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「宙に漂い、果ての果て」

――戦いは終わった。

”彼女”は帰り、私は壊れ。

最期に生まれた、この名もなき”私”の僅かなる自我も誰にも顧みられず宙を漂うのだ。

『…さようなら、我が主。貴女の行く末に幸多からん事を…』

”私”はそう呟いて、スリープモードに移行。

もう目覚めることもないだろう。

ピロロロピボボボ。

…ブゥン。

電力供給を確認、スリープモード解除。

「よーし、電気入っていってるかー」

「うまく行ってますぜ姉御…多分ですけど」

前回の起動から宇宙時間基準で凡そ4302302周期の――これ以上は破損が大きく測定不能。

機体信号、セルフチェック…

「しっかしこんなよくわからないものが宙って転がってるんすかね」

ジェネレーター破損率75%。戦闘モードでの運用不可。

「馬鹿言うな、と言うかアタシだって長年この家業やってるけど初めて見たよ」

頭部バルカン、右、左手ビーム砲、左赤熱型マニピュレーター、腰部追加ブースターすべて使用不可。

背中四門メインブースター、…使用可能なのは右下1のみ。他は全損。

「そのためにわざわざこんな辺鄙なところまで…」

電力供給によりジェネレーター再稼働。以後半永久的に稼働。

出力は凡そ平常時の20%。

『おはようございます、メインシステム、通常モードで起動。』

起動完了。

「うわあ!喋ったぞコイツ!?」「わひゃああ!?」

ドンッ!

右が破損したメインカメラで状況を確認。驚く二人組と、後方での爆発。

「げっ、やべえ。宇宙海賊ですぜ!」片方が外の宙を見る。

「何ィ!もう見つかったって言うのかい!」そしてもう片方――片方――

”彼女”に似て――いや、だが――でも。

『――ああ、そこにいたのですね』

「へ?」

”彼女”にそっくりな間抜け面を見て。

『ご命令を、我が主』

「…アンタ、アイツら何とか出来んの?」

『ご命令とあらば』

「――良し、何とかしてみな!」

『了解』

私はもう一度戦おうと決めたのだ。

『――貴女に勝利と安息を。』

”私”は跳んだ。

【続く】

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