堅の成長で、勝利を手にするには申し分ないメンバーだ。

リーグ戦上位進出、タイトル獲得に向け万全の環境が整ったかに見えたが、残り2試合で16位と、想像もしていなかったシーズンを迎えている。


思い返すと、今シーズンのガンバ大阪は序盤から何か悪い物に取り憑かれたかのような戦いを強いられていた。
開幕前には絶対的守護神のGK・東口順昭が怪我により長期離脱。その間ゴールを守った石川慧、一森純らも好プレーを見せていたが、守備の要の離脱は大きな影を落とした。

更に、開幕戦の鹿島アントラーズ戦は前半38分という早い時間に、鈴木優磨との小競り合いでパトリックが一発退場し、ホームで1-3の敗戦。

そして、極め付けは第3節の川崎フロンターレ戦。後半12分に宇佐美貴史がアキレス腱断裂の大怪我で途中交代。試合自体も2-1でリードして迎えた後半50分、ゴールキーパーが隙を突かれボールロストし、痛恨の失点。ホームでまたも勝利を逃す。

5月にはシーズン初の連勝を果たすも、アウェイに乗り込んだ大阪ダービーでセレッソ大阪に1-3の完敗。やっとの想いで得た流れを、ライバルクラブに完璧に止められる。
このダービーでは、レアンドロ・ペレイラと昌子源が試合中に揉める一幕もあり、チーム状況を表す場面として大きな話題となってしまった。

その後も流れを掴めず、第25節清水戦で敗北しリーグ6戦勝利無しの状況になった所で、遂に片野坂監督が解任された。監督交代後もやはり大きな流れは掴めず、絶望的では無いにせよ降格の候補として数えられているのが現状だ。

残り2節。相手は鹿島、そしてこちらも絶対に負けられない磐田、と難しい相手を残すが、残留の為にはこの2試合何としても勝つしかない。


とはいえ、勝負のかかった最終盤戦に差し掛かり、ポジティブな要素も出てきた。

まずは、パトリックの復調。今シーズンはなかなか定位置を掴めずにいたが、松田浩新監督になってからはスタメン起用が続いており、名古屋戦・福岡戦では先制点を奪い、連勝の立役者となった。

次に守備の安定。残留に向けて割り切って守備的なシフトを敷いているせいもあるが、監督交代後7試合中4試合がクリーンシート。東口、三浦を中心に90分間集中したブロックを組み上げられている。

そして、何といっても宇佐美貴史の復帰だ。
10月1日、第31節・柏レイソル戦で、ガンバの象徴が7ヵ月ぶりにパナソニックスタジアム吹田に帰還。試合結果こそ0-0となったが、随所でその”格の違い”を見せ、ここからの戦いに希望の光を差し込んでくれた。


迎えた10月8日。第32節。横浜F・マリノス戦。

一度も負けが許されない状況で、今シーズンの横綱、最大の敵が立ちふさがる。

横浜FMも優勝に向けて勝ち点3を手にしたい緊迫の一戦は、予想通り序盤から横浜FMがボールを保持する展開に。

しかし、前半8分。コーナーキックの折り返しをファン・アラーノが押し込みガンバ大阪が先制。少ないチャンスをモノにするプラン通り、最高のスタートを切った。

ここからガンバの長い長い決死の守備の時間が始まる。想定内の展開だったのだろう、11人全員が自陣に入り、4-4-2のブロックラインで人を離さず、中央をガッチリ固めた。

横浜FMも多くの選手がスペースを突き、得意の流動性の高い攻撃で攻め込むが、最後の壁が崩せない。

横浜FMの攻撃をガンバ大阪が跳ね返し続ける、ガンバサイドからすれば永遠とも思える時間が続く中、後半34分。コーナーキックのこぼれ球を山なりでゴール前に送ると、DFの裏でボールに反応したパトリックが、試合を決定付ける追加点を決める。値千金の活躍を、またしても彼がやってのけた。

横浜FMも最後まで猛攻を続けるが、このままスコアは動かず試合終了。ガンバが首位・横浜FMから勝ち点3をもぎ取った。

試合後のスタッツを見てみると、ボール支配率・69%対31%。シュート数・25対8。コーナーキック・16対3。全て横浜FMが大きく上回っているが、この数字こそがガンバ大阪の残留への執念を表している。


次節は3週間空けての、磐田戦。激闘の疲れも癒えるだろう。残留に向けての最大の山場をチーム全体で切り抜け、一体感・モチベーションも申し分無いだろう。

青黒の戦士たちは、フル装備で運命の戦いに挑む。

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