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モダンスタイルと中央エリアの支配者【アルビレックス新潟】

2023年J1リーグが開幕し、ここまで3節が終了。前年度上位のクラブが上手く勝ち点を拾えない中、J2からの昇格組クラブが思わず目を奪われる魅力的なフットボールを演じている。
6年ぶりのJ1の戦いに挑む、アルビレックス新潟だ。

昇格初年度ながらクオリティを落とさない、オレンジのシャツが織り成すゲームに、是非注目してもらいたい。

「モダンで流麗なパスサッカー」アルビレックス新潟

アルビレックス新潟は昨年、J2リーグで25勝9分8敗・総得点73という圧倒的な数字を記録しリーグ優勝。ベストイレブンに6人選出されるなど、完璧なシーズンを過ごしJ1昇格を果たした。

特徴は何といってもその攻撃的なスタイル。現FC東京監督アルベル・プッチ氏が礎を築き、コーチから昇格した松橋正蔵監督が完成させたポゼッションの高い攻撃的フットボールスタイルは、美しく、そして強力。

とはいえ、J2でいくらボールと主導権を握るフットボールを志向しても、J1の舞台では安全策に流れていってしまう例は多く、新潟もそうなるのではという見方が強かった。

そうして迎えた、アウェイでのセレッソ大阪との開幕戦。
昨年リーグ5位という結果を残したセレッソのハイプレスをどの様にいなすかが注目されたが、最終ラインからのビルドアップでスイスイとセレッソのプレスを躱し、完全に無効化。
ボール保持率59%・パス本数725(成功率87.9%)という数字が表す通り、押し込まれながらもボールを簡単に返上しないスタイルを貫いて、2-2のドローで勝ち点1を手にした。

そして、第2節のサンフレッチェ広島戦。
リーグ随一のハイプレスを武器に昨季ルヴァンカップを制した強豪を相手に、積み上げたスタイルの真価を問われる一戦を迎えた。


~中央エリアの支配者~ 伊藤涼太郎

この試合、サンフレッチェ広島は開始直後からフルスロットルでプレスを仕掛ける。開幕直後という事もあり、若干連動性に欠けるような印象もあったが、その推進力は昨年に引き続き間違いなく脅威だった。

しかし、新潟は繋ぐ。とにかく繋ぐ。
GK小島亨介、DF千葉和彦、トーマス・デン、藤原奏哉、堀米悠斗に加え、ボランチに入った秋山裕紀、高宇洋も絡みながらディフェンシブサードでも細かく繋ぐ。ちょっとやそっとではアバウトに前方に蹴らない。
その技術もさることながら、オフザボールでの細かいポジション修正にその繋ぐ意識が見て取れた。まるでウォーミングアップのロンドのように、ボールを回すのだ。その結果、後方で相手のプレスを回避しサンフレッチェ広島の推進力を空転させた。

もちろん、パスを回すことが目的ではない。その先の攻撃にどう繋げるかが重要になるが、相手の網をかいくぐった先にはアルビレックス新潟が誇るゲームメイカーが現れる。

トップ下のポジションに陣取る、伊藤涼太郎だ。

サイドバックやボランチから伊藤へ鋭い縦パスが入ると新潟の攻撃はスイッチオン。スピードに秀でた両ウイングが一斉にゴールに向かって走り出す。すべての新潟の攻撃は彼を経由して行われるといっても過言ではない。
この日も最終ラインからボールを引き出し太田修介、鈴木考司の得点の起点に。それ以外のシーンでもドリブルで溜めを作りながら、新潟の最大のストロングポイントである左サイドの三戸舜介に、より良い形でボールを配給。
伊藤を中心に実力者揃いの広島守備陣の壁を打ち破り、2-1の勝利で勝ち点3を手にした。

彼の魅力はプレス回避後のオープンなシチュエーションだけで発揮される訳では無い。サイドで手詰まりになれば密集地帯からの脱出口を作り逆サイドに展開するし、狭いアタッキングサードでボールを受ければ抜群のテクニックで刹那のラストパスやシュートを放って見せる。第3節の札幌戦では美しいコントロールと振りの速いシュートで同点ゴールを奪った。

ボールの引き出し・持ち運び・展開力・フィニッシュワークどれをとっても一級品で、その姿はまさに中央エリアの支配者。


アルビレックス新潟は、4-2-3-1をベースとしたパスサッカー、攻撃陣のニュースター、さながらプレミアリーグで旋風を巻き起こすブライトンのようだ。こういったチャレンジングなチームが上位に割って入るとリーグ戦は盛り上がる。

アルビレックス新潟には、明確なゲームモデルと哲学を持って、修羅のJ1をこのまま突き進んで欲しい。

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