見出し画像

就職ランキングみてもいいけど、年収推移もみたほうがいい。

コロナ禍の就職ランキングがニュースになっていたのを見かけました。何年経ってもあまり代わり映えのないランキングではあるのですが、そもそもここに載ってる大企業はちゃんと成長しているor成長しようと思っているのだろうかという疑問が湧いてきました。

ということで、就活中の人がすごく気にするであろう年収推移に着目して考えていこうと思います。

成長してない大企業は昇給、賞与が渋い

当たり前のこと言ってすみません。なぜ成長性を図るのに年収推移をみるかというとズバリそういうことです。

成長しない事業の予算を作る場合は利益を確保するために必ず昇給率や賞与の設定を厳しくみられるので結果的に昇給、賞与が渋くなってしまいます。

人件費というものは固定費なので一度あげてしまうと下げるのが難しいです。そのため、昇給率は来期だけでなく再来期以降の予算にも響いてしまいます。

また、多くの会社にとって人件費は大型コストなので、昇給や賞与をカットするだけで大きく利益貢献できるというのも検討される理由です。

つまり裏を返せば、しっかりと平均年収を上げられている企業というのは、事業成長して、投資資金も投資先もしっかりある企業である可能性が高いということです。人気ランキング常連企業の年収がしっかり上がっているのか確認していきましょう!

対象企業を選ぶ

手始めに日本の平均年収推移を比較対象として、上位企業の年収推移と比べてみます。各企業の年収は有価証券報告書の初めの方にのっているのですが、単体数値(たくさん子会社があっても親会社単独での平均年収となる)のためHD制を取ってない会社を見繕います。

今回対象としたのは以下企業です。()内はランキング順位

・伊藤忠商事(1位) 
・任天堂(4位)
・大日本印刷(9位)
・味の素(21位)
・電通(39位)

商社、エンタメ、なんでも、食品、広告と業種の違う会社を選んで比較していきます。ほんとは博報堂を対象としたかったのですが有効な数値取れそうになかったので電通にしました。

日本の平均年収推移と比較する

比較するにもベースとなる比較対象があった方がいいので、今回は日本全体の平均年収をベースとします。

日本の最近5年の平均年収は以下の通りとなります。

2015年:420
2016年:422
2017年:432
2018年:440
2019年:436

5年間で年収は16万円、4%弱増えています。これがベースとなるので頭においておきます。

伊藤忠商事と比較する

では、早速各社と比較していきましょう。まずは人気ランキング堂々1位の伊藤忠商事。平均年収推移は以下の通りとなります。()内は参考値として平均年齢を記載します。

2015年:1,383(41.5)
2016年:1,384(41.5)
2017年:1,461(41.6)
2018年:1,521(41.7)
2019年:1,566(41.9)

5年間で年収は183万、13%増えています。日本平均と比べるとしっかり年収は増えているイメージですね。平均年齢も0.4歳しか上がっていないのでちゃんと昇給しています。

伊藤忠単体で4000人以上の社員がいるので、70〜80億程度を昇給に当てたということです。

会社の利益に対してどうかというところまでは今回は見ませんが、しっかりと会社が成長しており、人にもちゃんと投資していると会社と言えるのではないでしょうか。

任天堂と比較する

続いてランキング4位の任天堂。

2015年:891(37.8)
2016年:928(38.3)
2017年:903(38.6)
2018年:913(39.3)
2019年:935(39.2)

5年間で44万、5%増えています。日本平均が4%弱なので率的には大きな差はないです。しっかり利益を出しているイメージがあるのでちょっと意外ですね。

実はこの5年で従業員が2,000人から2,300人に増えているので、一人当たりの年収ではなく、事業拡大のために人員数の方を重視したことで年収自体はそこまで上がらなかった可能性もあります。

年収を維持しながら、人材を集め、会社の成長を加速させようとしていると考えると、任天堂もしっかり成長を続けている会社といえると思います。

大日本印刷と比較する

続いてランキング9位の大日本印刷。凸版と並ぶ印刷大手で手広く事業をしている会社です。黒子企業なのにこの順位はすごい人気。

2015年:706(40.4)
2016年:707(41.0)
2017年:712(41.6)
2018年:726(42.2)
2019年:744(42.6)

5年間で38万、5%増えています。額面では任天堂に劣りますが割合としては同程度増えていますね。印刷は斜陽産業ですが大日本印刷は半導体関連の部材で強みを持っているので何とかなっているのでしょうか。

ただ、任天堂と違うのが、従業員数は減っていること、と、平均年齢は2年以上上がってしまっているというところ。大企業は年功序列なため、平均年齢が上がると自然と平均年収もあがるので、若手の昇給は案外渋い可能性があるのでその点には注意が必要です。

主力事業がシュリンクしていく中でも年収を維持向上させているところに、次世代事業を伸ばしていこうという意気込みが現れているとすると、入社してもやりがいある仕事がたくさんある企業と言えるかもしれません。

味の素と比較する

続いてランキング21位の味の素。食品メーカー大手で、知る人ぞ知る有名企業ですね。食品メーカーの中では年収も高いと評判です。

2015年:951(42.6)
2016年:951(43.0)
2017年:946(43.1)
2018年:982(43.6)
2019年:956(43.9)

5年間で5万、1%の増加に止まっています。平均年齢も上昇傾向なので、実質的には5年前と何も変わっていないといえます。等級が上がらない人はほとんど昇給がない状況ではないでしょうか。

しかし、味の素に関しては上記数値だけで語ることはできません。味の素は2015年から働き方改革を行い、4年間で約10%の労働時間減少を達成しています。

つまり、年収自体は上がっていないものの、時給ベースでは10%向上していることになります。もともと、平均年収が1,000万近くの高水準にあるため、自由な時間を増やす方向に舵を切るという人事戦略も理にかなっています。

働く時間が減れば年収が下がる企業もあると思うのですが、味の素はそれをしていません。年収を維持しながら従業員に多様な働き方を許容しているので、継続的な事業成長をしっかり見据えて経営している会社と言えそうです。

電通を比較する

続いてランキング39位の電通。言わずと知れた広告代理店最大手企業ですね。

2015年:1229(39.5)
2016年:1248(40.3)
2017年:1273(40.1)
2018年:1180(40.7)
2019年:1169(40.9)

5年間で▲60万、▲5%の減少となっています。他4社とはうって変わって年収は減少傾向にあります。電通も味の素と同様に労働時間削減を推進しているという側面はあると思いますが、味の素のように年収は維持せず、労働時間が減った分だけ年収を下げているようにも見えます。

もちろん、今後の戦略によってはまだまだ挽回していける可能性のある会社だとは思いますが、現状は昔ほど人材投資ができない状況であることは認識しておいた方がいいでしょう。

まとめ

人気企業を年収という一面だけから切り取って推移を見てきましたが、各社特色が出てきて面白いなと感じました。

年収傾向だけで、一概にその会社が良いのか悪いのかを判断することはもちろんできません。ただ、働く上でもっとも気になる点の一つである年収をしっかり理解してから入社した方が後悔は少ないと思いますので、参考になれば幸いです。

〜おまけ〜

学生の方にとっては年収は案外ピンと来ないのではと思ったので、簡単に時給換算してみました。各社、所定労働時間が結構違うこともみそだったりします。

時給一覧
日本平均:2,200円
伊藤忠商事:9,000円
任天堂:5,000円
大日本印刷:3,900円
味の素:5,500円
電通:7,000円

年間労働時間一覧(時給算出のための基礎数値)
日本平均:1,960時間(245日×8時間)
伊藤忠商事:1,740時間(240日×7.25時間)
任天堂:1,860時間(240日×7.75時間)
大日本印刷:1,920時間(240日×8時間)
味の素:1,740時間(240日×7.25時間)
電通:1,680時間(240日×7時間)


時給算出にあたって、日本平均については労働時間8時間、年間休日120日で設定しました。その他企業については、各社の所定労働時間を設定、年間休日については一律125日としています。また、残業については特定が困難なこと、部署や個人によっても異なることから、今回は加味していません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?