「崩壊世界と嗜好品」
眼下。30m下。
「あーいたいた、目標の”器物”」
朽ち果てた「ようこそおいでませ」の看板上から、依頼された目標を見つける。
『…んで、どこを壊しちゃいけねえんだっけ』
「はあ!?あんた全然話聞いてなかったの!?」
肉体労働担当、相棒が寝ぼけたことを言う。
『いやあ、昨日ちょっと寝てなくて…』
「バーカ!!!…はぁ…いい、よく聞いて」
ばさっ。私は手元の依頼書を取り出し、通信で伝える。
「外装、手足六本は全部ばらして良し、背中のミサイルポッドは持って帰れたら追加ボーナスアリだから判断は任せる」
「重要なのが機関部、ジェネレーターとそれに付随する制御機構、それと胴体部筋繊維。ここは出来る限りまとめて持ってきてって」
『はーあ、手足だけばらしていけってか…しかしマジで旨いのかねえ、アイツらの筋肉って』
ガション、ガション。眼下に居座る、大型蜘蛛状”元”地球テラフォーミング用器物を見ながら相棒はそんなことを言っている。
「あれ、気づいてないのアンタ、スーパーにたまに出る高級肉ってああ言う類のやつよ」
『ゲ!?マジで!?あれ普通に旨かったけど…へえー…知らんかった』
「はー…全く、アンタの一般常識が心配になるわ」
会話の片手間で相棒の3D視界ゴーグルでマーカーを設置。
もし間違えてぶっ飛ばしたら怒る種にするためだ。
「はい、マーキング終わり、そこ以外狙ったらぶっとばす」
『そうすると金にならねえから?』
「そうよ!!!今回の仕事がうまく行けば向こう1か月は遊んで暮らせるぐらいの報酬予定よ!!!美味しいご飯も食べられて、温泉にだって行けちゃうかもぐへへへへ…」
『あー、はい、了解了解っと…後いつも通り”パイプ”は俺がもらうから』
「……私にゃその感性の方が分かんないわ、何が楽しくて鉄パイプ吸ってんの?」
『いやー…偽でも煙草が無いと、こう、なあ』
ガション、下の動きが止まる。
「はい、じゃあ」
「『お仕事開始っと』よ!」
【続く】
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